歌姫アクアとサド王子
■りりんに体を洗われ、ハンス(仮名)は泡だらけとなっていた。
「それはアクアね」
入り江で出会った歌姫の話しをすると、りりんはやさしく股間を洗い、教えてくれた。
「アクア?」
「どこかの王子と結婚したらしいけど……すぐに捨てられちゃったの。
それ以来、あの入り江にいることが多くなったみたいね。
臆病な娘だから、人と話しをするのはとても珍しいわ」
「鞭で何回も打たれたみたいな傷が背中にあったよ。
とっても痛々しかった…。
それと、革ベルトの首輪。
まるでペットか家畜がするみたいなヤツ。
買われた人魚は、あんなのつけるのが決まりなの…?」
「その王子さまがね、“そういうシュミ”の人だったのよ!」
「いたい、いたいよ、りりん…」
「うふふ。ごめんなさい」
りりんは笑ってゴマかした。
「アクアは紋章付きということもあって、懸賞もかかってるんだけどね」
「懸賞? 珍しいね」
「ショーケースの中の宝石なのよ。
ギルドもどう手をつけたものか…持てあましてるのね」
たしかにあの場所は、少々、厄介な処である。
遠浅かと思えば急に深くなるし、寒流が流れ込むお陰で、潮の流れも読みにくい。
海に潜られればすぐに見失い、たやすく逃げられてしまう。
捕まえるのはかなり困難であろう。
「ハンス(仮名)のお目当てはどっちなの?
紋章? それともアクア?」
「両方。
いたたッ! いたいよ、りりん」
「うふふっ! ごめんなさい。でも…。
気持ちよかったでしょ?」
「…うん、たまにやって」
「でも……あの紋章は、誰にも奪えないわよ」
股間から目を離さず、りりんは呟いた。
「なんで?」
「そのときが来ればわかるわ」
「いたた……」
「うふふッ! 無茶しちゃ、ダメよ…?」
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