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マーメイド06-4




【@右巻きソフトウエア】 「初・体験教室」 「初・体験倶楽部」 「怖くない怪談」 「ないしょのえろカタログ」

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待ってよ、白衣の天使-1


■看護婦姿のスフィアが、甲斐甲斐しく部屋を掃除していた。

「るん♪ るん♪」
 ここ数日、ハンス(仮名)は人魚狩りにもゆかず、館の中で“白衣の天使”を探し続けていた。
 その理由をスフィアは知らねど、ハンス(仮名)といられることはうれしいかぎり。
 ウキウキ、自然と鼻唄が出てきてしまうである。
 飛び猫・ニーヤは無邪気なスフィアを見るともなしに、深い溜め息をついた。
「…どこにあるのかしら…“白衣の天使”……」
「…くすん…ぐすん……」
 ハンス(仮名)は朝から、膝を抱えてすすり泣き。
 空は青く、どこまでも高いのに、部屋の中はどんより曇り。季節外れの雨期のように、しとしと、ジメジメである。
「…くすん…ぐすん……。
 ……このごろ、ボク、見えるんだよ…」
 カビの生えそうなハンス(仮名)に、ニーヤはけだるげな横目を向けた。
「なにが?」
「もーほーさん。
 たまにニーヤの姿が、毛むくじゃらで筋骨逞しいもーほーさんに見えるンだよぉ〜ッ!」
「失礼ねぇ!
 あたしのどこが、もーほーさんなのよッ!」
「だって、だって、そう見えるんだもん〜ッ!
 んでもって、なんか、こう、胸がキュンッて……。
 あ〜、ボクはこのまま狂い死にするんだ〜ッ!」
 わんわん、号泣するハンス(仮名)に、ニーヤは耳を塞いだ。
 こうなっては、“白衣の天使”を探し出すどころではない。
 なだめも慰めも通じぬハンス(仮名)は、もはや末期症状。
 いや。すでに狂気の死に神が、取り憑いているのやも…。
 と。はた、とハンス(仮名)は泣き止み、スックと立ち上がった。
「人魚姫のとこに行くッ!
 どうせなら'''もーほーさん姿の人魚姫を見ながら死ぬッ!!」
「止めてッ!
 それだけは止めてぇッ!!」
 もーほーさん姿の人魚姫など、考えるのもおぞましい。
 ニーヤは必死でハンス(仮名)のスボンにすがりついた。
「ええい離せ、お宮ッ!!」
 などと、莫迦なことやってる、一人と一匹。
 それとは対照的に、スフィアが上機嫌に歌を口ずさむ。

「ク〜ロス♪ クロス♪ テーブル・クロ〜スぅ♪」
 ふわっと、テーブルクロスが広がる。
「クロス……?」
 ニーヤの瞳孔がまん丸く大きくなった。
「それよッ! それだわッ!!」
「違うッ!
 ボクが見たいのは、テーブルクロスのもーほーさんじゃないッ!!」
「違うわよ! “赤い十字の冠”ッ!」
「へ? テーブルクロスが?
 白いし、冠じゃないよ」
「だから、赤い冠じゃないのよッ!
 瑠歌は、布と十字を読み間違えたのよ
「テーブルクロスには十字なんてないよ」
 ぽかッ!
「いたいなぁ、もう…ボクはビョーニンなんだゾ?」
 叩かれた頭を抑えるハンス(仮名)に、ニーヤは人指し指を立てた。
「いい? クロスは布じゃなくて、十字のこと。
 つまり、“赤い十字の冠”なのよッ!」
「お皿、さらさら♪ 花瓶にお花♪」
 なるほど。
 皿を並べるスフィアの頭には、“赤十字の冠帽”がある。
「て、ことは……」
「“白衣の天使”はアレね。
 なによ。タダの看護服じゃない!!」
 ニーヤはフンっと鼻を鳴らした。
「スフィアッ!!」
「きゃうッ!」
 やっと出会えた“白衣の天使”。
 これでもーほーさんともオサラバである。
 喜びあまったハンス(仮名)は、スフィアに抱きついていた。

「ハンス(仮名)…、やっとその気になってくれたの…?
 スフィア、うれしいッ!!
 でもだめよ…こんな明るいうちから……はずかしいわ…。
 ああ、しかし……。
 恋する乙女は、沸き上がる熱い欲望に、あらがえないのであった……」
 スフィアはひとり盛り上がり、“白衣の天使”をスルスル、脱ぎ脱ぎ…。

「来てッ! ハンス(仮名)ッ!」
 バッと、“白衣の天使”を投げ捨てた。
 下着なしの、生まれたままのスフィア。
 しかし、ハンス(仮名)と飛び猫の視線は、漂う“白衣の天使”を追い……窓の外に消えた。
「あああぁぁぁぁッ!
  “白衣の天使”があああぁぁぁぁ……」
「そうよ、あたしが'''白衣の天使'''よ」
「こんのぉ〜、役立たずの色ボケがァ〜ッ!!」
 絶叫するハンス(仮名)。
 ハンス(仮名)に抱きつくスフィア。
 ハンス(仮名)に噛みつく、飛び猫。
 ドタバタ喜劇は、まだはじまったばかりであった。



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