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はじめと佐藤さん


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【@右巻きソフトウエア】 「初・体験教室」 「ま〜めいど★ハンター」 「怖くない怪談」 「ないしょのえろカタログ」

はじめと佐藤さん


「ねぇねぇ、鈴代くん!
 体験倶楽部に入るんだって?」
 次の日、登校してすぐに、市川さんが話しかけてきた。
 三つ編みで、ウワサ好きの市川さん。
 さすがに早耳だね。びっくりしちゃった。
「もう知ってるの?」
「うん! 隣のクラスはもう、知らない子いないわよ?」
 市川さんは朝日みたいに、顔を輝かせた。
「さやちゃん先生と早川さんが、鈴代くんを取り合って、取っ組み合いのケンカのあげく、夕日をバックに握手したんだって〜?!」
 あはは。どんな尾ひれがついたんだろ…。
 ちょっと興味津々かも。
「口ゲンカくらいだよ。
 それもちょっと言い合いしたくらい」
「あらそう…」
 当事者のボクから、イロイロ聞きたかったんだろうね。
 市川さんは拍子抜けしてた。
「倶楽部はいつから活動なの?」
「まだわかんない」
「メンバーは? 他に誰がいるの?」
「いまのところ、さやちゃんだけなのかな?」
「ふ〜ん」
 ボクはランドセルから教科書を取り出しながら、矢継ぎ早の質問に答えた。
「あたしも、入ってみようっかなぁ〜」
 市川さんは三つ編みの先をイジって、ふっくらの頬をほんのり染めてた。
 なんだか片思いの花占いしてるみたい。
 薄桃色のうなじに、ボクはドキンとしちゃった。
 うん。そうなんだ。
 市川さんは、ちょっとポッチャリ系。
 だけど、たまに仕草がなんか色っぽくて、ドキンとさせられちゃうんだ。
 うん。きっと将来、美人になると思うよ?
 そんな風に見とれてたら、佐藤さんが教室に入ってきたんだ。
「おはよう〜」
 眠そうな声で佐藤さんがいうと、市川さんはササッとボクから離れていった。
「おはよう、美代ちゃん!」
「おはよう、早苗ちゃん〜」
 さっそく市川さんは、佐藤さんへさっきの話しをしたみたい。
 ふたりの話しは聞こえなかったけど、たぶん、そう。だって、佐藤さんがボクの方を見てたから。

 佐藤さん、なんだか目が潤んでて、ほっぺたが真っ赤だった。
 ボクと目が会うと、すぐに顔を背けちゃった。
 うん。そうなんだ…。
 佐藤 美代(さとう みよ)ちゃんとは、ギクシャクしたままなんだ…。

 佐藤 美代ちゃんは、ボクのクラスの学級委員。
 長い黒髪と広いおデコがチャームポイントの、恥ずかしがり屋でかわいい女の子。
 本人は広いおデコを気にしてるけどね。
 ボクは佐藤さんにずっと片思いしてて、体験教室で両思いになって、イロイロあって…フラれちゃったんだ。
 それ以来、佐藤さんはなんだか、よそよそしいっていうか、避けられてるみたい。
 ボクもなんとなく、話しづらい…。
 「名前で呼んで」っていってくれてたのに、美代ちゃんがまた佐藤さんに戻って、あんまり話さくなった…。
 ケンカしたワケでもないのに、なんか、ずっとケンカし続けてるみたいな感じ。
 ハァ…。せめて片思いしてた頃くらいに、話せたらいいのに…。
 あの時もあんまり話せなかったけど、いまよりずっとマシだよ。
 うん。さやちゃんもまだ、仲直りできてないんだって。
 さやちゃんと美代ちゃん、あんなに仲良しだったのにね…。
 そうなんだ。ボクもさやちゃんも、仲直りは苦手。
 二人とも、“仲直り”ってしたことないから、仲直りの方法を知らないんだ。
 図書室の本にも、載ってないしね。
 また三人で、夕食を食べたときみたいに、楽しくお話しできればいいのに…。

 うん。そうなんだ。
 佐藤さんのことも、ボクの悩みのひとつ。
 体験倶楽部、ホテル探し、佐藤さんとの仲直り。
 ボクって苦労性なのかな…。
 ハァ…。ため息出ちゃうよ…。

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