はじめての対決・前編
「あたし、シャワー浴びてくるから。
お先に失礼するわね」
春子お姉さんが席を立って。
美代ちゃん、早川さん、ボクはテーブルに残った。
食事はとっくに終わっていたけど、とりとめなく話しをするのは、聞いているだけでも楽しいよね。
食堂にいる、他の子たちもそうみたい。
それにこのテーブルは、また特別だよ。
だって、学校一、笑顔がかわいい女の子が、ふたりもいるんだもん。
ゆり先生のスープで、お腹はイッパイだし。
チャーミングなふたりの会話は、耳も目も楽しませてくれるし。
楽しくならないワケがないね。
うん。そうだね。
“はじめての人”が、早川さんでよかったね。
美代ちゃんでなかったのは残念だけど。
不安ばかりだった体験教室が、早川さんのお陰で、こんなに楽しくなってるんだもん。
笑顔が明るくて、頭の回転が早くて、ちょっとイジワルで、えっちで、とてもかわいい早川さん…。
引き合わせてくれた神様に、お礼をいわなくちゃ、だね。
そんな感じで、ゆったりひとときを過ごしてたら。
ボクらのところに、イヤなヤツがやってきたんだ。
そう。ブルドッグ顔の、ブータだ。
「早川、あとでヤろうぜ」
ブータは来るなり、ぞんざいな態度で早川さんにいった。
「イヤよ」
早川さんは即答だった。
それでもブータは、引き下がらなかった。
「なんでだよ?」
「だって、アンタ、早いんだもん」
「お、オレのどこが早いんだよっ!」
ブータは顔を真っ赤に怒った。
「ほら。すぐ真っ赤になる。
えっちの時と同じね」
周りの女子から、クスクス笑いが聞こえた。
「入れた途端、眉を八の字にして、
“お、オレ、もう出ちゃうぅぅ〜”」
早川さんがモノマネすると、今度は男子からも笑いが起こった。
「そ、そんな…お、おま…」
みんなの前でいわれた恥ずかしさもあって、ブータは完全に、頭に血が登っちゃったみたい。
早川さん、すごいなぁ。
ブータを手玉にとるなんて。
「う、ウソつくなよっ!」
嘲笑を打ち消すみたいにブータが怒鳴ると、食堂はシーンと静まり返った。
「ふぅ〜ん。
あたしがウソついてるっていうんだ?」
「あ、当たり前だろっ!
いつもヒィヒィいってるのは、早川じゃねぇか!」
早川さん、ムッとした顔になった。
すごく怒ってるみたい…。
「わかったわ」
すっくと立ち上がると、早川さんは腰に手を当て、ブータを真正面から睨んだ。
「そんじゃ、どっちがウソつきか…。
勝負よっ!」
「お、おうっ!」
ブータは早川さんとデキることになって、嬉々と応えてた。
側にいるボクと美代ちゃんは、ことの成り行きに、ただオロオロするだけ…。
「いいのね? みんなの前で勝負よ?」
「おうっ! のぞむところだっ!」
「どっちが我慢できるか…」
形のいい唇が、ニンマリ笑いをつくる。
「鈴代くんと勝負よっ!」
「…………え?
えぇぇぇぇっ?!」
な、ナニ?! いま、早川さん、なんていったの?!
「あたしの前で、ふたりがオナニーするの。
先にイッちゃったほうが負け。
勝った方とえっちしてあげるっ!」
な、なんでそんな話になるんだろ…。
ボクとブータは、ふたりして顔を見合わせた。
「どうよ?」
早川さんは、ズイっと気高い顎を高くした。
「ど、どうって…」
ブータは、しどろもどろに戸惑ってる。
それはボクも同じ。
だって、早川さんとブータの勝負が、いつのまにかボクとブータの勝負になってるんだもん…。
「なに? 逃げるの?
鈴代くんに勝つ自信、ないんだ?」
早川さん、莫迦にした薄ら笑い。
なんていうか…見とれちゃう美しさ。
ただし、当事者でなければ…。
「やれやれ〜。逃げるな〜」
なんて、周りの男子が囃し立ててる。
もう、どうにも収拾がつかなそう…。
「う〜…わ、わかったっ!」
退くに退けないブータは、悲鳴をあげるみたいに叫んだ。
「鈴代っ! 勝負だっ!!」
「えぇぇぇぇっ?!」
ボクはもう…なんていうか…なんていったらいいか…。
「そういうことだから。
鈴代くん、がんばってね?」
「えぇぇぇぇっ?!」
驚きと悲鳴と困惑の混ざった声しか、でなかった…。
「引き分けだったらどうするんだ?」
ブータが憮然と、早川さんにいった。
「引き分けって、同時に出ちゃったら?」
「まさか、勝者ナシって、逃げるワケねぇよな?」
ニヤリ嘲笑うブータに、早川さんは愉快そう。
「ぷふ。まさか。
でもそうねぇ…ふたりを相手に、ってのはどう?
アンタと鈴代くんで、あたしをオモチャにすんの」
お、オモチャって…。
わざと過激な表現を使ってるんだろうけど…。
うー、おちんぽ、ピコンとしちゃうよ…。
「腰が抜けても、アンタが満足するまでヤラせてあげる。
ならいいでしょ?」
「オレがおまんこだぞ」
「いいわよ。それで」
「ウシッ!」
なんだかブータは、もう勝ったみたいな声をだした。
両手を縛られてなかったら、きっと拳を振り上げてるね。
うん。そうなんだ。
ボクとブータは観戦者に取り囲まれて、後ろ手に縛られてたんだ。
公平を喫するため、ってコトらしい。
まぁ、そうだね。
出したら負けなんだから、摩らないでいれば勝てるモンね。
で、後ろ手にボクとブータは縛られて、代わりに女の子がボクたちのおちんぽを摩ることになったんだ。
ボクの担当は、美代ちゃん。
ブータの担当は、
森山さんは、ボクらと同じクラスの女の子。
クラスで一番、背が高くて、黒目がちで垂れ加減の目がちょっとかわいい。
長い黒髪で、物静かで、母性的。
それでか、静御前なんてアダ名があったかな?
ちなみに、担当を指名したのは早川さん。
背丈を合わせたのかな…?
ブータと森山さんも、同じくらいの背丈。
でもなんとなく、それだけでもないような…。
なんとなくだけどね。
「美代ちゃんと森山さん、ちょっときてくれる?」
早川さんがふたりを呼んで、ボソボソとなにやら打ち合わせてる。
美代ちゃんが頬を染めて、チラッとこっちを見た。
いったい、なにを話してるんだろ…?
「それじゃ、配置について」
美代ちゃんと森山さんが、ボクとブータの側に戻る。
早川さんはボクらの正面のテーブルに腰掛け、ためらいなくシャツを脱いだ。
一糸まとわぬ早川さんの身体は、すごく美しかった。
はじめてシたときは、全然、気づかなかったけど、プロポーションがすごくいい。
背はボクよりちょっと高いくらいだけど、手足が長いせいか、全体的にスラッとした印象なんだ。
それにポーズのせいか、目の錯覚か、少女らしい身体つきが、妙にオトナびて見える。
見惚れちゃうくらいキレイ…。
ていうか、見ているだけで、おちんぽがピョコンってしちゃう。
続いて、美代ちゃんと森山さんもシャツを脱いだ。
「おぉっ!」
なんて、男子たちの声。
クラスで一番発達してるってウワサ、ホントだったんだね。
森山さんの胸、オッパイって感じで、揉めるくらいに発達してた。
でも考えてみたら、ちょっとヘン。
体験教室では裸が原則なんだから、みんな見てるハズだもん。
まぁ、全員の裸を見て回るワケでもないけどね。
それとも、アレかな?
みんなの前で脱ぐ、ってことが男子を色めきたたせたのかな?
「鈴代くん…」
美代ちゃんは、ちょっと不安げだった。
「あはは。だいじょうぶ、だいじょうぶ…」
他になんていったらいいか、わかんなかったよ。
がんばるからねっ!
なんて、ヘンだし…。
だって、勝ったら、ボクは早川さんとえっちしなきゃいけないんだよ?
ボクはかまわないけど…美代ちゃん、イヤがるよね…きっと。
でも負けたら、早川さんはブータのオモチャ…。
早川さんと美代ちゃんは友達同士だから、それは美代ちゃんも望まないよね。
でも、勝ったら…う〜…。
ホント、なんでこんなコトになってるんだろ…。
「ほら、ふたりとも! 自然体、自然体!
肩幅くらいに足ひろげてっ!」
早川さん、すっごく余裕あるね…。
ニコニコしてるよ…。
ボクはもうなにがなんだか、…ヘンな汗ばっかり…。
「フッ!」
って、ブータが、鼻でボクを嘲笑った。
うん。わかってるよ。
体格だって、全然ちがうんだもん…。
チビで痩せた、いかにもモヤシなボクが、ゴリラとブルドッグの間の子みたいなブータに、勝てるワケないじゃない…。
なんで早川さん、ボクを指名したんだろ…。
うらめしく早川さんを見たら、早川さんもボクを見てた。
…なんて…表情だろう…。
かるく微笑んで、なにかを信じきってるみたいな、燐としたやさしい瞳…。
ボクの勝利を信じてるのかな…?
でも…なら、なんで、ちょっと寂しげなんだろ…?
やっぱりボクが負けること、どっかで心配してるのかな…。
ボクが負けたら、ブータのオモチャだもんね…。
あんなこととか…こんなこととか…。
ボクはこっそり見た、深夜のテレビ映画を思い出してた。
エッチな映画で、女の人が殴られたり、ロープで縛られてたり…泣き叫んで、リョージョクされるんだ。
ボクは女の人が可哀相で、すぐテレビを消しちゃった。
う。うん。そうだね…。おちんぽはしっかりピョコンしてた…。
と、とにかくっ!
ボクが負けたら早川さんは、ブータにあんなメに合わされちゃうんだよ?
そう。あの女の人みたいに早川さんが、ブータに殴られて、ブータにロープで縛られて、ブータにムリヤリ、汚いおちんぽを突っ込まれて…リョージョクされて…。
テレビの女の人を早川さんに重ねたら、ギュッっと、なんか、胸が苦しくなった…。
「お、おい、森山! 強く握りすぎっ!」
ブータの怒声で、ボクはハッと気を取り戻した。
なんだかわからない勝負は、ちゃくちゃくと準備が進行していて、森山さんがブータの後ろから手をまわし、股間を掴んでた。
ボクも同じ感じで、美代ちゃんの手に根元を掴まれていた。
「それじゃ、はじめるわねっ!」
テーブルの上に立つ早川さんが、そう宣言した。
その手からシャツが放され、音もなく床に落ちた。
それが合図みたいに、勝負がはじまった。
- ◆はじめての対決・中編へつづく…
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