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はじめてのお昼会議


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【@右巻きソフトウエア】 「初・体験教室」 「ま〜めいど★ハンター」 「怖くない怪談」 「ないしょのえろカタログ」

はじめてのお昼会議


 ボクは昼休みに、校庭の隅にある大鉄棒へ向かってた。
 体験倶楽部と“ホテル”のことを、みんなに話しにいくんだ。
 みんなを集めるのははじめてなのに…それがわるい知らせなんて…ハァ…。
 ボクの足どりは重く、小田先生の言葉を思い出してた。
「それでね。体育館の舞台地下を、活動場所にしようかと思ってね。
 ほら、演劇部ってなくなっちゃったでしょ?
 ちょうどいいかと思ってね」
 うん。そうなんだ。
 それで小田先生は、舞台地下を調べてたってワケ。
 でも活動場所にするってことは、“ホテル”を取り上げられちゃうってことだよ…。
 “ホテル”はボクら生徒が作った、みんなのもの。
 ホコリだらけだったのを、みんなで掃除して、気持ちよく使えるように整えていったんだもん。
 話したらみんな、怒るだろうなぁ…。
 ハァ…気が重い…。ため息でちゃうよ…。


 集合場所には清太(せいた)清太くんたち、――“ホテル”の主要メンバーがもう集まってた。
 隣のクラスは、次は体育の時間みたいで、みんな体操着を着ていた。
 もちろん、さやちゃんも一緒で、大鉄棒の上にいた。
 砂場のそばの大鉄棒はとても高くて、飛び上がっても、ボクの背丈じゃ手が届かないんだ。
 さやちゃんはそんな高いトコに座って、くるん、くるんって回ってた。
 すごいよね。逆上がりだって苦手なボクと大違い。
 さやちゃんは運動も得意なんだ。

「まあ、しょうがねぇな」
 みんなに話したら、意外とスンナリ受けいれられた。
「気にすることねぇよ!」
 そういって清太くんは、ボクの背中を叩いてくれた。
 清太くんは体験教室で知り合って、はじめての友達になってくれた男の子。
 ボクと正反対のわんぱくなガキ大将タイプだけど、なんとなく気が合うんだ。
「倶楽部に取られたのは、鈴代たちのせいじゃねぇし。
 見つかったのも運がわるかっただけだし。
 な? みんな?」
「そうだな」って、他のみんなもいってくれた。
「職員会議でも話しが出てたみたい。
 サボッてる子がいるみたいだって。
 遅かれ早かれだったのね」
 澄子(すみこ)ちゃんもフォローをしてくれた。
 澄子ちゃんは背の高い、ポニーテールの女の子。
 しっかりしていて、同学年とは思えないんだ。ひとつ上のお姉さんって感じ。
「むしろ早めにわかって、よかったじゃないか」
 体格がいい大政(おおまさ)くんがいうと、体格のいいチビの小政(こまさ)くんはブスッと頷いた。
「あんまり、いい場所じゃなかったしな」
「かち合うこと、多かったし!」
 半太(はんた)くんが同意するように、ニカッと笑う。
 その半太くんと澄子ちゃんの間で、姫川(ひめかわ)さんがコクコク頷いてた。
 姫川さんは低学年と間違えるくらいちっちゃいんだ。
 だからみんなの間に立ってると、まるで隠れてるみたい。
 ボクはみんなの様子を見てホッとした。
 うん。どうやらみんなも、あの場所はあんまり気にいってなかったみたいだね。
「新しいホテル、探さなきゃな…」
 顎に手を当てて、清太くんが唸った。
「オヤジ、いいとこ知らないか?」
「知ってる。
 だが、素人にはオススメしない」
「オヤジ、それ、死語だぞ」
 イガグリ頭のハンプティ・ダンプティみたいな男の子――オヤジくんが答えて、眠そうな目のゴローくんがツッコんだ。
「みんなで体験倶楽部に入ればいいんじゃね?
 先生も公認なんだし、サ!」
 半太くんが幅跳びよろしく砂場に飛び込んで、もうもうと砂ぼこりをあげた。
「莫っ迦じゃないの?」
 風に流れた砂ぼこりに、澄子ちゃんが顔をしかめる。
「えっちできればいいってモンじゃないわ。
 “ホテル”は、あたしたちの秘密基地よ?
 先生たちオトナに、干渉されたくないわ」
「サボることできないしな」
「アンタはサボりすぎよ!」
「でもよ、もうアテなんかねぇぜ?」
「舞台地下だって、さんざん探した結果だモンなぁ〜」
「だよなぁ〜」
 口々に意見が呟かれるけど、どれも半分、諦めた感じ。
 見通しは暗いね…。
 ボクは肩身がとても狭くて、シュンとうなだれちゃった。
「新しいホテルは、あたしが探すわ」
 今まで黙ってたさやちゃんが、ふいに口を開いた。
「早川、アテでもあんのか?」
 まぶしそうに大政くんが見上げて聞くと、さやちゃんは、
「ないわよ」
 っていって、くるん。
 宙返りして大鉄棒から降り立った。
 さやちゃんは気高い鷹みたいに、まっすぐ校舎を見つめてた。
「でも、見つかったのはあたしの責任だもの。
 なんとか見つけるわ」
「ボ、ボクも探すよ!」
 ボクは思わず、そういってた。
 だって、さやちゃんだけの責任じゃないもの。
 ううん。元はといえばボクが、サボッてみたいようなこといったのがいけないんだし。
 そしたら、体験倶楽部に入らされることもなかったんだもん。
「みんなで探せばいいじゃない。
 その方が早いし、誰の責任ってワケでもないんだから」
 ニッコリした澄子ちゃんを、さやちゃんはなにもいわずに見てた。
 そしたらちょうど、昼休みが終わるチャイムがなったんだ。

 う〜ん。さやちゃんと澄子ちゃんって、あんまり仲がよくないのかな…?
 うん。そうだよね。
 話し合いの終わり間際、そんな感じだったよね?
 さやちゃんって、愛想のいいタイプだと思うんだけどね…。
 不思議に思ったボクは、授業へと歩きだす中、コッソリ澄子ちゃんに聞いてみたんだ。
「しょうがないわ。あたし、風紀委員だもの。
 早川さんみたいな、一匹狼には好かれないわよ」
 澄子ちゃんは肩をすくませてたけど…。
 ボクには風紀委員が、ワルガキ連にいることも不思議なんだけどね。


 それにしても…。
 あの分じゃ、誰も体験倶楽部に入ってくれそうにないね。
 うん。そうだね。
 さやちゃんがいてくれればいいけど…なにか口実を作って出なさそう…。
 そしたら倶楽部は、知らない子たちばかりかな。
 はぁ…不安だなぁ…。
 ボクもなにか、口実を考えといた方がいいかな…。
 そうため息をついて。
 上履きに履き替えてると、ゆり先生が話しかけてきたんだ。


「鈴代くん、お友達と遊んでたの?」
 ゆり先生、ピンクのブラウスの上に白衣を羽織ってた。
 有能なお医者さんみたいで、なんだかとってもカッコイイ。
「う、うん」
 ボクは顔が赤くなる気がして、コックリ頷いた。
 ゆり先生はうれしそうに、ニッコリしてくれた。
「そう。よかったわね」
 緑川 ゆり(みどりかわ ゆり)先生は、ボクの担任の先生。
 やさしくて、眼鏡の似合う金髪の美人で、みんなの憧れ。
 もちろん、ボクもそう。
 だからどうしても、赤面しちゃう。
 うん。そうなんだ。
 特別授業の後でも、このクセは治らないみたい。
 うん…。もしかしたら、よけいにそうなっちゃったかも…。
「鈴代くん、体験倶楽部に入部するだってね。
 さやちゃん先生から聞いたわ」
 そういわれてボクは、ビクンっとしちゃった。
 小田先生ったら、ゆり先生に話しちゃったんだ…もう…。サボッてたことまで伝わってなければいいけど…。
 うん。小田先生とゆり先生は親友なんだ。
 だから、つい話しちゃったんだと思う。
 ちなみに、“さやちゃん先生”の出所はゆり先生。ゆり先生がそう呼んでるのが、みんなにうつっちゃったみたい。
 ゆり先生はボクの前にしゃがんで、目線を合わせてくれた。
 先生はボクたちひとりひとりに話すときに、そうしてくれるんだ。
「先生ね、みんなと協力してなにかするって、わるいことじゃないと思うの」
「でも…えっちでしょ…?」
 協力してスルことなのかなぁ…。
 ボクが首をひねると、先生は微笑を浮かべた。
「うふふ。それは集まる口実ね」
「こうじつ…?」
「うん。なにもなしに集まることって、ないでしょ?」
 まぁ、そうだよね…。
「先生たちね、悩みを抱えてる子がね、気軽に立ち寄れる所を作ってあげたいの。
 仲がいいから、よけいにいいにくいこともあるだろうし。先生にいえないこともあるでしょ?」
 うん。それはわかるよね。
 ボクも友達が欲しかったのに、どうしていいかわからなかったんだもの。
「だからそういう子が来たら、一緒に遊んで、心をかるくしてあげてほしいの」
 そう微笑まれて。ボクはなんだか頼られてるみたいな気がして、わるい気がしなかった。
 それに、前に体験教室を勧めてくれたのは、ゆり先生だもの。
 そのお陰で友達もできたし、さやちゃんにも出会えた。
 だからボクは、ゆり先生のことをとっても信頼してるんだ。
 うん。そうだよね。
 先生がわるいことじゃないっていうなら、体験倶楽部も、きっといいことがあるハズだよ。
「うん! わかったよ、先生!
 知らない子に混じるのは不安だけど…ボク、がんばってみるよ!」
「うふふ」
 先生、微笑んで、ボクの頭を撫でてくれた。
 なんだか、とってもうれしい。
「さやちゃん先生、強引だったでしょ?
 でも恨まないでね?
 卸したてのブラウス、汚されちゃったって、プンプンしてたの」
 あ。そうだった。
 ボク、小田先生のブラウス、汚しちゃったんだっけ。
 そのことは謝ってないや。すっかり忘れてたよ。
「だからちょっとだけ、イジワルしたくなっちゃったんだって。
 許してあげて、ね?」
 それであんな、後味がわるいことになっちゃったのかな…?
 さやちゃんもムキになる方だし…。
 話しがヘンにこじれちゃったのかもしれないね。
「ボク、小田先生に謝らなくちゃ…」
「うん」
 ゆり先生はニッコリ、頷いてくれた。
「それから、ゆり先生にも…。
 ボク、授業を抜け出しちゃったんだ…」
 うん。そうだね。黙ってればいいのかもしれないけど…。
 ボクはゆり先生に、とっても後ろめたくなって、心が重く感じたんだ。
 だって、悪いことをしたんだもん。自分から謝らなくちゃダメだよね? それで先生に、嫌われちゃうかもしれないけど…。
「ごめんなさい…せんせい…」
 謝ったボクを、ゆり先生はふんわり抱いてくれた。
「鈴代くん、いい子ね。
 先生、また鈴代くんが好きになっちゃった。うふふっ!」
 ゆり先生はとても甘い、いい香りがした。
 思わずおちんぽが、ピョコンしちゃった。
 ボクも先生の脇に手を回したら、あったかいぬくもりと、ブラウスの下のブラを見つけて、またおちんぽがピョコン!
 う〜。なんだか、堪らなくなっちゃったよ〜。
 そしたら先生は、ボクの唇に人指し指を立てたんだ。
「でも、もう授業をサボッちゃダメよ?
 先生、キライになっちゃうから」
「う、うん。もうしない。
 ごめんなさい!」
「うふふ。それじゃ、教室に行きましょう。
 鈴代くん、この間の算数テスト、すごく点数がよかったわよ」
 ゆり先生に褒められて、ボクは顔が熱くなっちゃった。
「さやちゃんが教えてくれたから…」
「うふふ」
 考えてみたらボク、クラブ活動って、はじめてなんだよね。
 うん。イロイロ悩みはあるけど、きっとわるいことばかりじゃないよね?
 ゆり先生と手を繋いで、ボクはちょっと、前向きになっていた。

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