トップ 差分 一覧 ソース 置換 検索 ヘルプ ログイン

マーメイド06-2




【@右巻きソフトウエア】 「初・体験教室」 「初・体験倶楽部」 「怖くない怪談」 「ないしょのえろカタログ」

[アウトラインを表示]


FC2 Links: ファンタジー 官能小説 ロリ

入り江の瑠歌


■入り江に来たハンス(仮名)は、瑠歌と会っていた。

 捜すまでもなく、入り江で名前を呼ぶと、白いイルカが浜辺の側までやってきた。
 呼び名の通り、この白イルカが瑠歌であるらしい。
「…なんのひねりもないんだね。まんまじゃん」
 拍子抜けのハンス(仮名)に、飛び猫・ニーヤが憮然と説明をする。
「瑠歌はれっきとした、人魚よ。
 今は呪文で、白イルカに化けてるけど」
「なんで、化けてるの?」
「イベントよん」
 白イルカの瑠歌は、子供のような甲高い声で答えた。
「人間の生活って、娯楽が少ないでしょ?
 だから、娯楽を与えてあげてるのよん〜」
「タチの悪い趣味よ。
 紋章持ってるのを教えて、正銘も教えて、からかってるのよ」
 ブスッとニーヤが口を挟む。
 どうもニーヤは、瑠歌が嫌いなようである。
「イルカ相手じゃ、なんにもできないでしょ?
 どうしたらいいんだろって、悩んで騒いで、右往左往。
 それをイジワルく、面白がってるのよ」
「それはアタシのための娯楽ね。
 与えるだけじゃ、ツマんないんだもん〜」
 瑠歌はけたたましく笑い、尾ビレで水面を叩いた。
 お陰でハンス(仮名)は、水を被ってぐっしょりずぶ濡れ…。
 と同時に、瑠歌の背ビレ辺りに紋章を見つけ、う〜む、と唸ってしまう。
 紋章があるとなれば、いずれはえっちしなければならぬ運命。
 しかし、イルカとえっちとは…。
(月光石で人になるなら、みんな苦労してないだろうし…う〜ん…)
 やはり海に潜って…いやいや、その前に人として道を踏み外すのではあるまいか?
 たしかにこれは難問である…。
「それで〜? アタシに何の用なのん〜?
 まさか呼んだだけだなんて〜、タダじゃすまないわよ〜ん♪」
 瑠歌が背ビレを使い、ハンス(仮名)とニーヤにザッパンと水を浴びせた。
「そ、そうだったね」
 紋章はさておき。まずはもーほー茸の解毒。
 それをしなければ、イルカとえっちどころか、もーほーさんに囲まれて狂い死にである。
「えーと…実は…」

 ハンス(仮名)の話しを聞くと、瑠歌はすぐに口を開いた。
「それにはアレが必要だわん〜」
「アレって?」
「え〜と、アレよ、アレ! たしか……
 “白衣の天使”ッ!」
「はくいのてんし…?」
 ハンス(仮名)は目をパチクリ。
「くわしく説明してよ、瑠歌」
 と飛び猫。
「アタシも古代語の文献でしか、読んだことないのよん。
『高貴なる白き衣
 聖なる赤い布の冠
 すべてのものに癒しをさずける』
 それしか記述がないわん」
「それ、確かなの?」
 疑わしげなニーヤの横で、ハンス(仮名)は腕を組んで唸る。
「う〜ん…“白衣の天使”ねぇ……」
「ギルドの宝物殿にあるハズなだわん〜。
 それを持ってきてくれたら、治してあげるん〜」
「ホント?!」
 ハンス(仮名)は飛びつかんばかりに、希望に顔を輝かした。
「そのかわり……」
「そのかわり…?」
「姫さまに会わせてん〜♪」
「……やっぱり…」
 瑠歌の条件に、飛び猫は頭を抱えた。
「姫さまに会いたいの?」
 ハンス(仮名)の問いに、瑠歌は首を大きく縦に振る。
「会わせてくれたら、治してあげるん〜♪
 もう、ずぅ〜〜〜っと、会ってないんだわん。
 会いたいんだわん〜。心配なンだわん〜。切ないンだわん〜」
 イルカに化けてるとはいえ、瑠歌も人魚。
 捕らわれの人魚姫を心配するのは、しごく当前のことである。
 ハンス(仮名)にはそう思われた。
「べつにかまわないよ」
「ダメッ!」
 ハンス(仮名)がいうと同時に、飛び猫・ニーヤは大きな声で打ち消した。
「じゃ、治してあげないッ! ぷいッ!!」
 と、瑠歌はそっぽを向いた。
「飛び猫〜ッ!」
 解毒ができるのは、瑠歌だけ。
 機嫌を損ねては、もーほーさんに囲まれて狂い死にである。
 ハンス(仮名)はニーヤに、すがりついて泣き始めた。
「わ、わかったわよッ!
 会わせてあげるわよッ!」
 ヤケクソにニーヤは、声を張り上げるしかなかった。


[ Prev: ビョーキのハンス(仮名) ] - [ FrontPage ] - [ Next: 白衣の天使…? ]