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!!!はじめての倶楽部
あのお見舞いの日から、週が明けて。
美代ちゃんはまた学校に来るようになってた。
腫れてたほっぺも元通り。
でもボクとは、ギクシャクを通り越してた。
避けられてるっていうより、もう無視されてるって感じ。
完全に嫌われちゃったみたいだよ…。
うん…。ひとりぼっちだった時より、ツライ…。
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//--
そして週末。
体験倶楽部の招集があった。
月曜に話しがあったとはいえ、ちょっと急だよね?
もう。小田先生ってば、なんでも思いつきなんだから。
でも、はじめての倶楽部。
ゆり先生のいうとおり、なにかいいことがあればいいけど…。
美代ちゃんのこともあって、どんより、気が晴れない。
指定どおり体操着に着替えたボクは、不安な気持ちを引きずって、集合場所の体育館へ向かってた。
そしたら廊下で、オヤジくんとゴローくんを見つけたんだ。
ボクは小走りに近づいて、後ろから声をかけた。
「ふたりも入部するんだね!」
放課後に体操着で体育館に向かってるってことは、そういうことだよね?
案の定、オヤジくんはゆっくり頷いた。
「うむ。鈴代だけのハーレムにはさせないぞ」
ハーレムって…。
苦笑いのボクの肩を、オヤジくんがポンっと叩く。
「まぁ、安心しろ。
オラは見てるだけだ」
「見てるだけ…?」
「うむ。飛び箱の中からとかな」
「オヤジ…そりゃ、覗きだろ…」
ゴローくんがいつも通りツッコんで、ボクはクスリと安心した。
うん。知ってる子が一緒だとホッとするよね。
「他のみんなは?」
オヤジくんとゴローくんだけなのかな?
「みんなは別の用があるからな」
歩きだしながら、ゴローくんが答えてくれた。
「別?」
// 「大政は、華道部。
// 「大政は、茶道部。
「大政は、囲碁部。
小政は、空手道場」
// 小政くんはわかるとして。大政くんが華道部って意外。
// 小政くんはわかるとして。大政くんが茶道部って意外。
小政くんはわかるとして。
大政くんは囲碁部なんだ。体が大きいから、運動系だと思ってた。
//--
「半太は、新妻にゾッコンだしな」
「新妻…?」
ゴローくんとオヤジくんは、ニヤニヤ笑いあってた。
「清太くんは?」
「清太は校庭だ」
「校庭…」
校庭部って、ナニするんだろ…? お掃除とかかな?
なんか、清太くんに似合わないなぁ。
「鈴代、魔法のインク、知ってるか?」
うん。ちょっと前に流行ったおもちゃだね。
スパイセットの魔法のインク。
時間が経つと消えちゃうヤツ。
でも、それと校庭部がなんで繋がるんだろ?
「今日、国語で習字があってさ。
先生の墨汁を、それと取っ替えたんだ。
しばらくしたら、黒板のお手本が真っ白な半紙に戻っちゃってサ。『せんせ〜い、お手本が見えませ〜ん!』
先生、キツネに摘まれたみたいな顔してんの!」
想像したら、吹き出しちゃった。
「で、取っ替えた犯人はいま、校庭十周の真っ最中ってワケなんだ」
「あはは! 清太くんらしいっ!」
「倶楽部に来ても、ヘトヘトでえっちどころじゃないだろうな」
体育館に入ると、もう何人かの男子・女子がいた。
あちらこちらに仲良し同士固まって、小田先生が来るのを待ってるみたい。
///
// うん。あの子は来てないみたい。
///--
「思ったより多くないね」
ボクがいうと、ゴローくんは頭の後ろに手を組んだ。
「体験教室の後だからな。秋になれば増えるかもな」
「すっずしっろく〜ん♪」
ポンっとたたかれて振り向くと、市川さんがいた。
「市川さんも入部?」
「うん。
美代ちゃんもいっしょだよ?」
美代ちゃんは、ぷいっとそっぽを向いてた。
//美代ちゃん
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//--
「が、学級委員だから…」
前髪を分けたおデコを真っ赤にして怒って、ボクとは話したくないって感じ…。
「あたしが誘ったんだ」
市川さんが美代ちゃんのふくれたほっぺをツンツン。
ちょっとうらやましい…。
「早川さんは?」
「さやちゃんは、新体操部で今日は欠席」
口実じゃなくて、ホントに重なっちゃったんだ。
他校へ見学に行くんだって。
「だって。
よかったね、美代ちゃん!」
「きょ、今日は見学だけよ。
えっちはしたくないんだから…」
美代ちゃんはほっぺをツンツンされて、ぷうっと破裂しそうなくらいふくれさせた。
ハァ…さやちゃんもかなり嫌われちゃってるね…。
やっぱり、ボクが原因なのかな…。
ため息出ちゃうよ…。
「へ〜。けっこう集まってるじゃない〜」
体育館を見渡し、市川さんはニッコリ。
「そうなの?」
「うん。初等部にしては多い方よ」
と。唐突に市川さんは、ボクの喉元を指差した。
「ソレ、なあに?」
目ざとく見つけられちゃった。
シャツの襟で隠してたんけどね…。
// 「んと…。孫悟空の輪っか…」
「んと…。さやちゃんのプレゼント…」
うん。ボクは犬がつけるみたいな、赤い首輪をつけてたんだ。
冗談じゃないんだもんね…さやちゃん…。
いやだったけど、お見舞いの時のうしろめたさもあって、断りきれなかったんだ。
「コレしてれば、誰もえっちしないだろうって」
首輪には『早川鞘子のポチ』って、名前が書かれてて、それを見た市川さんは、プッて吹き出しちゃった。
「ポチぃ〜、お手ぇ〜♪
うまくできたら、チンチンでちゅよ〜♪」
もう…。
市川さんってば、さやちゃんみたいなコトいうんだからぁ…。
ゴローくんとオヤジくんまでお腹かかえてるよ…。
ほどなく小田先生が体育館へやってきて、ボクらは部室である、舞台地下に集められた。
広い体育館に散らばってたせいかな?
多いように感じなかったけど、こうして見ると、ひとクラス分くらいいるみたい。
見たかんじ、中学年と高学年の子ばかりみたいだった。
それで意外なことに、女子の方が多いんだ。
男子が少ないって、タイヘンそう…。
「みんな、鈴代くんに興味津々なんだよ?」
くひひって、市川さんがイタズラっぽく笑った。
もう…。からかってるんだろうけど…。
そういわれると女子はみんな、ボクの股間を見てるように思えちゃう…。
うん。ボクって、ちょっとした有名人みたいなんだ。
体験教室で、おちんぽが大きいって広まっちゃって、初等部の女子で知らない子はいないとか。
やだよね…もう…。そんなコトで有名なんて…。
「まぁ、そう硬くならずに〜」
小田先生、相変わらず下品だよ…。
小田先生はヤラしい目で笑って、コホンと咳払い。
集まったみんなに、倶楽部の説明を始めた。
「みんな、今日は集まってくれてありがとうね。
この倶楽部は、“節度あるえっちを学ぶ”ためのクラブ。
でも、そう難しく考えないでね。
勉強とか友達のこととか。
いやなことあったり、誰にもいえない悩みがあったり。
そんな心が疲れるようなことがあったら、みんなと遊んで、ちょっとだけ忘れてみましょう。
この体験倶楽部は、そんなクラブなの。
えっちをしたい子、してみたい子、そうじゃない子も、気軽に集まってね。
みんなで仲良く楽しく、ドキドキな思い出を作りましょう!」
先生がそういってニッコリ微笑むと、みんなで「は〜い」って手をあげた。
「それじゃ、自己紹介からしましょうか」
先生はみんなに体育座りをさせて、ボクらはひとりひとり立って、自己紹介を始めた。
自己紹介は、ほとんどクラスと名前をいうだけの、簡単なものだった。
四年生がいちばん多くて、ついで五年生と六年生。
三年生の子も少しだけいた。
そうそう。あの、お下げ髪の五年生もいたんだ。
//こよしちゃん
// 名前は、{{ruby "小町 好美","こまち よしみ"}}さん。
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//--
生徒会の人なんだって。
ちょっとびっくり。
だって、メガネをかけてて、すごく頭がよそさうで、えっちへの興味なんて、全然なさそうなんだもん。
「鈴代くん、鼻の下のびてる…」
ボソッと美代ちゃん。
「ち、ちがうよ。
この間、廊下で見かけたから…」
「フンッだ」
もう…。ツンツン美代ちゃんで、ボクは早くも、心が疲れちゃいそうだよ…。
そうして自己紹介が終わるころ。
舞台地下に、ヘトヘトの清太くんが入ってきた。
小田先生がニッコリ。
「清太、いいトコに来たわねぇ〜」
「マジ?! えっち始めるの?!」
「これから大掃除」
「おお〜そ〜う〜じぃ〜〜?」
ウンザリ顔で清太くんがいうと、舞台地下は爆笑に包まれた。
うん。そうなんだ。
今日は大掃除だけだって。
それと、模様替え。
ボクらは小田先生の指揮で、手分けして舞台地下の大掃除をし始めた。
ロッカーやダンボールを一度外に出して、掃き掃除をするんだ。
長いこと人の出入りが少なかったから、かなりホコリが溜まってる。
“ホテル”にしてたときに、少しずつやってたけど、おおっぴらにはできなかったからね。
「なにコレ…すごぉ〜い」
誰かがダンボールの中から、演劇部の衣装を見つけたみたい。
「ホラホラ、鈴代くん♪ お姫様みたい〜」
純白のドレスを身に当てて、はしゃぐ市川さん。
やっぱり女の子の憧れなんだね。お姫様って。
「王子様もあるよ〜」
「すごいね〜。コスプレえっちできちゃうね〜」
//
お下げ髪の五年生がニッコリしてた。
// お下げ髪の小町さんがニッコリしてた。
//--
お姫様と王子様のコスプレえっち…。
それも女の子の憧れなのかな…?
「いいわね〜。先生に合うのがないのが残念」
小田先生はにこやかに微笑んでた。
「これなら大丈夫じゃね?」
ゴローくんが馬の着ぐるみのを引っ張りだす。
「それにどんなシチュエーションをつけろと…?」
おもしろくなさそうな小田先生に、ゴローくんはヒヒヒって笑った。
「馬なら、鈴代くんじゃない〜?」
市川さんがケラケラ笑って、聞いてた子はみんな大笑い。
もう…ボクのおちんぽのこといってるんだね…。
ボクは恥ずかしくって、顔から火が出そうだよ。
でも、美代ちゃんだけは、マジメな顔で掃き掃除してたんだ。真っ赤な顔で恥ずかしがって…。
って、思ったら、プッて吹き出して笑いだしちゃったよぅ〜。
もう…真っ赤な顔は、笑うの堪えてただけなんだね…もう…。
掃除が終わって。
模様替えもだいたい終わると、ボクらはめいめい座って、おしゃべりをしていた。
雑然とホコリだらけだった舞台地下は、倶楽部の部室になって、スッキリ様変わり。
半地下の薄暗い雰囲気も、なんだか明るくなったみたい。
ロッカーの配置が変わったせいかな?
ロッカーで仕切りが作られて、そこでえっちをしていいみたい。
冷たい床のマンマだったけど、あとでお布団を用意するって。小田先生がいってた。
「食べる?」
市川さん、もう仲良しさんができたみたい。
知り合ったばかりの子に、お菓子を配ってた。
掃除しているときに、仲良くなったのかな?
大掃除の目的って、そんなとこにあったのかもしれないね。
小田先生って見かけによらず、ちゃんと考えてるんだね。
「鈴代くん、はい。
美代ちゃんもどう?」
“マツタケの森”の箱を差し出され、ボクと美代ちゃんはお礼をいって手を延ばした。
「こ〜ら!
学校にお菓子持ってきちゃ、ダメでしょ?」
いきなり小田先生に注意されて、ボクはマツタケの森が喉に詰まっちゃうかと思ったよ…。
「先生も食べる〜?」
「いりません」
市川さんが差し出す箱を、小田先生はキッパリと断った。
「さやちゃんもわたしも、タケノコ派だから〜」
部室に入ってきたゆり先生が、ニッコリ笑った。
ゆり先生は副顧問なんだって。
「やっぱり、マツタケよりタケノコよね〜。
若くてぐんぐん、おっきくなるタケノコ…って、ゆぅりぃ〜」
おどける小田先生に、みんなクスクス笑った。
「うふふ」
美代ちゃんもクスクス笑ってる。
まるで、体験教室の夕食のときみたいだね。
美代ちゃん、やっぱりかわいいなぁ…。
広いおデコでいると、まるでお日さまが笑ってるみたい…あれ?
ボクは、いまさらに気づいた。
美代ちゃんの髪型。
いつも前髪で隠してるのに、今は自慢げにおデコを晒してるんだ。
あの、真ん中から分けた髪型って…。
「先生! 帰る前にシャワーしていい?
ホコリまみれで気持ち悪い〜!」
ふいの市川さんの声に、思い出しかけてたことをかき消されちゃった。
「鈴代くんも行こう! 洗ってあげるから!」
「え…」
返事する間もなく、ボクは市川さんに腕を引っ張られちゃった。
「じゃ、先生も〜」
「さやちゃん先生は、まだやることあるでしょ?」
「ゆぅりぃ〜のいけずぅ〜…」
小田先生とゆり先生の掛け合いを横に、市川さんは美代ちゃんも誘っていた。
「美代ちゃんもいっしょスル?」
「あたしは…まだ、風邪が残ってるから…」
「そうなんだ」
市川さんはちょっと残念そうだった。
ボクもちょっと残念…。
えっちしたいからじゃなくて、仲直りのキッカケがほしいから。
友達としてなら…かまわないよね? さやちゃん?
結局、ボクと市川さんのふたりでシャワーをして、その日は帰った。
うん。ボクの学校はスポーツに力を入れてるとかで、ちゃんとお湯の出るシャワーがあるんだ。珍しいよね。
他の子も何人か、ボクたちの真似をしてシャワーしてた。
う、うん。えっちも、してた…。
……うん。…ボクも…市川さんと…一回だけ…。
さ、さやちゃんには内緒だよ?
首輪に効力ないって知ったら、ショックでしょ?
それに、今度は首輪に鎖をつけられちゃうよ…。
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