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はじめてのお見舞い


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【@右巻きソフトウエア】 「初・体験教室」 「ま〜めいど★ハンター」 「怖くない怪談」 「ないしょのえろカタログ」

はじめてのお見舞い


 佐藤さんは風邪をひいて、学校を休んでる。
 もう一週間くらい。
 おたふく風邪なんだって。
 それでボクは、大事な連絡のプリントを届けに行くところ。
 なんでボクが行くのかって?
 ボクはまだ、おたふく風邪をしたことがないから。
 家の方角が同じなのも、クラスではボクだけだったんだ。

 佐藤さんの家は、二階建ての一軒家。
 ボクは二階の窓を見上げ、ため息をついた。
 うん。玄関まで来たのに、まだ呼び鈴を押せずにいたんだ。
 なんだか、敷居が高いよね…。
 佐藤さんとギクシャクしたままなのもあるけど。
 女の子の家に行くなんて、はじめてのことだったし。それも、好きだった女の子だもんね。
 緊張しちゃうよ。逃げ出しちゃいたいくらい。
 やっぱり、さやちゃんを誘えばよかったかな…。
 でも、家が離れてるから、帰るの遅くなっちゃうし…。
 市川さんは、友達と約束あるって、ダメだったし…。
 うん。そうだね。
 ため息ばかりついていても、しょうがないよね。
 ボクはちょっと背伸びをして、呼び鈴を押した。
「は〜い」
 って、中から女の人の声がした。
 あ。お花とか買ってきた方がよかったかな?
 ボクって気が利かないよね。
 せっかく、佐藤さんと仲直りするチャンスなのに…。
 ため息をすると同時に、ドアが開いておばさんが出てきた。
 佐藤さんのお母さん。
 前に授業参観で見た覚えがある。
 佐藤さんって、お母さん似なんだよね。
 色白でおっとり、美人でおしとやかな感じ。
 ウチのお母さんとエライちがい。
「あ、あ、あの、えと、えと――」
 ボクは言葉を準備してなくて、ただ、ただ、アワをくっちゃった。
 ホント、ボクって機転もなんにも効かない。
 うん。さやちゃんにもよく呆れられる…。
「あら。鈴代くん…?」
 ちょっと驚いたふうに、おばさんはそういった。
「は、はいっ!」
 名前を呼ばれるなんて意外。
 ボクはびっくりしちゃった。
「なにかご用?」
「あ、あの、が、学校の、お知らせのプリント持ってきて、お見舞いもあって、み、美代ちゃん、休んだままだから。その…」
 説明にもならないことをいうと、おばさんはクスリと微笑んだ。
「そう、ごくろうさまね」
 しっかりいえないのが恥ずかしかったんだけど、おばさんが美人なのもあって、ボクは顔がすごく熱くなっちゃった。
「さ。あがって」
 おばさんはボクを招き入れると、玄関そばの階段から二階へ声をかけた。
「美代? 鈴代くんが、お見舞いに来てくれたわよ〜」
「お、おじゃましま〜す…」
 靴を脱いで土間からあがると、おばさんはポンっと手の平を合わせた。
「あ。鈴代くん、おたふく風邪はだいじょうぶ?」
「えと。まだ、やってないです」
「じゃ、ちょうどいいわね!」
 病気になるのがちょうどいいって、なんかヘンだよね?
 できることなら、なりたくないんだけど…。

 おばさんに案内されて、ボクは二階の佐藤さんの部屋へ入った。
 佐藤さんはベッドの上で、半身を起こしてた。

 ピンク色のパジャマで、ひよこ色のかわいいカーディガンを羽織ってる。
 そして白いタオルを顎からほっぺに巻いて、茶巾みたいに頭の上で結んでた。
 おたふく風邪でほっぺが腫れるのって、ホントなんだ…。
 市川さんと倶楽部の話しをした時、ほっぺが赤かったのは、そういうことだったんだね。
「よかったわね。
 鈴代くんがお見舞いに来てくれて」
「もう! お母さん!!」
 クスクス笑いながら、おばさんは一階へ降りていった。
 佐藤さんはチラッてボクを見て、真っ赤な顔でウサギのぬいぐるみを抱きかかえちゃった。
「もう…こんなヘンな顔で恥ずかしいのに…」
 ほっぺがふくれてるみたいだけど、それがおたふく風邪のせいなのか、ボクにはよくわからなかった。
 でも、かわいい。
 タオルの結びがウサギの耳みたいで、抱いてるぬいぐるみとお揃い。
「うふふ。チャームポイントだね」
 佐藤さん、ぬいぐるで顔を半分隠しちゃった。
 怒っちゃったのかな…?
 ゴマかす言葉も思い浮かばなくて、ボクは物珍しく部屋を見回した。
 同い年の女の子の部屋ってはじめて。
 雰囲気は隣の家の春子お姉さんと似てるけど、ぬいぐるみが多くて、赤いランドセルがあって、いかにも“初等部の女の子”って感じがした。
 机の上もキチンと整頓されてて、頭のいい佐藤さんの性格を表してるみたい。
 さっきまで読んでたのかな?
 ベッドの側に国語の教科書があって、その隣に一本足の目覚まし時計があった。
 佐藤さんは慌てて、目覚まし時計を布団の中に隠しちゃった。
 アニメの文字盤だったから、恥ずかしかったのかな?
「“あそにゃん”、ボクも好きだよ」
 っていってあげたのに、佐藤さんは真っ赤な顔のままだった。
「す、鈴代くん、風邪うつっちゃうよ?」
「やっぱり…?」
「うん…たぶん…」
「そしたら、お見舞いに来てくれる…?」
 佐藤さんは、フルフル、首を振った。
「さやちゃんに怒られちゃうもん…」
 それはそうだよね…。
 ボクったら、ナニ期待してるんだろ。
「あ、あの…もう、風邪はだいじょうぶ?」
「うん。もうほとんど治りかけ。
 明日は登校しようと思うの」
 それで思い出したボクは、ランドセルからプリントを取り出した。
「コレ、佐藤さんのお知らせのプリント」
 ションボリ、佐藤さんはプリントを受け取った。
「鈴代くん、なんだか、よそよそしい…」
「え?」
「…名前で呼んでくれてたのに……」
 でも、それはフラれる前のことだもの。
「…ボク、フラれちゃったし…」
 ちょっと間があって、佐藤さんはぬいぐるみをいじりながら、ポツリ、ポツリ。
「“佐藤さん”じゃ、話しにくいよ…。
 なんだか、避けられてるみたい…」
 ボクは目をパチクリしちゃってた。
「ボク…美代ちゃんに、避けられてるんだと思ってた…」
「そんなコト…ないよ…」
 いいにくそうにいうと、恥ずかしがり屋の美代ちゃんは、ぬいぐるみを抱きしめた。
「あの…ごめんね…。
 ボクが乱暴なえっちをしたから、怒ったんだよね…」
 うん…。覚えてるよね…?
 ボク、体験教室で、美代ちゃんに乱暴なえっちをしちゃったんだ。
 んと。犯す…って感じの…。
 あんまり濡れてない美代ちゃんのおまんこに、ムリヤリおちんぽをツッコんで、グイグイ、力任せに出し入れさせたんだ。
 美代ちゃん、大粒の涙をポロポロこぼしてた…。
 なんでそんなコトしたのか、ボクにもわかんないけど…。
 市川さんから美代ちゃんのことを聞いて、そのことに思い当たったんだ。
 フツーの子でも苦しいなら、あの時のボクのは、とっても痛かったんじゃないかって。
 とっても痛くて、それでとっても怒っちゃったんじゃないかって。
 うん。美代ちゃんのが、狭くてキツイのは知ってたよ?
 だから、あの時もすぐに謝ろうとしたんだけど、…機会を無くしちゃって、そのままだったんだ。
「それで、怒ったまんまで、避けられてると思ってたんだ。
 ごめんね…本当に…」
「……鈴代くん、なんにもわかってない」
 頭を下げたボクに、震えた声が聞こえた。
「あたしが怒ったのは…鈴代くんがウソつきだからよ…。
 さやちゃんが好きなのに…ゴマかして…。
 なのに、あたしのことはちっとも見てくれなくて…っ…!
 あたしは…あたしは、鈴代くんとえっちしたいのに…おちんぽ、おっきくて、苦しくて…それでもイイのに…」
 まっすぐにボクを見る美代ちゃんは、いまにもこぼれ落ちそうなくらい、大粒の涙を溜めてた。
 ボクは混乱の堂々巡りだった。
 いわれたことに、頭の整理が全然、つかない。
 だって、だってボク、「おちんぽ苦しい」って、フラれたんだよ? それでもイイって…。ウソつきって? さやちゃんが好きって、好き合いはじめたのは、フラれた後だよ? えっちしたって、苦しくてもイイって…ボクのコト、まだ好きって…コト…? それじゃ、なんでフラれたの…?
 なにをどうしていいかわからないでいると、美代ちゃんは突然、ほっぺたのタオルを取ったんだ。
 そして、唇を突き出してきた。
「キスして」

 まだちょっと赤みがあって、ほんのり膨らんだほっぺた。
 かわいらしく突き出した、桜色の唇。
 キスして…、それで、許してくれるのかな…。
 ボクはさやちゃんに後ろめたい気持ちでいっぱいだった。
 でも、それで許してくれるなら…。
 でも、ホントにそうなのかな…?
 美代ちゃんの唇。
 キスのうまい美代ちゃんが、ボクは忘れられないんじゃないのかな…?
 いないハズのさやちゃんに、側で見つめられてるみたいな気がして、それでもボクは、美代ちゃんに唇を近づけてた。
 パンッ!!
 ほっぺたが、ジンジン、熱くなってた。
 ボクは呆然と自分のほっぺたに手を当てて、美代ちゃんの怒った顔から涙がこぼれて…。
「もう帰ってっ!!」
 美代ちゃんはそう叫んで、布団を被っちゃったんだ。
 くすんくすん…。
 すすり泣きが、西日に染まった布団の中から聞こえてた…。

 階段を降りようとすると、おばさんが紅茶とケーキを持ってた。
「ごめんなさい。美代ちゃん、怒らせちゃった…」
「ううん。気にしないで。
 ずっと寝込んでたから、我が儘になってるの」
 おばさんは「ケーキを食べてって」って、いってくれたけど。
 ボクは遠慮した。
「また、仲良くしてあげてね?
 あの子、鈴代くんのことが大好きだから」
「う、うん…」
 なんでかわかんないけど、ボクはすごくミジメな気分で、すごく泣きたくなってた。

 次の日、ボクはカラッポの席を見て、深いため息をついてた。
 うん…。昨日のことは、さやちゃんに話してない。
 だって、話せないよ…。
 ボクが美代ちゃんのこと好きだったの、さやちゃん、よく知ってるんだもん…。

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