白衣の天使…?
■とりあえず、人魚姫に聞いてみた。
「“白衣の天使”?
さあ……聞いたことありません」
と人魚姫。
「それが、どうかしたのですか?」
「え、え〜と、その、実は……」
「ハンス(仮名)、ハンス(仮名)〜♪
見て、見て、ほら〜♪」
はしゃいだスフィアが、看護婦姿で玉室へ入ってきた。
「かわいいでしょ〜。宝物殿で見つけたの!」
「またもう…爺ちゃんは……」
曾孫がかわいいのか、黒蜜をかけたパフェの如く、爺さんはスフィアに甘いのである。
「どう、姫さま?
この清楚な色香でハンス(仮名)も、イ・チ・コ・ロ…。
なんちゃって〜♪」
「は、はぁ…。そうですね……」
おませなスフィアに、人魚姫は苦笑い。
スフィアは気にせず、くるりと一回転すると、ほっぺたに人指し指をあてた。
「これからあたしのこと、“白衣の天使”って呼んでね♪」
「白衣の天使ぃ〜ッ?!」
びっくり声をあげるハンス(仮名)に、スフィアはニコニコ。
「そ。白衣の天使〜♪」
「飛び猫! 飛び猫!!」
ハンス(仮名)の呼ぶ声に、飛び猫・ニーヤが慌ててやってくる。
「スフィア、もっとよく見せて」
「うん!」
ハンス(仮名)のリクエストに応え、スフィアはくるりっと一回転。
短い裾がちらちら、可憐に風に舞う。
「かわいい?」
キメのポーズもバッチリのスフィア。
ハンス(仮名)とニーヤは眉根を寄せて、まるでコンテストの審査員である。
「どう思う、飛び猫?
コレ、“白衣の天使”かな?」
「たしかに白衣だけど……ちがうんじゃない?」
顔をしかめてニーヤがいう。
「瑠歌は“赤い布の冠”っていってたもの。
スフィアが被ってるの、白い布よ」
「う〜む」
“封印”に入った人魚姫は、なにもいわない。
スフィアを見つめて唸る、ハンス(仮名)と飛び猫。
「いや〜ん。そんなに見つめないで。
スフィア、困っちゃう〜♪」
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