トップ 一覧 置換 検索 ヘルプ ログイン

萌え小説 15の変更点

  • 追加された行はこのように表示されます。
  • 削除された行はこのように表示されます。
!!!はじめての仲間

 早川さんと仲直りか…。
 どうすればいいんだろうね…。
 ボクは体育館の壁に背をつけて、体育座りでため息をついた。
 うん。そうなんだ。
 友達がいなかったから、ケンカなんかしたことないんだ。
 だからボク、仲直りの方法なんて、知らないんだ。
 え? 謝る? なにを?
 なにがゴメンなのか、はっきりしなきゃ、謝りようもないよ。
 例えば…そう…。
 殴ってもいないのに、“殴ってゴメン”じゃ、ヘンでしょ?
 それに早川さんなら、逆に怒っちゃいそうだよ。
「なにがゴメンなんだか、ハッキリしなさいよっ!
 それがなきゃ、誠意ってモンがないでしょ!
 わかる? トウヘンボクのスットコドッコイっ!!」
 なんてね。
 どうすればいいんだろうね…ホントに…。
 そんなことを考えながら、ボクは早川さんを遠くみていた。
 早川さんは女の子たちと談笑していて、人懐っこい笑顔を浮かべてた。
 なんでこんなに、キュンとしちゃうんだろ。
 まるで美代ちゃんが、まだ佐藤さんだったときみたい…。
 ボクはブンっと頭を一振りして、浮気な考えを追い払った。
 そしたら聞こえてきたんだ。
 男子たちの声が。

「うひょ〜」
//	 とか、かたまってる男子たちから声がした。
 体育館の真ん中あたりで、一塊になってる男子たちから声がした。
//	 みんなであぐらをかいて、円になって、中心にあるなにかを見てるみたい。
 みんなで円陣になって座り、中心にあるなにかを見てるみたい。
 なにを見てるんだろ…?
 うん。そうだね。
 ちょっと気になるよね。
 そっと、気づかれないように覗いてみようか…。
 そう思って近づいて。背を延ばしてたら、中心にいるひとりが振り向いたんだ。
「なんだ、鈴代じゃねぇか…」
 隣のクラスの男子――たしか、清太くんだ。
「鈴代も見るか? スゲーぞ?」
「え、えと…」
 どう返事しようか、迷ってたら。
「おう、場所ツメろよ。
 鈴代、ココ座れよ。特等席だぜ?」
 って、清太くんが場所を空けてくれて、自分の真隣をポンポンと叩いてくれた。
 うん。そうだね。
 いつもは仲間外れなのに、こんなことはじめて。
 隣のクラスだからかな…?
 座っちゃっても…大丈夫かな…?
 そんなふうにちょっと不安になったけど、せっかくだからボクは座ってみることにした。
「オレは、{{ruby 山本 清太,やまもと せいた}}だ。
 みんなは“清太”って呼んでる」
 ボクが座ると、清太くんは自己紹介をしてくれた。
 髪の短い、いかにもワルガキ、って感じの快活な印象。
 うん。鼻にバンソーコーが似合いそうだよね。
「オレ、{{ruby 大村 政和,おおむら まさかず}}。よろしくな」
 続けて、体格がよくて、背の高い男の子が口を開いた。
「{{ruby 小野寺 政一,おのでら せいいち}}」
 体格がいいチビの男の子。
 っていっても、ボクと変わらない背丈かな?
 大村くんのサイズを小さくしたみたいな感じの子。
 無愛想に名前をいったけど、怒ってるワケじゃないみたい。
「{{ruby 半村 太郎,はんむら たろう}}なっ!」
 そういってニカッと笑った子は、なんか調子よさそうな感じ。
 ちょっと、清太くんと感じが似てる。
「オ、オラは、小屋島…」
「こいつは、オヤジ」
 イガグリ頭のハンプティ・ダンプティみたいな男の子を、隣の子が遮っていった。
「オレは{{ruby 為村 悟朗,いむら ごろう}}。“ゴロー”でいいよ」
 オヤジって紹介された子はブスッとして、ゴローくんはニヒヒっと笑った。
 ゴローくんは髪が短くて、眠そうな目をしていて、なんか、女子にモテそう。
 他にも何人かの子が名前を教えてくれた。
 隣のクラスの子もいれば、ボクと同じクラスの子もちょっといた。
 そして最後にボクの番。
 うん。そうだね。なんだがすごく緊張する…。
「ボ、ボクは…」
「第六ちんぽ大王・鈴代はじめ。
 みんな、もう知ってるって!」
 清太くんがそういうと、みんなはニカッと、くったくのない笑顔を作った。
「よ、よろしく…」
 あう…。ヘンなアダナ…。定着しならなきゃいいけど…。
「しっかしブータのヤツ、ザマアみろだったな〜」
 清太くんがボクの背中を、パンって叩いた。
 お陰でボクは、ケホッとなっちゃった。
 どうやら食堂勝負の一件で、ボクは一目おかれた…ってトコみたいだね。
「オレな、アイツは昔っから気にいらねぇんだ。
 目に入るモンは、全部自分のモノだと思ってやがってよ。
 “オレの縄張りの女に手を出すな”、だとよ。
 まるでハーレムのボス気取りだぜっ!」
 “縄張り”って、クラスのことかな…?
「誰のものでもねぇってんだ!
 なぁっ!」
「最近じゃ、オレたちの縄張りにもちょっかいかけてきてるしな」
 と、小野寺くんが、ブスッと口を開いた。
「モテてると勘違いしてやがんだ」
「一回でもヤらしてもらえれば、自分のモノだと思ってるんだぜ?」
「女子にはおべっか使って、男子には陰湿なイジメするしな」
「相手にしたくないから、みんな黙ってるけどサ。
 しょーじき、ウゼーよ。ブルドッグ顔」
 ブータのヤツ、相当きらわれてるんだね。
 みんなから、口々に悪口が飛び出した。
//
「ご、ごめんな、鈴代」
 見覚えのある同じクラスの子が、オズオズといってきた。
「オレも…」
 その隣の子も、同じクラスの子。
 ? なんで謝るんだろ…?
「ブータにいわれてたんだ…。
 鈴代と話しするなって…。
 じゃないと仲間外れだって…」
「オレも…仲間外れにされんのが、いやだったんだ…」
 なんだ。ボクが避けられてたのって、ブータの差し金だったのか。
 不思議とあっけらかんと思った。
 うん。そうだよね。
 イヤな思いはしたけど。
 この子たちのせいじゃないし。
 ブータは食堂での勝負で、情けない姿をみた後だったしね。
 手品の種明かしをみたくらいのことだよね。
「い、いいよ。気にしないで。
 それより、なにを見てたの?」
 ボクはちょっとこそばゆくて、本来の話題に戻した。
//--
//	「そういえば。なにを見てたの?」
//	 ブータの悪口大会になりそうだったんで、ボクは本来の話題に戻した。
「おう。忘れてたぜ。
 コレコレ…」
 清太くんが開いたのは、エロ本だった。
 しかも…。
「コ、コレ、…む、無修正…?」
「おう、オレさまの秘蔵本だぜ!」
 金髪で青い目、白い肌に黒い下着…。
 あられもない格好でおまんこみせてたり…、合体してたり…。
「なんだ、鈴代。はじめて見たのか?」
「う、うん…無修正は…はじめて…」
 ボクは卑猥な写真に目を奪われてて、清太くんの問いに恥ずかしがるのも忘れてた。
 うん。そうだよ。
 ボクだってオトコの子だもん。
 エロ本くらい隠し見るよ?
 でも無修正のははじめてだったし、こんな…なんていうか、ロコツなのじゃなかったし…。
 ウェーブかがった金髪、白い肌。
 なんか、ゆり先生を重ねてしまう…。
「ゆり先生…、ハーフなのかな…?」
「クォーターとかって、いうんじゃないのか?」
「おとうさんが外国人? それとも、おかあさん?」
「ずっと日本人だって」
「ふーん…」
「ゆり先生も似合いそうだよなっ!
 こーゆー下着」
 見ている子たちから、口々に言葉が飛び交う。
「なんか、オトナの下着って、え、エッチだよな…」
「パンツなんて、ヒモだもんな…」
「コッチのなんて、穴が開いてて、おまんこ丸見え。
 履いたままスルのかな?」
「ソレ、なんかコーフンしねぇ?」
「お、オラ、ブルマがいいな…」
//	「オヤジくさいヤツだな、おまえ〜」
//	「おまえのシュミって、オヤジくさいな」
「オヤジくさいシュミだな…オヤジ……」
 オヤジくんの言葉に、ゴローくんがツッコミをいれた。
「やっぱ、おっぱいはおっきいのがいいよな…。
 鈴代はどうだ?」
 清太くんが聞いてきた。
「え? お、おっきいほうかな…?」
「どのくらいが好みだ?
 このくらいか?
 それともこの超爆乳か?!」
 ページをめくり、めくり、聞いてくる。
 あんまりおっきいと、ちょっとキモイかな…。
 でも小さいのもねぇ…あ、あの写真とかは…。
 なんて、目移りするみたいに感じて、ボクは当たり障りのなさそうな、正直なトコをいってみた。
「ゆ、ゆり先生くらいがいいかな…?
 柔らかそうだし…」
「おまえ…」
 ぐっと清太くんが見据えてくる。
 な、なんか、マズイこといったのかな…?
「わかってんなぁ、鈴代〜。
 ヨシ! 今日からおまえも、オッパイ星人の仲間入りだ」
 清太くんはボクの肩を叩きながら、快活に笑った。
「アハハ…」
 なんか、うれしいな。
「ゆり先生のおっぱいはサンコーだぜ〜。
 柔らかくて、おっきくて…」
 清太くんの言葉を皮切りに、また口々に言葉が飛び交う。
「肌もスベスベってか、こうムチムチ?」
「ちがうちがう、吸いつくっていうんだぜ?」
「お、お尻もイイ…。おっきくて…肉付きよくて…ハァ…」
「おまえ、ホントにオヤジくせぇなぁ…」
 みんな、ゆり先生としたことあるみたい…。
 羨ましいね。
 ボクにもさせてくれるといいんだけど…。
「でもなんかなぁ…」
 ため息するみたいに誰かがいった。
「だよなぁ〜」
 同調するみたいな声。
 なんだろ?
「おっぱいも、お尻もおっきいし、いろんなことさせてくれるけどさ…」
「あ。わかるわかる、オトナの余裕ってヤツ?」
「オトナの余裕?」
 ボクは首を捻った。
「オレたちじゃ、おまんこいっぱいにならないしな」
「束になっても、先生たちイカせられないし。
 くやしいけどよ」
「やっぱ、オトナのデカさにゃ、かなわねぇのかなぁ…」
 清太くんが目を落とした写真は、ビール瓶みたいな黒いおちんぽ。
「ゆ、ゆり先生は魔性のオンナだ。
 みんな、気をつけなきゃダメだゾ」
 と、オヤジくんが唐突にいうと、みんなから一斉に呆れ声があがった。
「ハァ〜〜?」
//	 そんな呆れ声に負けず、オヤジくんは真剣な面持ちで続ける。
「オ、オラ、一回だけあるだよ。
 汁でいっぱいのおまんこの中が、キューと吸盤みたいに吸いついてきて、モゾモゾ蠢いて…」
「ハァ〜〜?」
 呆れ声の重奏。
「オレ、ゆり先生と何度もシてるけど、そんなんなったことねぇぞ?」
「ウ、ウソじゃねぇぞ。
 すごく気持ちイイけど、なんか、知ってはイケナイ、オトナの世界を垣間見たみたいな…」
「ハァ〜〜?」
 みんなを代表するみたいに、清太くんが口を開く。
「オヤジ、ワケわかんねぇよ。
 気持ちヨすぎて幻覚…じゃなくて、幻聴…でもないか…」
「錯覚でいいんじゃないかな?」
 ボクは助け船をだした。
「ソレだ。
 オヤジ、気持ちヨすぎて、ケッカク起こしたんだ」
 結核だって。
 いいまちがいを正すのもわるくて、流しちゃったけど。
 清太くん、かなりおもしろい。
「信じねぇなら仕方ねぇ…。
 これがオトナの大きさってヤツだ。
 なぁ、鈴代」
 ポンとボクの肩に、オヤジくんが手をのせた。
「ハハ…そうだね…」
「オヤジってヘンなヤツだろ?」
 清太くんが、こそっと耳打ちしてくる。
「でも、おもしろいよ。いいヤツだね」
 ボクもコソッと返すと、ふたりでクスクス笑った。
「あ、コレコレ」
 男の子のひとりが、ページを指さした。
「オレ、この格好でヤってみたいんだ」
 四つん這いの女の人に、男が腰を当ててる。
 これって、入れてるのかな?
「なんだ。フツーじゃん!」
 清太くんが、さも当たり前みたいな声をあげた。
「フツー?」
 ボクはこんな格好でしたことなかったから、聞き返してた。
「フツーだよ、こんなの」
「鈴代ははじめてだったから、知らなくてもしょうがねぇよ」
 指さしてた男の子がフォローしてくれた。
「おまえもそうだろ〜」
「う、うるさいなぁ…」
 隣から頭をかるくコズかれて、その子は負け惜しみを呟いた。
 ボクも含めてみんなが笑った。
「へへ。いいか、コレは後背位っていうんだぜ」
 清太くんが、得意気に話しだした。
「これは正常位な」
 早川さんとしたのと、同じ体勢の写真。
「こっちはキジョーイ。ザイに…」
 ページがパラパラめくられ、いろんな体勢の写真がでてくる。
 中には、女の人が苦しそうな体勢もあった。
「いろいろあるんだ…」
 半ば感心してボクは呟いた。
「あ。これ、ヤッたことある」
 見覚えのある体勢を見つけると、ボクは反射的に指さしてた。
 春子お姉さんとしたときの体勢。
 足を抱えての側位、ってことらしい。
 アレ、セイジョーイじゃなかったんだね。
 なんて思ってたら、清太くんが大げさな声をあげた。
「マジ?! 誰とヤッたんだ?」
「はる…中等部のお姉さん。シャワーしながら」
 名前でいいそうになって言い換えた。
 親しい仲とか思われると、ちょっと気恥ずかしいからね。
「鈴代スゲー。経験値いくつアップした?
 もう上級レベルじゃね?」
 上級レベルって…。
 苦笑と照れ笑いが混ざる。
「気持ちよかったか?」
「う、うん。ヨカッた」
 清太くんの目、なんか、憧れるみたいにキラキラしてた。
 ホントにやったことないんだね。
 清太くんって、裏表なくて、正直な性格みたい。
「先生たちとは大抵、後背位だよな」
「うん。セイジョーイで、おっぱいイジくりながらもいいけどな。
 背丈ちがいすぎ〜」
「手を届かせると、動きにくいもんな〜。
 先生もコウハイイの方がイイみたいだし」
「ふ〜ん。
 みんな、先生たちとシたことあるんだね…」
//	 ボクはうすうす思ってたことを呟いてた。
//	 羨ましいそうな声色だったんだろうね。
「こう、腰のあたりを掴んでな。
 おっきなお尻をめがけて、ぱ〜んぱ〜んって」
 男の子が立ち上がって、自慢げにモノマネてみせた。
「おまえがそんな音させてるかぁ〜?
 ぱふん、ぱふん、のまちがいだろ〜?」
「う、うるさいなぁ…」
 モノマネた子はみんなに笑われて、赤くなった顔で腰を下ろした。
「でもよ。なんか、すげぇ、コーフンするよな、コウハイイ…」
 みんな同意なのか、後背位の写真をみつめ、押し黙ってしまった。
 そんなにスゴイんだ…。
「でも、女子ってイヤがるよな」
「コウハイイはな。
 なんか恥ずかしい〜、とかいって。
 おまんこみえるのは一緒だってのにサ」
「クツジョクテキっていうんだぜ」
「そ、その表情がイイのに…」
「オヤジ…おまえカエレ」
「後ろからスル方が気持ちイイんだけどな…」
「そうなの?」
 ちょっと興味が涌いて、聞き返してみた。
「ちんぽが奥まで届きやすいし」
「ふーん…」
 そうやってみんなでエロ本を見てたら、突然、女の子の声がした。
「ばっかじゃないの?!」
 腰に手をあてたその子は、茶色っぽい髪のポニーテールの女の子。
 なんか見覚えのある女の子だった。
「させてくれる女の子そっちのけで、エロ本なんか見てっ!」
 半ば呆れ声に、清太くんがムッとした顔になった。
「うるせぇなぁ〜。
 ソレはソレ、コレはコレ。
 オトコのロマンだっ!」
「そ、そうだ、そうだ、くやしかったら、ブルマ履いてこい〜」
「オヤジ…おまえは口を開くな」
「鈴代くんまで、こんなエロガキと一緒になって…」
「関係ねぇだろ。
 鈴代はオレと同じ、オッパイ星人になったのだっ!
 なっ?!」
 清太くんがボクと肩を組んだ。
「う、うん」
「ホラみろ。
 同士・鈴代の悪口はゆるさんぞぉ〜!」
 清太くんが拳を高く振り上げる。
「そ、そうだ、そうだ〜。
 くやしかったら、巨乳ブルマになってこい〜」
「オヤジ…おまえ、ホントにカエレよ…」
「フンだっ!」
 女の子はプイッとポニーテールを揺らし、向こうへいっちゃった。
 そして振り返って、あっかんべーをしてきた。
 負けじと清太くんも、べぇー。
「アハハ…」
 うん。そうだね。
 嫌われちゃったけど、ま、いいかな。
 だって、他の男の子とこんな話しができたのははじめてで、仲間に入れたこと自体、とてもうれしかったもの。

「夜は寝る時間。
 おとなしく休んで、明日への鋭気を養いなさい」
 と、小田先生が就寝の準備にやってきた。
 ボクらはバスケットコートの半分、半分に、男子と女子とに分けられた。
 そこにそれぞれ、布団を敷いて寝るらしい。
 どうやら、夜中はえっち禁止みたいだね。
 まぁ、昼間はさんざん、えっちしてたワケだから。
 夜中ぐらい身体を休ませなきゃ、ホントに死んじゃうもんね。
「鈴代、こっちこいよ。一緒に寝ようぜ」
 清太くんはボクを気に入ってくれたみたい。
 エロ本鑑賞会のあとも、イロイロと話しをしたんだ。
 ゲームやプラモや、マンガや、よく遊ぶ公園の話しや…。
 マンガじゃない本の話しをしたら、清太くんはウンザリしてたけどね。
 でも図書室の話しには興味を持ったみたい。
 中等部のお姉さんたちがいるっていったら、目をキラキラさせてた。
 清太くん、ホントに分かりやすい。
 うん。そうだね。
 このまま仲良くしてくれるといいね…。

「先生たちは宿直室にいるから。
 なにかあったらいいにきなさい」
 消灯の準備が整うと、小田先生は校舎への出口でそういった。
「悩みとかあったら、遠慮なくきてね?」
 と、ゆり先生が、小田先生と並んで、人指し指を立てた。
「こんな早くじゃ、眠れないよ〜」
 なんて声があがったけど、パチッと電気を消されちゃった。
 目を開けてるのに、瞑ったみたいにまっくら。
 そんなまっくら闇に、非常灯だけが光ってた。
 仕方なしに、じっと眠気がくるのを待つけど…。
 非常灯の光は気になるし、体育館の天井は高くて、ただっぴろいから、なんか落ち着かない。
 なにも見えない天井を見つめ、ボクはふっと今日を振り返ってた。
 今日は楽しい一日だったなぁ…なんてね。
 うん。そうだね。
 一日がこんなに楽しかったなんて、はじめてかもしれないね。
 早川さんとはケンカすることになっちゃったけど…。
 うん。そうだよね。
 早川さんのことは、なんとか仲直りすれば、楽しい思い出になるよね。
 明日もいろんなことがあるといいね…。
 明日も今日みたいに、楽しいことがおこって、女の子とえっちして…。
「清太くん…」
 ふと気になって、ボクは隣の布団の清太くんに声をかけた。
「ん〜?」
 清太くんは眠たげだったけど、まだ起きてたみたい。
「そういえば、ボク、えっちのとき、ゴムつけてなかった…」
「マジッ?!」
 ガバって感じで、周りのみんなも飛び起きちゃった。
「ヤベーぞ、そりゃ…」
「マズイな…」
「うん…」
 みんな深刻な声で話してる。
 やっぱり…。先生のいうこと守らなかったから、オシオキなんだね…。
「確実に妊娠するな、こりゃ…」
「ああ。明日にゃみんな揃って、腹ボテだ…」
「は、腹ボテって…ええっ?!」
 腹ボテって、妊娠して、女の子のお腹が大きくなっちゃうってコトだよね…?
 ウ、ウソ…。
 一晩で、そんなになっちゃうの〜〜〜っ?!
「鈴代〜、よかったな〜。ロリッ子のパパになれるゾ…」
「……オヤジ…寝ろ…」
 パ、パパって…え?! ええっ?!
「ど、ど、ど、ど、どうしよー!
 ねぇ、清太くんっ! ボ、ボクどうしたらいいっ?!」
 ボクは堪らず飛び起きて、清太くんを揺り動かした。
「ど、ど、どうするって…ぷッ!
 ぶわっはははははは〜〜〜っ!」
 清太くんが吹き出し、続いて周りのみんなも、ゲラゲラ笑いだした。
「わ、笑いごとじゃないよっ!」
「大丈夫だって。
 コンドームなんて、みんな、最初の一回だけだからよっ!」
「じゃ、じゃ…他の子も、腹ボテ……」
 ボクは、ひとクラスとちょっと分の、腹ボテ女の子集団を想像して青ざめちゃった。
「ひぃ〜〜〜っ!
 頼むから、もうそのへんにしてくれよ〜。
 みんなを笑い殺す気か〜?」
「だ、だってっ!」
「冗談だよ、じょうだん」
「じょう…だん…?」
「ちっとみんなで、鈴代をかついでみただけだよ。
 こんな簡単にひっかかるとは思わなかったぜ」
「なんだ。冗談か…」
 ダマされてたことがわかると、ボクはガックシ、気が抜けたみたいになっちゃった。
 ホント。怒る気も一緒に抜けてっちゃったよ…。
「あ。でも、ゴムつけてなかったのは…」
「心配すんな。
 そーゆーことにならないように、みんなしてるし」
「安心しろよ。鈴代」
 ゴローくんかな?
「ゆり先生がそうならないように、ちゃんと管理してくれてるから。
 いままでもそんなことは起きなかったし」
 ゴローくんの声、穏やかで、なんとなく安心感を与えてくれる。
「魔法のスープのお陰だな」
「だな」
 清太くんと半村くんが頷きあうみたいにいった。
「ふーん…」
「だいたい、一晩で腹ボテになんてなるワケがないだろ〜?」
「まぁ…たしかに…そうだよね…ふふ。アハハ。
 そうだよね、ボクって莫迦だなぁ〜」
 よくよく考えたらそのとおり。
 ボクはさっきまでの自分を思い出して、おかしくなっちゃった。
//
「おまえって、ホントにおもしろいなっ!
 オレ、すげぇ、気に入ったぜっ!」
//--
 ひとしきり、みんなで笑ったあと、みんな一緒にパタンと布団に倒れ込んだ。
 あ〜。おもしろかった。
 でも、また目が冴えちゃったよ。
「全然、カンケーねぇけどさ」
 清太くんがポツリと話しだす。
 目が冴えちゃったのは、みんな同じみたいだね。
「ゴシラ対キングキトラの動画、手に入ったぜ。
 小政みたがってたろ?
 今度みにこいよ」
 うん、とかって、小野寺くんが返事をした。
 ゴシラ対キングキトラか…いいなぁ……。
 うん。そうだよね。
 映画なんて、ホントはどうでもいいんだ。
 待ってれば、そのうち観れるものだし。
 ボクの望みは映画じゃないんだ。
 体験教室が終わってからも、清太くんたちと遊びたい。
 そう思ったんだ。
 だから、勇気を振り絞って、いってみることにしたんだ。
 対したことじゃないかもしれないけど…でもボクには、すごく勇気がいることだったんだ。
 たいしたことじゃないかもしれないけど…でもボクには、すごく勇気がいることだったんだ。
「あ、あのさ…ボクも…いいかな…?」
//	 ボクの喉は緊張して、カラカラに乾いているみたいだった。
//	 対した言葉じゃないかもしれないけど…ボクにはすごく、勇気がいることだったんだ。
「鈴代…なにいってんだ、おまえ?」
 あう…。やっぱりダメか……。
「おめぇは来ないとダメだぜ?
 歓迎会にしてやんだからよっ!」
 一瞬ボクは、自分の耳を疑って、次に出てきた言葉はこうだった。
「あ、ありがとう…」
「けはは。ば〜か。なに涙声んなってんだよ。
 同じオッパイ星人じゃねぇか」
「そ、そうだよね。同じオッパイ星人だよね…」
「ははは」「ふはは」
 って、みんな笑ってくれた。
 うん。そうだね。
 うれし涙を布団で拭いたの、はじめてだ…。
 ブータとの勝負は恥ずかしかったけど、お陰ではじめての“仲間”ができた。
 たぶん、早川さんのお陰だね。
 早川さんが、ボクとブータを勝負させたから…。
 そうだ。
 早川さんへの仲直り、謝るのはよそう。代わりに…。
“ありがとうっ!”
 っていおう。
 早川さん…喜んで…なかなおり…してくれる…か…な……。
//	 ボクはいつのまにか、眠ってしまったみたいだ…。

*[[◆はじめての夜|萌え小説 16]]へつづく…
{{include hatu15・コメ}}
{{category 本編,本文,nolink}}