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マーメイド05-7




【@右巻きソフトウエア】 「初・体験教室」 「初・体験倶楽部」 「怖くない怪談」 「ないしょのえろカタログ」

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純情アクア


■アクアの背中には、腫れあがったいくつもの筋が作られ、ところどころ血が滲んでいた。

「ひどいな……。
 こんなにされる前に、なんで逃げなかったの?」
「王子さまがいいなら、わたしはどうだっていいの……」
 アクアがいつもの繰り言をいう。
 しおらしい台詞も、この期におよんでは色褪せて聞こえた。
「“わたしはいい”なんて、ウソでしょ?
 ガンスの怪我からいうなら、それは間違いだよ」
 アクアはハッと、ハンス(仮名)を見つめた。
「そんなこと、…ないわ…。
 わたしは、……王子さまが好きだから…」
「それじゃ、なんで、正銘を教えないの?」
「そ、それは……」
 アクアの瞳が泳ぎ、失速したように伏せられた。
「わかってるはずだよ、アクアは。
 ガンスが君のことを好いていないように、アクアもそうは思ってない。
 最初はそうだったかもしれないけど、いまは違う」
 そういうとハンス(仮名)は、アクアの背中に滲んだ血を拭うように舐めた。
「ウッ!」
 アクアが痛みを堪え、短く呻く。
 口内にアクアのしょっぱい血の味が広がると、それは甘美な倒錯の味に思えた。
「そうでしょ…?」
 アクアは答えず、ほぞを噛んで背中の痛みを堪える。
 囁きながら、ハンス(仮名)は紋章の傷に舌を這わした。
「痛いんでしょ? アクア…?」
「うッ!」
 舌を這わせる度に、アクアが呻き声とも喘ぎ声ともつかない声をあげる。
「ごめんよ。もっと早く来ればよかった……」
「アぅん……!」
「ボクのせいだね。
 ボクがガンスをけしかけたから……ごめんね、アクア…」
「はぁンッ!」
「だから、ボクのことを責めていいんだよ。
 ボクが悪いんだから……」
「やめて……いたい……」
 漏れ出た言葉は吐息混じり。
 アクアの耳たぶは、いつのまにか紅色に染まっていた。
「かわいそうに……アクア」
 アクアの火照った耳たぶを軽く噛む。
「ひゃんッ! く、くすぐったいわ……」
 とくん、といったアクアの小さな脈動が、唇を通して伝わる。
 皮膚に通う血の暖かさ、口に残る血の味…。
 まるで生き血を啜っているような、倒錯した想像が頭に浮かぶ。
 そのまま甘噛みを繰り返すと、アクアはビクビクと身を震わせた。
「…はぁん……ぃゃ…ハンス(仮名)……」
 歌姫の甘い声が、下脳をくすぐる。
 その声は激しく欲棒を疼かせ、股間をとても窮屈にさせる。
 ハンス(仮名)はもどかしくスボンを降ろすと、股間を束縛している貞操帯を取り去った。
 アクアは火照った頬の目の端で、それを捉えていた。
「…ハンス(仮名)……?」
 戸惑いの呟きは、更なる愛撫を求めている。
「…アクア……」
 脇から手を延ばし、とんがった乳首を、サディスティックにヨジり摘む。
「う……」
 乳首の痛みでアクアの呼吸は一瞬止まり、ついで安堵と快感の吐息を漏らした。
「……はぁ。
 わたし、なんかおかしい…。
 とっても痛いのに……ンっ……すごくドキドキしてるぅ…」
「ボクのせいだね…ごめんよ…」
 豊かな両の乳房を揉み上げると、アクアが心地よさげな吐息を漏らした。
 ついで乳首をキツく摘まみ、乳房が円錐に変形するまで引っ張る。
「はんッ!」
 吐息を呑み込み、アクアの瞼がギュッと閉じられた。
 そのまま火照った耳たぶを責め舐めると、アクアは上り詰めるような喘ぎを漏らす。
「あっ、あっ、あっ…」
 再び、両の乳房をいたわるように揉み上げる。
「ハァァ…」
 アクアは苦痛から解放され、安堵ともつかない溜め息を震わせた。

 切ない吐息、苦痛の喘ぎ、安堵の溜め息…。
 いたわりの愛撫、苦痛の愛撫…。
 アクアの身体は敏感に反応し、発する美声は肉棒の顎を撫でる。
 まるで女体という、精巧な楽器のようだ。
 ハンス(仮名)はアクアへの愛撫を繰り返し、美声を絞り出すことにしばし虜となった。
 荒い吐息のアクアが、ハンス(仮名)の手首を掴み止める。
「ハンス(仮名)は……なんでやさしく…してくれるの……?」
 アクアは澄んだ瞳を伏せ、か細く囁いた。
「ボクはやさしくなんかないよ。
 こうやって、アクアを苦しめているんだもん」
 アクアの体から染みだす、赤い媚薬に舌を這わせる。
「んくっ…そ、そんな……ハンス(仮名)は…わるくなんか…ない……。
 …王子さまは…こんなこと、し…してくれませんでした……」
 喘ぎ、喘ぎの息で、アクアがいう。
「……こんな、気持ちのいいこと…」
 アクアは身体をハンス(仮名)に向かい合わせ、とろんとした目で見つめた。
 ついでハンス(仮名)の頬を両手で包みこむと、紅色の舌を突き出し、鞭でできた傷に注意深くそれをつけた。
 ズキンとした痛みが、ハンス(仮名)の呼吸を止める。
 そして生暖かい舌が傷を辿ると、軽い痛みがゾクゾクっと背筋を震わせ、アクアの舌が離れると、ホッと溜め息が漏れるような安堵感が湧いた。
 なるほど…確かに、妙に気持ちが昂る…。
 ハンス(仮名)は震える吐息を漏らし、アクアは静かに瞳を閉じていた。
「首輪を……外して…」
 ガンスの贈り物と、捨てられてからも、大切に身につけていた革バンドの首輪。
 その意味も知らず、アクアの心を拘束していた、隷属の証。
「いいの…?」
 アクアがコクンと頷く。
 ハンス(仮名)は首輪の留め具を外しながら、ひどくドキドキとした。
 着衣をつけないアクアが、唯一の身につけているものだからだろうか…?
 まるで女の下着を外してる気分だ。
 アクアの首輪を取り去ると、ハンス(仮名)は現れた白く細い喉、美しい胸元に目を奪われた。
 そしてアクアから目を離さず、躊躇いもなく、首輪を海に放り投げる。
 首輪は静かな水音を立てて海に没し、その音を聞いたアクアは、蕾が開くようにゆっくりと瞼を開いた。

「…わたしの正銘は……紫陽(しよう)です」
「紫陽…?」
 アクアは微笑み、コクリと頷いた。
「うつろいやすい紫色の花。
 色や形がうつろいでも、それはあなたを楽しませるため。
 わたしの心は、あなたのためにあるの」
 アクアの澄んだ瞳が、囁く。
「王子さまのは、痛くてツライだけ…。
 でもあなたのは、……痛いけどやさしいの」
 アクアは、くすっと微笑った。
「変よね、わたし。
 …あなたに……とっても…痛くして欲しい…そんな風に思うの…」
 アクアの指先が、ハンス(仮名)の胸板を辿る。
 そして股間に辿り着くと、肉棒に細い指を絡め、ゆっくりと摩り出した。
 その強請るような手つきに、思わず溜め息が漏れ出る。
 とても処女とは思えないそれは、ガンスに仕込まれたものだろうか…?
 ムラムラとした欲望と嫉妬心を、ひどく掻き立てられる。
「ボクも変なんだ。
 アクアにやさしくしてあげたいのに、痛くしてあげたいんだ……」
 シャツを脱ぎながら、アクアの唇を求める。
 アクアも欲望を隠すことなく、ハンス(仮名)の唇を激しく求めた。
 ふたりは互いの唇を、甘噛みよりも強く噛み合い、滲み出る痛みと倒錯の快感を共有する。
 そうしてる間もアクアは肉棒を摩り続け、ハンス(仮名)もそれに応えてアクアの乳房をイジメ続けた。
「ハンス(仮名)…月光石は…?」
「うん…あるよ…」
 傍らのバッグに手を伸ばし、香炉と月光石を手触りで取り出す。
 一時もアクアへの愛撫を止めたくなかったが、まだりりんのように手慣れたことはできない。
 仕方なく唇を離すと、もどかしい気持ちで、りりんに教えてもらった通りに、香炉へ月光石をくべた。
 月光石がぼうっと光、辺りを月明かりほどに照らし。
 藍色の闇に、アクアの白い足が浮かび上がる。
「綺麗だね、アクアの足…」
 アクアは太股をぴったりとつけ、恥ずかしげに手で股間を隠していた。
「もっとよく見せてよ、アクア…」
 膝頭を撫でながらいうと、アクアは困ったように赤くなった。
「は、恥ずかしいわ…」
 裸の胸はそうでなくとも、下半身を見られるのはとても恥ずかしいらしい。
 奇妙な感性にクスリとすると、ハンス(仮名)はアクアに微笑んだ。
「それじゃ、海を見ているといいよ」
「海…?」
 アクアは星明りの海に目を向けると、しばし戸惑い、こちらに背中を向けた。
 そしてうつ伏せになると、丸い尻を高くあげた。
 それが恥ずかしい“おねだりポーズ”と、アクアは知っているのだろうか?
 アクアのズレた感性に、またクスリとした。
 藍色の闇に浮かぶ、満月のような白い尻。
 アクアの尻はプリンとまん丸で、大きいというより、肉付きがよかった。
 尻肉を揉み分け、窄まった菊門、その下の性器をじっくりと観察する。
 割れ目はすでにパックリと開き、太股に伝った愛液を月光石の灯が光らせていた。
「アクアのおまんこ、はしたないことになってるね」
 割れ目を指で開くも、陰になってよく見えない。
 月光石の香炉を引き寄せると、その光をテラテラ、紅色の秘肉が妖しく反射した。
 闇に照らされる割れ目と紅色の秘肉。
 その光景は、尻を向けたアクアのポーズと相まって、ひどく淫靡で、とても興奮を覚える。
「やっぱり、恥ずかしい…」
 アクアは海を見つめたまま、居心地わるげに身じろぎした。
「でも、興奮するでしょ?」
「……ええ…とっても、ドキドキしてる…んくっ!」
 中指を膣に指し入れると、ちゅぷっとその口は、愛液のヨダレを溢れさせて銜えこんだ。
 アクアの中はとても熱く、愛液が充満している。
 中指を出し入れすると、こぼれ落ちた滴が砂浜に点を作った。
「…はしたないよ…アクア…。
 お漏らししたみたいに、お汁が溢れてくるよ…」
「……そんな…ハンス(仮名)が…うんっ!」
 人指し指を加え、二本の指でアクアの膣内を弄る。
 引っ掻くように掻き回す、少し乱暴な弄り方ではあるが、アクアは心地よさげな吐息を漏らす。
 そして時折、指先が壁のようなものに触れると、かすかな呻きを漏らした。
「…いたい………でも、イヤじゃありません……」
「もっとシて欲しい…?」
「……」
 アクアは恥じ入っているのか、ただ吐息だけを漏らす。
「どうシて欲しいの? 紫陽…?」
 正銘を囁き、背中の傷を舐めると、彼女はビクンっと背をのけぞらせた。
「……シ、シて…おまんこの中、ぃ、イジくり回して…ハぅっ…」
 その求めに応じ、ハンス(仮名)は二本の指で膣内を弄り、愛液を掻きだした。

 アクアは出し入れを繰り返す度に、性器から愛液を溢れさせ、処女の壁を触れると、その度にビクンっと身体を震わせる。
 そして、イジわるく指を止めると、恥じ入りながら愛撫を強請った。
「…あ…気持ちイイ…もっと、シて…シてください…。
 …おまんこが…気持ちイイんですぅ…」
 しばらくすると、股の下の砂浜は、愛液を吸ってちょっとしたシミを作っていた。
「…ぉ…おねがいです…。
 う…疼くの……おまんこの奥が……じんじん…熱いの……」
 真っ赤になって恥じ入り、その尻をサカッた猫のように、はしたなく揺らす。
「シて欲しいの?」
 恥ずかしげに、アクアがうなずいた。
「…いいの? 痛いよ、きっと」
「痛くて……イイ……。
 …やさしく…いたくして……お願い…」
 赤くなった頬、潤んだ瞳を流し向けて、アクアは懇願した。
 ハンス(仮名)にはそんなアクアが、とても可愛く思えた。
「うん。ボクもしたい。アクア…」
 ハンス(仮名)が頷くと、アクアは丸く柔らかい尻をいっそう高くした。
 “鋼鉄の処女”が紅色の口から、意地汚い涎を漏らしている…。
 ハンス(仮名)の肉棒は、収まりどころを欲して、しばしそれを見つめていた。
 肉棒に手を添えて近づけると、暖かい恥肉が鬼頭にキスをした。
「は、ぅん……」
 漏れでた歌姫の溜め息に、ハンス(仮名)の下脳がくすぐられる。
 堪らず一気に差し入れると、グッと拒む抵抗感に出会った。
「イッ!」
 アクアの顔が処女の抵抗に歪み、ハンス(仮名)も感じたそれは、筆先よりも腰に響いた。
 “鋼鉄の処女”は今だ健在、肉眼で確認、といったところか…。
(ピアスのヤツ、人ごとだと思ってぇ…)
 “鋼鉄の処女”は魔力を使った、一種の封印。
 アクアはまだ、封印を解くほど、自分のことを欲していないのだろうか…?
 そう思うと、少し寂しい…。
 ふとアクアを見ると、不安げな瞳を向けていた。
 そしてそこから大粒の涙が、ポロリとこぼれた。
「大丈夫? アクア?」
 処女の痛みは自分以上だろう。
 怖じ気づいたとしても、仕方がない。
 しかし彼女の言葉は、逆のものだった。
「…いたいけど……。
 ハンス(仮名)が入ってくると…しあわせなの…」
 むくむくと熱く、固くなる思い。
「ボクも…いたいけど、気持ちいい…」
「ハンス(仮名)も?
 それじゃ、わたしたち、同じ気持ちなのね。
 ひとつの気持ちを、ふたりで感じてるのね…」
 アクアがそう呟くと、半ば入ったままの肉棒が、吸い込まれるような気がした。
 ハンス(仮名)は、アクアに覆い被さるようにして、両手を彼女の脇についた。
「ボクの腕を掴んで。
 痛かったら、ギュッと握っていいから」
「うん…」
 アクアは頷くと、片手をハンス(仮名)の腕に添えた。
「いくよ…」
「うん…」
 さきほどの抵抗を思うと、腰が引けるようにも感じたが、ハンス(仮名)は意を決して、ゆっくりと腰を動かした。
「う、……」
 鋼鉄の壁に当たると、アクアが腕を力いっぱい握る。
 そのまま我慢してアクアにのしかかるようにすると、プツっと突き破った感覚が鬼頭にした。
 勢い肉棒がアクアの奥に届き、頭が真っ白になるほどの強い快感に襲われた。
「きゃぅんッ!」
 アクアの悲鳴のような声を聞いたような気がした。
 ハンス(仮名)は腰の動きを止め、吐息をつくと、しばしアクアのぬくもりに浸った。
「……動いて…だいじょうぶ…だから…」
 絶え絶えの息から、アクアがいう。
「うん…」
 さきほどの強烈な快感はなんだったのだろう…。
 紋章を委譲される時のとはちがう、味わったことのない感覚だった。
 ハンス(仮名)はゆっくりと腰を動かしはじめ、すぐにソレがわかった。
 膣の奥にザラザラというか、そんな感じのトコがあり、それが鬼頭部にとても心地よい刺激をもたらすのだ。
 堪らずハンス(仮名)の腰が、早く、力強くなる。
「…アぅ、……んクぅ……」
 アクアが呻くような声を漏らし、強く腕を掴む。
「アクア…、いたい…?
 ご、ごめんよ……でも…。
 す、すごくイイんだ、アクアの……」
 ズブっ! じゅぶっ! ジュプ!!
 愛液を掻きだす水音が繰り返され、奥のザラザラを求めて、肉棒が膣内を行き交う。
「い、イイの…わたしも……。
 あなたがイイから…わたしも、イイの…」
 アクアの爪が腕に食い込む。
 その痛みは、ハンス(仮名)のものであり、同時にアクアのものでもあった。
「…あン……い、…いたい……く、くぅん……」
 腰の動きに合わせ、歌姫が可愛い声で啼き始める。
 その声は甘く、堪える痛みを、切なく欲しているかのようだ。
「イイの……い、イイの……。
 …奥に…おまんこの奥に、あ、あたって……ぃ、いたいけど…あン!」
 アクアの爪間から、ハンス(仮名)の血が滲む。
 それはアクアが感じている、肉棒の力強さ、快感の強さだ。
 ハンス(仮名)もまた、共有する痛みに興奮を感じ、息を荒らげて、傷ついた背中を舐める。
「…あン……ああン……い、い、……いン!」
 体中がとても熱かった。
 アクアの内から湧きだす熱、膣内に充満する愛液の熱で、行き交う肉棒から溶かされる気がする。
 もっと、もっと…、と愛液は湧き出し、ヌルヌルした膣壁とザラザラの奥をもとめ、突き動かされる衝動のままにひたすら腰を動かした。
 ゾワゾワした射精感を感じると、突然、それは解き放たれた。
「イ!」
 脈動を起こして熱い精液が放たれると、アクアの体が硬直し、背筋がピンと延ばされた。
 抽迭をやめた肉棒は、幾度も脈動を繰り返し、アクアの奥へと精液を放つ。
 そして背中の紋章が光り、ハンス(仮名)の背へ委譲されると、辺りは静かなさざ波と荒い吐息だけの空間になった。


■ハンス(仮名)とアクアは抱き合い、体温を確かめ合いながら、さざ波を聞いていた。

「ハンス(仮名)ッ!!」
 静寂を破って、ガンスの怒声が響いた。
 どこをどう走り回ったのであろうか…。
 ドロだらけ、すり傷だらけ。乱れた髪には、木の葉や小枝がささっていた。
「き、貴様、よ、よくも…」
 プルプル、怒り震えるガンスは、興奮しきって言葉がうまく出てこないようである。
「お、おまえもだ、アクアッ!!
 僕を好いたとかいいながら、な、なんだこれはッ?!」
 男の裏返った声というのは、なんとも見苦しいものだな…。
 などと、耳に指を突っ込んで、ハンス(仮名)は思った。
「王子さま、わたしはもう、痛いのはイヤです」
 燐とした声を発したのは、アクアであった。

「ハンス(仮名)さまは痛いけど、とてもやさしく、気持ちヨクしてくださいました。
 わたしはもう、ハンス(仮名)さまのモノ。
 ハンス(仮名)さまが、わたしの王子さまです」
 アクアの言葉に、ガンスは硬直した。
 言葉を捻り出そうと、口をパクパク、空いたり、閉じたり…。
 そして突然、大きな声で笑いだした。
「ハッハッハッハーッ!
 ハンス(仮名)、姫さまがこのことを知ったら、どう思うだろうな〜?
 愉快だな、ハンス(仮名)〜!!
 まあ、姫さまのことは、このガンスに任せてもらおうか。
 ハッハッハッハーッ!」
 一気にまくし立てると、白々しく笑いながら、ガンスは背を向けた。
「……コイツをなんとかしろ、ハンス(仮名)」
「ウウッ……」
 飛び猫が牙を突きたてたまま唸り、ガンスの背中にぶら下がっていた…。
 ハンス(仮名)は自分の背中に、戦慄を感じた。
「と、飛び猫、もういいんじゃない?」
 飛び猫・ニーヤがパッと離れ。
「サッサッと消えなさいよ!
 まだ噛みつかれたいの、この寝取られ男ッ!!」
 と、ガンスのケツを蹴り上げた。
「あうっ!」
 情けない声をあげると、堪らずガンスは走り出した。
「お、覚えてろよ〜」
 定番の台詞は忘れないものの、笑いながら去る余裕はないらしい。
 ガンスの姿が藍色の闇に消えると、ハンス(仮名)は腕の中のアクアを見た。
「いいの? アクア?」

「いいんです…わたしがいいのだから。
 ハンス(仮名)さまも、いいでしょ?」
 アクアは、はにかんで微笑み。
 デレっとするハンス(仮名)は、背中に殺気を感じた。
「いいわねぇ〜、ハンス(仮名)。
 モテモテじゃない〜♪」
 飛び猫が鞭を打ち鳴らし、ニヤッと笑うと、鋭い牙が妖しく光った。


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