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【@右巻きソフトウエア】 「初・体験教室」 「ま〜めいど★ハンター」 「怖くない怪談」 「ないしょのえろカタログ」
はじめてのコスプレ
その後、しばらく王子さまとメイドごっこでふざけあって、ボクら三人は仲良くえっちをした。
とても楽しくて、とても気持ちヨカッた。
でも、コスプレえっちは、後始末がタイヘンだね。
ボクの出した精液で、衣装はドロドロ…。
さやちゃんは紺色のスカートを見つめ、難しい顔をしてた。
「『青い衝動』…とかどうかしら?」
「なにそれ?」
「作品名よ。
ホラ、なんとなく芸術的じゃない?
紺のスカートに飛び散る白い精液…。
今日という日にしか出会えない、偶然の産物よ?」
うん…そうだね…。
いつもながら、さやちゃんの発想力ってスゴイよね…。
ボクと美代ちゃんは、目が点になっちゃったよ。
「そうだわ!」
頭の上に電球が光ったみたい。
輝いたさやちゃんは、手の平をパチンと合わせた。
「額に入れて保存しましょうよ!
あたしたち三人、今日という日の記念にっ!!」
「や、やめてよ、そんなの!」
ボクは悲鳴みたいな声をあげちゃった。
「じゃ、『メイドさん大好き!!』」
「作品名じゃなくてぇ…」
「『王子さまの思い出』は?」
美代ちゃんがいうと、さやちゃんはピッと人指し指を向けた。
「それもなかなかね、美代ちゃん♪」
ふたりはクスクス、悪戯っぽい微笑みを交わし合い、ボクはゲンナリ、全身から力が抜け落ちちゃったみたい。
ワルノリもいいけど、美代ちゃん?
さやちゃんのことだから、ぜったい、ずぇ〜たい、冗談じゃすまないよ?
保存どころか、美術室に展示までされて、みんなに笑われちゃうよ?
そんなの、オネショをそうされるより恥ずかしいよ…?
「美代ちゃん、いいの…?
ココんトコ、美代ちゃん“の”でしょ?」
スカートの真ん中の、大きなシミ。
ボクの指先が円を描くと、美代ちゃんは真っ赤になっちゃった。
「は、はじめくんのイジワル…」
「イタっ!」
美代ちゃんがボクの腕をギュウっとツネって、ボクは大げさでもなく声をあげちゃった。
さやちゃんが、ぷっと吹きだす。
「ハジメったら、デリカシーなさすぎ!」
「もう…さやちゃんにいわれたくないよ……」
口を尖らせ、腕を摩るボク。
体をくの字に大げさに笑う、さやちゃん。
美代ちゃんもクスクス笑って、大粒の涙を指先で拾ってる。
こういうの、“仲直りの実感”っていうのかな…?
うん。そうなんだ。
ボクも自然と、笑いあう仲間に加わってた。
そのままじゃシミになっちゃうから、衣装は洗うことにした。
三人でとりとめない話しをしながら、洗面所で水洗いして。
暗くなった部室の隅にかけると、衣装の裾からポタポタ、水滴が垂れ落ちた。
「絞り方、足りなかったかな…」
美代ちゃんがしゃがみこんで呟いた。
ギュウっと、よく絞ったのにね。
「明日、運動部の洗濯機でちゃんと洗い直そう?」
さやちゃんの提案に頷いて、ボクらは部室を後にした。
三人だけの校庭の真ん中。
互いに手を振って、それぞれの家へ足を向ける。
「それじゃ、また明日!」
「またね〜」
ボクと美代ちゃんは、同じ方向。
さやちゃんは、反対側。
できれば三人で帰りたかったけど、こればっかりは仕方ないね。
校門を出る間際。ふとみると、さやちゃんはまだ校庭の真ん中にいた。
影のない夕闇の中で、中途半端に手をあげたまま。
ボクが小さく手を振ると、さやちゃんも小さく振り返して、すぐに赤いランドセルが見えた。
なんでか、後ろ髪を引かれるみたいな感じ…。
「帰ろ」
そういって、美代ちゃんが手を繋いでくれた。
柔らかくてあったかい、美代ちゃんの手。
うん。不思議だよね。
裸を見てるワケじゃないのに、そのくらいドキドキして、とっても照れくさい…。
美代ちゃんもそうなのかな…?
お月さまみたいなオデコを横目に、ボクはそう思った。
「あ、あのサ…その髪型…」
「はじめくん、好きでしょ? おデコな髪型!」
くったくのない笑顔は、とってもドキンとしちゃう。
「う、うん…す、すき…かわ、かわぃぃ…」
うん。そうだね。
褒めるのって、やっぱり苦手…。
でも、尻すぼみになったのはそれだけじゃないんだ。
(おデコにチュッてシてあげたい。体験教室のときみたいに)
舞い上がった頭でそんな衝動に駆られて、ボクの体はロボットみたいにギクシャクしちゃってた。
そしてどう自然にシようか考えてると、美代ちゃんがポツリと呟いたんだ。
「……ごめんね、はじめくん…。
お見舞いに来てくれたのに…ぶったりして…」
「う、うん…」
ボクはあやふやに頷き、俯き加減の美代ちゃんは、歩幅が小さくなった。
「ずっと…仲直りしたかったのに…。
フッたの、あたしだから……わかんなくて……」
とつとつとした言葉はか細くて、美代ちゃんの横顔は、まるで雲に隠れるお月さまみたいだった。
「うん…知ってた…」
面はゆくそういうと、美代ちゃんは不思議そうにボクを見た。
「短冊…美代ちゃんのでしょ?」
美代ちゃんはポッと頬を染めると、コクンって、頷いてくれた。
「織り姫さまと彦星さま、お願いかなえてくれたのかな…」
「そうかもね。
三人のお願いだものね」
ニッコリしてそういうと、美代ちゃんの足がピッタリと止まった。
「は、はじめくん…さ、さやちゃんのこと…ス、スキなんだよね…?
さやちゃんも、はじめくんのコト、スキだって…」
「う、うん……」
「あた、あたしもね、はじめくんがスキ!
た、体験教室で、さやちゃんのスキに負けちゃったけど……。
で、でもね、今度は負けないの!
しっかり手を放さないの! だから、また――」
ぎゅっと両手で手を握られて。
ボクはつい、赤いランドセルの背中を忘れちゃったんだ…。
“スキ”って、うれしいよね。
それがかわいい女の子で、好意を持ってる子なら、なおさらだよね?
ボクはちょっと背を伸ばして、美代ちゃんのおデコにチュッとキスをした。
唇にしなかったのは、照れくさかったのと、さっきからそうしたかったからだと思う。
美代ちゃんは真っ赤になったオデコに手を当ててから、ボクのほっぺにチュッてしてくれた。
まるで小さな教会で、ふたりだけの結婚式をしたみたいな気分。
たぶん美代ちゃんも、同じだったんだと思う。
ボクたちは言葉を交わすのも忘れて、ニコニコと家路を歩いた。
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