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!!!はじめての仲間
早川さんと仲直りか…。
どうすればいいんだろうね…。
ボクは体育館の壁に背をつけて、体育座りでため息をついた。
うん。そうなんだ。
友達がいなかったから、ケンカなんかしたことないんだ。
だからボク、仲直りの方法なんて、知らないんだ。
え? 謝る? なにを?
なにがゴメンなのか、はっきりしなきゃ、謝りようもないよ。
例えば…そう…。
殴ってもいないのに、“殴ってゴメン”じゃ、ヘンでしょ?
それに早川さんなら、逆に怒っちゃいそうだよ。
「なにがゴメンなんだか、ハッキリしなさいよっ!
それがなきゃ、誠意ってモンがないでしょ!
わかる? トウヘンボクのスットコドッコイっ!!」
なんてね。
どうすればいいんだろうね…ホントに…。
そんなことを考えながら、ボクは早川さんを遠くみていた。
早川さんは女の子たちと談笑していて、人懐っこい笑顔を浮かべてた。
なんでこんなに、キュンとしちゃうんだろ。
まるで美代ちゃんが、まだ佐藤さんだったときみたい…。
ボクはブンっと頭を一振りして、浮気な考えを追い払った。
そしたら聞こえてきたんだ。
男子たちの声が。
「うひょ〜」
// とか、かたまってる男子たちから声がした。
体育館の真ん中あたりで、一塊になってる男子たちから声がした。
// みんなであぐらをかいて、円になって、中心にあるなにかを見てるみたい。
みんなで円陣になって座り、中心にあるなにかを見てるみたい。
なにを見てるんだろ…?
うん。そうだね。
ちょっと気になるよね。
そっと、気づかれないように覗いてみようか…。
そう思って近づいて。背を延ばしてたら、中心にいるひとりが振り向いたんだ。
「なんだ、鈴代じゃねぇか…」
隣のクラスの男子――たしか、清太くんだ。
「鈴代も見るか? スゲーぞ?」
「え、えと…」
どう返事しようか、迷ってたら。
「おう、場所ツメろよ。
鈴代、ココ座れよ。特等席だぜ?」
って、清太くんが場所を空けてくれて、自分の真隣をポンポンと叩いてくれた。
うん。そうだね。
いつもは仲間外れなのに、こんなことはじめて。
隣のクラスだからかな…?
座っちゃっても…大丈夫かな…?
そんなふうにちょっと不安になったけど、せっかくだからボクは座ってみることにした。
「オレは、{{ruby 山本 清太,やまもと せいた}}だ。
みんなは“清太”って呼んでる」
ボクが座ると、清太くんは自己紹介をしてくれた。
髪の短い、いかにもワルガキ、って感じの快活な印象。
うん。鼻にバンソーコーが似合いそうだよね。
「オレ、{{ruby 大村 政和,おおむら まさかず}}。よろしくな」
続けて、体格がよくて、背の高い男の子が口を開いた。
「{{ruby 小野寺 政一,おのでら せいいち}}」
体格がいいチビの男の子。
っていっても、ボクと変わらない背丈かな?
大村くんのサイズを小さくしたみたいな感じの子。
無愛想に名前をいったけど、怒ってるワケじゃないみたい。
「{{ruby 半村 太郎,はんむら たろう}}なっ!」
そういってニカッと笑った子は、なんか調子よさそうな感じ。
ちょっと、清太くんと感じが似てる。
「オ、オラは、小屋島…」
「こいつは、オヤジ」
イガグリ頭のハンプティ・ダンプティみたいな男の子を、隣の子が遮っていった。
「オレは{{ruby 為村 悟朗,いむら ごろう}}。“ゴロー”でいいよ」
オヤジって紹介された子はブスッとして、ゴローくんはニヒヒっと笑った。
ゴローくんは髪が短くて、眠そうな目をしていて、なんか、女子にモテそう。
他にも何人かの子が名前を教えてくれた。
隣のクラスの子もいれば、ボクと同じクラスの子もちょっといた。
そして最後にボクの番。
うん。そうだね。なんだがすごく緊張する…。
「ボ、ボクは…」
「第六ちんぽ大王・鈴代はじめ。
みんな、もう知ってるって!」
清太くんがそういうと、みんなはニカッと、くったくのない笑顔を作った。
「よ、よろしく…」
あう…。ヘンなアダナ…。定着しならなきゃいいけど…。
「しっかしブータのヤツ、ザマアみろだったな〜」
清太くんがボクの背中を、パンって叩いた。
お陰でボクは、ケホッとなっちゃった。
どうやら食堂勝負の一件で、ボクは一目おかれた…ってトコみたいだね。
「オレな、アイツは昔っから気にいらねぇんだ。
目に入るモンは、全部自分のモノだと思ってやがってよ。
“オレの縄張りの女に手を出すな”、だとよ。
まるでハーレムのボス気取りだぜっ!」
“縄張り”って、クラスのことかな…?
「誰のものでもねぇってんだ!
なぁっ!」
「最近じゃ、オレたちの縄張りにもちょっかいかけてきてるしな」
と、小野寺くんが、ブスッと口を開いた。
「モテてると勘違いしてやがんだ」
「一回でもヤらしてもらえれば、自分のモノだと思ってるんだぜ?」
「女子にはおべっか使って、男子には陰湿なイジメするしな」
「相手にしたくないから、みんな黙ってるけどサ。
しょーじき、ウゼーよ。ブルドッグ顔」
ブータのヤツ、相当きらわれてるんだね。
みんなから、口々に悪口が飛び出した。
//
「ご、ごめんな、鈴代」
見覚えのある同じクラスの子が、オズオズといってきた。
「オレも…」
その隣の子も、同じクラスの子。
? なんで謝るんだろ…?
「ブータにいわれてたんだ…。
鈴代と話しするなって…。
じゃないと仲間外れだって…」
「オレも…仲間外れにされんのが、いやだったんだ…」
なんだ。ボクが避けられてたのって、ブータの差し金だったのか。
不思議とあっけらかんと思った。
うん。そうだよね。
イヤな思いはしたけど。
この子たちのせいじゃないし。
ブータは食堂での勝負で、情けない姿をみた後だったしね。
手品の種明かしをみたくらいのことだよね。
「い、いいよ。気にしないで。
それより、なにを見てたの?」
ボクはちょっとこそばゆくて、本来の話題に戻した。
//--
// 「そういえば。なにを見てたの?」
// ブータの悪口大会になりそうだったんで、ボクは本来の話題に戻した。
「おう。忘れてたぜ。
コレコレ…」
清太くんが開いたのは、エロ本だった。
しかも…。
「コ、コレ、…む、無修正…?」
「おう、オレさまの秘蔵本だぜ!」
金髪で青い目、白い肌に黒い下着…。
あられもない格好でおまんこみせてたり…、合体してたり…。
「なんだ、鈴代。はじめて見たのか?」
「う、うん…無修正は…はじめて…」
ボクは卑猥な写真に目を奪われてて、清太くんの問いに恥ずかしがるのも忘れてた。
うん。そうだよ。
ボクだってオトコの子だもん。
エロ本くらい隠し見るよ?
でも無修正のははじめてだったし、こんな…なんていうか、ロコツなのじゃなかったし…。
ウェーブかがった金髪、白い肌。
なんか、ゆり先生を重ねてしまう…。
「ゆり先生…、ハーフなのかな…?」
「クォーターとかって、いうんじゃないのか?」
「おとうさんが外国人? それとも、おかあさん?」
「ずっと日本人だって」
「ふーん…」
「ゆり先生も似合いそうだよなっ!
こーゆー下着」
見ている子たちから、口々に言葉が飛び交う。
「なんか、オトナの下着って、え、エッチだよな…」
「パンツなんて、ヒモだもんな…」
「コッチのなんて、穴が開いてて、おまんこ丸見え。
履いたままスルのかな?」
「ソレ、なんかコーフンしねぇ?」
「お、オラ、ブルマがいいな…」
// 「オヤジくさいヤツだな、おまえ〜」
// 「おまえのシュミって、オヤジくさいな」
「オヤジくさいシュミだな…オヤジ……」
オヤジくんの言葉に、ゴローくんがツッコミをいれた。
「やっぱ、おっぱいはおっきいのがいいよな…。
鈴代はどうだ?」
清太くんが聞いてきた。
「え? お、おっきいほうかな…?」
「どのくらいが好みだ?
このくらいか?
それともこの超爆乳か?!」
ページをめくり、めくり、聞いてくる。
あんまりおっきいと、ちょっとキモイかな…。
でも小さいのもねぇ…あ、あの写真とかは…。
なんて、目移りするみたいに感じて、ボクは当たり障りのなさそうな、正直なトコをいってみた。
「ゆ、ゆり先生くらいがいいかな…?
柔らかそうだし…」
「おまえ…」
ぐっと清太くんが見据えてくる。
な、なんか、マズイこといったのかな…?
「わかってんなぁ、鈴代〜。
ヨシ! 今日からおまえも、オッパイ星人の仲間入りだ」
清太くんはボクの肩を叩きながら、快活に笑った。
「アハハ…」
なんか、うれしいな。
「ゆり先生のおっぱいはサンコーだぜ〜。
柔らかくて、おっきくて…」
清太くんの言葉を皮切りに、また口々に言葉が飛び交う。
「肌もスベスベってか、こうムチムチ?」
「ちがうちがう、吸いつくっていうんだぜ?」
「お、お尻もイイ…。おっきくて…肉付きよくて…ハァ…」
「おまえ、ホントにオヤジくせぇなぁ…」
みんな、ゆり先生としたことあるみたい…。
羨ましいね。
ボクにもさせてくれるといいんだけど…。
「でもなんかなぁ…」
ため息するみたいに誰かがいった。
「だよなぁ〜」
同調するみたいな声。
なんだろ?
「おっぱいも、お尻もおっきいし、いろんなことさせてくれるけどさ…」
「あ。わかるわかる、オトナの余裕ってヤツ?」
「オトナの余裕?」
ボクは首を捻った。
「オレたちじゃ、おまんこいっぱいにならないしな」
「束になっても、先生たちイカせられないし。
くやしいけどよ」
「やっぱ、オトナのデカさにゃ、かなわねぇのかなぁ…」
清太くんが目を落とした写真は、ビール瓶みたいな黒いおちんぽ。
「ゆ、ゆり先生は魔性のオンナだ。
みんな、気をつけなきゃダメだゾ」
と、オヤジくんが唐突にいうと、みんなから一斉に呆れ声があがった。
「ハァ〜〜?」
// そんな呆れ声に負けず、オヤジくんは真剣な面持ちで続ける。
「オ、オラ、一回だけあるだよ。
汁でいっぱいのおまんこの中が、キューと吸盤みたいに吸いついてきて、モゾモゾ蠢いて…」
「ハァ〜〜?」
呆れ声の重奏。
「オレ、ゆり先生と何度もシてるけど、そんなんなったことねぇぞ?」
「ウ、ウソじゃねぇぞ。
すごく気持ちイイけど、なんか、知ってはイケナイ、オトナの世界を垣間見たみたいな…」
「ハァ〜〜?」
みんなを代表するみたいに、清太くんが口を開く。
「オヤジ、ワケわかんねぇよ。
気持ちヨすぎて幻覚…じゃなくて、幻聴…でもないか…」
「錯覚でいいんじゃないかな?」
ボクは助け船をだした。
「ソレだ。
オヤジ、気持ちヨすぎて、ケッカク起こしたんだ」
結核だって。
いいまちがいを正すのもわるくて、流しちゃったけど。
清太くん、かなりおもしろい。
「信じねぇなら仕方ねぇ…。
これがオトナの大きさってヤツだ。
なぁ、鈴代」
ポンとボクの肩に、オヤジくんが手をのせた。
「ハハ…そうだね…」
「オヤジってヘンなヤツだろ?」
清太くんが、こそっと耳打ちしてくる。
「でも、おもしろいよ。いいヤツだね」
ボクもコソッと返すと、ふたりでクスクス笑った。
「あ、コレコレ」
男の子のひとりが、ページを指さした。
「オレ、この格好でヤってみたいんだ」
四つん這いの女の人に、男が腰を当ててる。
これって、入れてるのかな?
「なんだ。フツーじゃん!」
清太くんが、さも当たり前みたいな声をあげた。
「フツー?」
ボクはこんな格好でしたことなかったから、聞き返してた。
「フツーだよ、こんなの」
「鈴代ははじめてだったから、知らなくてもしょうがねぇよ」
指さしてた男の子がフォローしてくれた。
「おまえもそうだろ〜」
「う、うるさいなぁ…」
隣から頭をかるくコズかれて、その子は負け惜しみを呟いた。
ボクも含めてみんなが笑った。
「へへ。いいか、コレは後背位っていうんだぜ」
清太くんが、得意気に話しだした。
「これは正常位な」
早川さんとしたのと、同じ体勢の写真。
「こっちはキジョーイ。ザイに…」
ページがパラパラめくられ、いろんな体勢の写真がでてくる。
中には、女の人が苦しそうな体勢もあった。
「いろいろあるんだ…」
半ば感心してボクは呟いた。
「あ。これ、ヤッたことある」
見覚えのある体勢を見つけると、ボクは反射的に指さしてた。
春子お姉さんとしたときの体勢。
足を抱えての側位、ってことらしい。
アレ、セイジョーイじゃなかったんだね。
なんて思ってたら、清太くんが大げさな声をあげた。
「マジ?! 誰とヤッたんだ?」
「はる…中等部のお姉さん。シャワーしながら」
名前でいいそうになって言い換えた。
親しい仲とか思われると、ちょっと気恥ずかしいからね。
「鈴代スゲー。経験値いくつアップした?
もう上級レベルじゃね?」
上級レベルって…。
苦笑と照れ笑いが混ざる。
「気持ちよかったか?」
「う、うん。ヨカッた」
清太くんの目、なんか、憧れるみたいにキラキラしてた。
ホントにやったことないんだね。
清太くんって、裏表なくて、正直な性格みたい。
「先生たちとは大抵、後背位だよな」
「うん。セイジョーイで、おっぱいイジくりながらもいいけどな。
背丈ちがいすぎ〜」
「手を届かせると、動きにくいもんな〜。
先生もコウハイイの方がイイみたいだし」
「ふ〜ん。
みんな、先生たちとシたことあるんだね…」
// ボクはうすうす思ってたことを呟いてた。
// 羨ましいそうな声色だったんだろうね。
「こう、腰のあたりを掴んでな。
おっきなお尻をめがけて、ぱ〜んぱ〜んって」
男の子が立ち上がって、自慢げにモノマネてみせた。
「おまえがそんな音させてるかぁ〜?
ぱふん、ぱふん、のまちがいだろ〜?」
「う、うるさいなぁ…」
モノマネた子はみんなに笑われて、赤くなった顔で腰を下ろした。
「でもよ。なんか、すげぇ、コーフンするよな、コウハイイ…」
みんな同意なのか、後背位の写真をみつめ、押し黙ってしまった。
そんなにスゴイんだ…。
「でも、女子ってイヤがるよな」
「コウハイイはな。
なんか恥ずかしい〜、とかいって。
おまんこみえるのは一緒だってのにサ」
「クツジョクテキっていうんだぜ」
「そ、その表情がイイのに…」
「オヤジ…おまえカエレ」
「後ろからスル方が気持ちイイんだけどな…」
「そうなの?」
ちょっと興味が涌いて、聞き返してみた。
「ちんぽが奥まで届きやすいし」
「ふーん…」
そうやってみんなでエロ本を見てたら、突然、女の子の声がした。
「ばっかじゃないの?!」
腰に手をあてたその子は、茶色っぽい髪のポニーテールの女の子。
なんか見覚えのある女の子だった。
「させてくれる女の子そっちのけで、エロ本なんか見てっ!」
半ば呆れ声に、清太くんがムッとした顔になった。
「うるせぇなぁ〜。
ソレはソレ、コレはコレ。
オトコのロマンだっ!」
「そ、そうだ、そうだ、くやしかったら、ブルマ履いてこい〜」
「オヤジ…おまえは口を開くな」
「鈴代くんまで、こんなエロガキと一緒になって…」
「関係ねぇだろ。
鈴代はオレと同じ、オッパイ星人になったのだっ!
なっ?!」
清太くんがボクと肩を組んだ。
「う、うん」
「ホラみろ。
同士・鈴代の悪口はゆるさんぞぉ〜!」
清太くんが拳を高く振り上げる。
「そ、そうだ、そうだ〜。
くやしかったら、巨乳ブルマになってこい〜」
「オヤジ…おまえ、ホントにカエレよ…」
「フンだっ!」
女の子はプイッとポニーテールを揺らし、向こうへいっちゃった。
そして振り返って、あっかんべーをしてきた。
負けじと清太くんも、べぇー。
「アハハ…」
うん。そうだね。
嫌われちゃったけど、ま、いいかな。
だって、他の男の子とこんな話しができたのははじめてで、仲間に入れたこと自体、とてもうれしかったもの。
「夜は寝る時間。
おとなしく休んで、明日への鋭気を養いなさい」
と、小田先生が就寝の準備にやってきた。
ボクらはバスケットコートの半分、半分に、男子と女子とに分けられた。
そこにそれぞれ、布団を敷いて寝るらしい。
どうやら、夜中はえっち禁止みたいだね。
まぁ、昼間はさんざん、えっちしてたワケだから。
夜中ぐらい身体を休ませなきゃ、ホントに死んじゃうもんね。
「鈴代、こっちこいよ。一緒に寝ようぜ」
清太くんはボクを気に入ってくれたみたい。
エロ本鑑賞会のあとも、イロイロと話しをしたんだ。
ゲームやプラモや、マンガや、よく遊ぶ公園の話しや…。
マンガじゃない本の話しをしたら、清太くんはウンザリしてたけどね。
でも図書室の話しには興味を持ったみたい。
中等部のお姉さんたちがいるっていったら、目をキラキラさせてた。
清太くん、ホントに分かりやすい。
うん。そうだね。
このまま仲良くしてくれるといいね…。
「先生たちは宿直室にいるから。
なにかあったらいいにきなさい」
消灯の準備が整うと、小田先生は校舎への出口でそういった。
「悩みとかあったら、遠慮なくきてね?」
と、ゆり先生が、小田先生と並んで、人指し指を立てた。
「こんな早くじゃ、眠れないよ〜」
なんて声があがったけど、パチッと電気を消されちゃった。
目を開けてるのに、瞑ったみたいにまっくら。
そんなまっくら闇に、非常灯だけが光ってた。
仕方なしに、じっと眠気がくるのを待つけど…。
非常灯の光は気になるし、体育館の天井は高くて、ただっぴろいから、なんか落ち着かない。
なにも見えない天井を見つめ、ボクはふっと今日を振り返ってた。
今日は楽しい一日だったなぁ…なんてね。
うん。そうだね。
一日がこんなに楽しかったなんて、はじめてかもしれないね。
早川さんとはケンカすることになっちゃったけど…。
うん。そうだよね。
早川さんのことは、なんとか仲直りすれば、楽しい思い出になるよね。
明日もいろんなことがあるといいね…。
明日も今日みたいに、楽しいことがおこって、女の子とえっちして…。
「清太くん…」
ふと気になって、ボクは隣の布団の清太くんに声をかけた。
「ん〜?」
清太くんは眠たげだったけど、まだ起きてたみたい。
「そういえば、ボク、えっちのとき、ゴムつけてなかった…」
「マジッ?!」
ガバって感じで、周りのみんなも飛び起きちゃった。
「ヤベーぞ、そりゃ…」
「マズイな…」
「うん…」
みんな深刻な声で話してる。
やっぱり…。先生のいうこと守らなかったから、オシオキなんだね…。
「確実に妊娠するな、こりゃ…」
「ああ。明日にゃみんな揃って、腹ボテだ…」
「は、腹ボテって…ええっ?!」
腹ボテって、妊娠して、女の子のお腹が大きくなっちゃうってコトだよね…?
ウ、ウソ…。
一晩で、そんなになっちゃうの〜〜〜っ?!
「鈴代〜、よかったな〜。ロリッ子のパパになれるゾ…」
「……オヤジ…寝ろ…」
パ、パパって…え?! ええっ?!
「ど、ど、ど、ど、どうしよー!
ねぇ、清太くんっ! ボ、ボクどうしたらいいっ?!」
ボクは堪らず飛び起きて、清太くんを揺り動かした。
「ど、ど、どうするって…ぷッ!
ぶわっはははははは〜〜〜っ!」
清太くんが吹き出し、続いて周りのみんなも、ゲラゲラ笑いだした。
「わ、笑いごとじゃないよっ!」
「大丈夫だって。
コンドームなんて、みんな、最初の一回だけだからよっ!」
「じゃ、じゃ…他の子も、腹ボテ……」
ボクは、ひとクラスとちょっと分の、腹ボテ女の子集団を想像して青ざめちゃった。
「ひぃ〜〜〜っ!
頼むから、もうそのへんにしてくれよ〜。
みんなを笑い殺す気か〜?」
「だ、だってっ!」
「冗談だよ、じょうだん」
「じょう…だん…?」
「ちっとみんなで、鈴代をかついでみただけだよ。
こんな簡単にひっかかるとは思わなかったぜ」
「なんだ。冗談か…」
ダマされてたことがわかると、ボクはガックシ、気が抜けたみたいになっちゃった。
ホント。怒る気も一緒に抜けてっちゃったよ…。
「あ。でも、ゴムつけてなかったのは…」
「心配すんな。
そーゆーことにならないように、みんなしてるし」
「安心しろよ。鈴代」
ゴローくんかな?
「ゆり先生がそうならないように、ちゃんと管理してくれてるから。
いままでもそんなことは起きなかったし」
ゴローくんの声、穏やかで、なんとなく安心感を与えてくれる。
「魔法のスープのお陰だな」
「だな」
清太くんと半村くんが頷きあうみたいにいった。
「ふーん…」
「だいたい、一晩で腹ボテになんてなるワケがないだろ〜?」
「まぁ…たしかに…そうだよね…ふふ。アハハ。
そうだよね、ボクって莫迦だなぁ〜」
よくよく考えたらそのとおり。
ボクはさっきまでの自分を思い出して、おかしくなっちゃった。
//
「おまえって、ホントにおもしろいなっ!
オレ、すげぇ、気に入ったぜっ!」
//--
ひとしきり、みんなで笑ったあと、みんな一緒にパタンと布団に倒れ込んだ。
あ〜。おもしろかった。
でも、また目が冴えちゃったよ。
「全然、カンケーねぇけどさ」
清太くんがポツリと話しだす。
目が冴えちゃったのは、みんな同じみたいだね。
「ゴシラ対キングキトラの動画、手に入ったぜ。
小政みたがってたろ?
今度みにこいよ」
うん、とかって、小野寺くんが返事をした。
ゴシラ対キングキトラか…いいなぁ……。
うん。そうだよね。
映画なんて、ホントはどうでもいいんだ。
待ってれば、そのうち観れるものだし。
ボクの望みは映画じゃないんだ。
体験教室が終わってからも、清太くんたちと遊びたい。
そう思ったんだ。
だから、勇気を振り絞って、いってみることにしたんだ。
対したことじゃないかもしれないけど…でもボクには、すごく勇気がいることだったんだ。
たいしたことじゃないかもしれないけど…でもボクには、すごく勇気がいることだったんだ。
「あ、あのさ…ボクも…いいかな…?」
// ボクの喉は緊張して、カラカラに乾いているみたいだった。
// 対した言葉じゃないかもしれないけど…ボクにはすごく、勇気がいることだったんだ。
「鈴代…なにいってんだ、おまえ?」
あう…。やっぱりダメか……。
「おめぇは来ないとダメだぜ?
歓迎会にしてやんだからよっ!」
一瞬ボクは、自分の耳を疑って、次に出てきた言葉はこうだった。
「あ、ありがとう…」
「けはは。ば〜か。なに涙声んなってんだよ。
同じオッパイ星人じゃねぇか」
「そ、そうだよね。同じオッパイ星人だよね…」
「ははは」「ふはは」
って、みんな笑ってくれた。
うん。そうだね。
うれし涙を布団で拭いたの、はじめてだ…。
ブータとの勝負は恥ずかしかったけど、お陰ではじめての“仲間”ができた。
たぶん、早川さんのお陰だね。
早川さんが、ボクとブータを勝負させたから…。
そうだ。
早川さんへの仲直り、謝るのはよそう。代わりに…。
“ありがとうっ!”
っていおう。
早川さん…喜んで…なかなおり…してくれる…か…な……。
// ボクはいつのまにか、眠ってしまったみたいだ…。
*[[◆はじめての夜|萌え小説 16]]へつづく…
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