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マーメイド03-4




【@右巻きソフトウエア】 「初・体験教室」 「初・体験倶楽部」 「怖くない怪談」 「ないしょのえろカタログ」

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今日こそ勝負ッ!


■ハンス(仮名)と飛び猫は、湖へ続く、川沿いの道を歩いていた。

「今日のピアスの料理、どんなかな?
 楽しみだね〜♪」
 人魚捜しにいそしみつつも、ハンス(仮名)の心と足は、はや夕食に向いているのである。
「あんたねぇ…。
 たまにはスフィアの料理も食べてあげなさいよ。
 嘆いてたわよ、スフィア」
「うっ。
 だ、だって、スフィアのは……破壊的というか、暴力的というか……」
「…まぁ、けっしておいしくはないわ……ね」
「でも、ホント、意外だよね〜」
「なにがよ?」
「ピアスってガサツで大雑把って感じなのに。
 料理がうまかったりして、すごく女の子っぽいんだもん」
 実際、アジトも粗末な小屋ではあったが、それでもなんとか飾りたてようと努力されているのである。
「口の周りを拭いてくれたりさ。
 こまめっていうか、気配りがあるっていうか〜。
 世話焼きなトコが、かわいいよねぇ〜」
 同意をもとめて笑みを向けると、飛び猫・ニーヤはツンとそっぽを向いた。
「フ、フンだ。
 姫さまにだって、料理ぐらいできるわよ」
「へ〜。どんな、どんな?」
 ワクワク、キラキラな目をハンス(仮名)が向ける。
「ナチュラル風海草サラダ…」
 人、それを“単なるワカメ”という…。
「あはっ! ヘルシーでいいねっ!」
「ば、莫迦にしてんの?! アンタ!!」
「な、なんだよ〜。ニーヤがいったんじゃないか〜」
 などと。
 相手が猫でなければ、痴話ゲンカなことをしていると…。
「勝負よ、ハンス(仮名)ッ!」

 崖の上からピアスが現れたのである。
 びしッ! と高圧的に指さされ、ハンス(仮名)とニーヤはあんぐりと口を開けてしまった。
「……な、なにやってるの? そこで?」
「……」
 どうやら、深い考えもなしに登ったようである。
「き、気分よ。
 そう、気分的な問題ね!
 この方が、挑戦的でしょ?」
「まぁ、おたまで指されるよりはマシね…」
 糸のような目には、少々の哀れみさえあった。
「う、うるさいわね…」
 恥じ入るところをみると、ピアスにも自覚はあったようである。
「危ないよ〜、ピアス〜〜!!
 そんな高いところ、コワくないの〜〜?!」
 頬に手を当てハンス(仮名)が叫ぶと、繰り返す木霊が高さを再確認させた。
「大した高さじゃないわ!
 ち、ちょっと、膝が震えるくらいのものよ」
 それを“けっこうな高さ”というのではあるまいか…?
「と、とにかく。
 勝負よ、ハンス(仮名)!
 アジトで待ってるわ! 覚悟なさいっ!!」
「いわれなくても行くよ〜。
 ごはん、食べに〜♪」
「だ・か・ら!
 そうじゃないでしょッ!
 勝負しに来るのッ!」
「ごはんは〜?」
「……つ、作っておくわよ」
「んじゃ、行く〜♪」
 二つ返事をすると、さすがにニーヤは口を挟んだ。
「あのね。
 状況わかってるの、アンタ?」
 勝負というからには、紋章を賭けてえっちするということである。
 しかも自信満々なピアスからすると…。
「ピアスが覚えてくれたんでしょ、ボクの名前。
 そうでしょ〜? ピアス〜?!」
「まっかせなさいッ!」
 ピアスはプルルンと、豊かすぎる胸を揺らした。
「ほらね。
 たしか、飛び猫はまだだったよね…?」
「よけいなことはいわんでよろしいッ!」
 ぽかっと飛び猫が、ハンス(仮名)の頭を叩いた。
「ふふん!
 どうやら知能指数は、胸の大きさに比例するみたいね」
 豊かすぎる胸が自慢げに弾んだ。
「そ、そんなことあるもんですか!
 あたしは覚える気がないだけよッ!」
「やあねぇ〜、負け惜しみって。
 ま、それも仕方がないわね。
 勝てる要素なんて、ぜ〜んぜん、ないんですもの。
 ホ〜〜〜ホッホッホ〜ッ!」
 豊かすぎる胸が、せせら笑って揺れまくりである。
「な、なんですってぇ〜ッ!
 大きければいいってもんじゃないのよ、ホルスタイン女ッ!」
「ホ、ホルスタイン…?
 いってくれるじゃないの、乳首オバケ。
 数ありゃ、いいってもんじゃないのよ!」
「乳首オバケェ?!
 黙ってきいてれば、いい気になってぇ〜!」
「ほ〜、ほ〜。
 さっきからキーキー、お猿みたいにわめいてるの、誰かしら?」
 崖の上と崖の下、怒鳴り合う罵声が、みっともない木霊を作って、辺りに轟く。
 取り残されのハンス(仮名)は、傍にいるとひどく恥ずかしい…。
「あの、ちょっと、二人とも……」
「アンタは黙ってなさいッ!」「あんたは黙ってなさいッ!」
 両人に怒鳴られ、ハンス(仮名)はシュンと小さくなった。
「……はい」
「女の胸は、感度よ!
 感度がよければいいのよ!」
「みなさん、そうおっしゃるわね。
 ことに、胸の薄いネンネさんは」
「ムッキーッ!! この淫乱女ッ!」
「マセガキッ!」
「デカ尻ッ!」
「毛むくじゃらッ!」
「乳オバケっ!」
「乳首妖怪っ!!」
 ヒステリーを起こし、罵りあう両人。
 お陰で低レベルな罵詈雑言は、辺り一帯の梢を揺らし、怯えた小鳥さんたちがこぞって逃げ出す始末。
 なすすべなくハンス(仮名)は、お茶をズズッとすすって待った…。
「ぜいぜい…」
「はあはあ…」
 小一時間ほどすると、両人は荒い息で睨み合うばかりとなり…。
「もう、怒ったッ! ハンス(仮名)ッ!
 ヤっちゃいなさいッ!」
「ほへっ?」
「のぞむところよッ!」
「え、いや、でも……いいの?
 ボク、ピアスの正銘、知ってるんだよ?」
 ピアスの目が点になった。
「……うそ」
「紅玉でしょ?」
「どこで聞いたのよ…。
 わかった、りりんでしょッ!」
「違う、違うよ、りりんじゃないよ!
 ほんと、ウソじゃないよッ!」
「……そう、よかった。
 りりんじゃないのね?」
「うん」
「じゃ、盗み聞きしたんだ」
「うん。
 ……て、違う、違うッ!」
「卑怯者ッ!
 盗み聞きなんて、男のすることじゃないわよ!」
「ぐ、偶然なんだよ」
「うるさいわねッ!
 言い訳なんて、男らしくないわよッ!」
 先程までの自信満々はどこへやら。
 ピアスは、チッとばかりに爪を噛んだ。
「とにかく。
 これで勝負は互角ね。
 待ってるわよ、ハンス(仮名)ッ!」
 そういってピアスは身を翻した。
「ま、待って!
 献立を教えてよッ!!」
「……“うつぼ=かずら”のムニエル」
「食べにいくからね〜♪」
 言い残して消えるピアスを、ハンス(仮名)はハンカチを振って見送った。
「莫迦ね。
 なんでバラしちゃうのよ」
 ニーヤは呆れた吐息をついた。
「だって……。
 フェアじゃないよ、そんなの」
「ほんっとに莫迦。
 男と女に、フェアも謝恩セールもないのよ?」
 ニーヤは、ヤレヤレ…と吐息をついた。
「ま、勢いでいっちゃった手前なんだけど。
 ピアスのトコへ、行っちゃダメよ」
「なんで?
 ニーヤも食べたことないでしょ? ムニエル…」
「おいしいらしいわね…。
 て、そうじゃなくて。
 姫さまとの約束、忘れたの?
 “姫さまだけを愛します”っていったの誰よ?!」
「紋章集めろっていったのも、姫さまだよ」
 ニーヤが、ぐっとニラむ。
「わかってるよ。
 ムニエル食べて、なにもせずに帰ればいいんでしょ?」
「……信じてあげるわ」
「え? なんていったの?
 小声で聞こえなかった」
 ハンス(仮名)は耳に手をあてた。
「食い意地はったスケベッ! て、いったのよッ!」

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