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マーメイド03-1int




【@右巻きソフトウエア】 「初・体験教室」 「初・体験倶楽部」 「怖くない怪談」 「ないしょのえろカタログ」

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インターミッション(森の人魚さん)


■ハンス(仮名)とニーヤは、山道を歩いていた。

 “湖の人魚”のウワサを耳にし、ハンス(仮名)が行ってみようといいだしたのである。
 聞けば、その身体に紋章を目にした者もいるという。
 ならばと渋々、同行する飛び猫・ニーヤであるが…。
「人魚は海の者よ。
 こんな山の中にいるワケないじゃない!」
 半信半疑どころか、真っ向否定である。
「でも、山クジラだっていることだし」
「い・な・い!」
「人魚屋のおやじさんの情報だよ?」
「いないってば」
「……いた」
「いないわ…よ…」
 山道のド真ん中に、人魚がいた…。
 どうしたものか、水場も遠い坂道に、とれたてピチピチ、ジタバタとしていたのである。
 ハンス(仮名)はニーヤと目を見合せ、その足を早めた。
 その人魚は、かなりの上玉に間違いがない。
 木漏れ日に光る緋色の鱗、シナを作ったその背中は美しく、続く腰周りは大きく、なんとも色っぽい。
 うまく捕まえ(ハントでき)れば、かなりの高額になるハズである。
「ねぇ、ねぇ、お嬢さん? ギルドで売られてみない?
 いまならもれなく、3パーセント還元だよ〜」
 声をかけると人魚は、ビクンっと飛び上がった。
「あんた、いつから訪問販売員になったのよ…」
 そういって振り向いた顔は、よくよく縁深いものであった。

「ピアス?!」
 その顔はたしかに間違いない。
 しかしいつもと違って、その下半身は人魚そのもの。
「ピアスって、人魚だったの?」
「そうよ。わるい?」
 ピアスはいかにも不機嫌そうである。
「じゃあさ、ギルドで売られてみようよ〜。
 ピアスなら、すご〜い値で買ってくれるよ?」
「あんた、ケンカ売ってるの?
 あたしは、ギルドに反抗してる者よ?」
「ああ。そういえばそうだったね。
 生花農業組合の…」
「人魚解放同盟っ!」
 そう怒鳴ると、ピアスはニーヤをキッと睨んだ。
「ちょっと、そこの化け猫!
 あんた、この色ボケにどんな教育してんのよ?!」
 噛みつられた飛び猫は、これまた噛みつかんばかり。
「人聞きのわるいこといわないでっ!
 あたしがいつから、下半身莫迦の調教師になったのよっ!
 “陸に上がった人魚”っ!」
「好きでこうなったワケじゃないわよっ!!
 タンポポ猫っ!」
「まぁ、まぁ、まぁ…」
 泥試合を感じて、ハンス(仮名)が割って入る。
「あ。そうだ。
 コレ、ピアスのだよね?」
 娼館で拾ったイヤリングを差し出すと、ピアスはひったくるようにそれを取った。
「ど、どこで見つけたの?!」
「大事な物だったの?」
 ハンス(仮名)はピアスの問いをさりげなくかわした。
 娼館でピアスに会ったことは、飛び猫には内緒にしていたからである。
「ええ。すごく大切なものよ…」
 素直に頷くと、ピアスはイヤリングを胸に抱いた。
「これには月光石が仕込まれてるの。
 特別製だから、易々、手に入る代物じゃないわ」
 なるほど。
 そのお陰で、いつも人の姿でいられるというワケである。
「で。なくしたお陰でこの有り様。
 片方だけだと、ふいに効果が途切れちゃうのよ。
 気をつけてはいたんだけどね…」
 ピアスはヤレヤレ…といった感じで、溜め息をついた。
「ピアスって、意外にドジなんだね」
「“意外に”は余計よ、ハンス(仮名)」
 飛び猫がイジわるくたしなめるが、ピアスはイヤリングをつけるのに集中して、耳に入らなかったらしい。
 つけ終わるとピアスは、耳のイヤリングを自慢げに見せびらかした。
「どう?」
「うん。よく似合うよ」
 女性らしい、うなじの線がよく映える。
 見とれるように見ていると、目にボヤけたような感覚があって、いつのまにか、ピアスの足ヒレはムチッとした太股の脚に変わっていた。
「い、一応、礼をいっておくわ。
 あ、ありがとう」
 スッと立ち上がると、ピアスは土汚れをはらい、目を合わさず礼をいった。
 くびれた腰から盛り上がる尻も、胸に負けじと肉付きが良い。
 両の脚はムッチリとした曲線を描き、とてもソソられる。
「イヤリングを拾ったのも、ココで見つけられたのも、あんたでよかったわ。
 他のハンターだったら、どうなってたやら…」

 鼻の下を延ばす視線に気づき、途端にピアスは真っ赤になった。
「きゃ〜〜〜〜〜〜っ!!」
 まるで少女のような、かわいらしい悲鳴が木霊する。
「この莫迦っ!」
「あぐぅっ!」
 ガツンと、ハンス(仮名)の後頭部を飛び猫が叩き、マントを剥ぎ取った。
「前言撤回っ! あんたなんか死んじゃえっ!
 このケダモノっ!」
 前を隠して拳を振り上げるピアスに、飛び猫がマントを差し出す。
「コレで隠して」
「あ、ありがとう。助かるわ」
 これが女の連帯というものか。
 こういう時だけは、犬猿の仲も角を引っ込めるらしい。
「ホント、オトコってケダモノは、どうしょうもないわね」
「まったくだわ。気を許すと、すぐイヤらしい目で見るんだから」
 それがオトコの習性なのだから、仕方がないのである。
「ヒドイよ…もう…」
 ハンス(仮名)は泥に顔を突っ込み、ミジメな気持ちで涙を流していた。
 大切なイヤリングを届け、お礼のキスぐらいあってもよかろうに…。
 不可抗力で、殴られるやら、罵倒されるやら、さんざん…。
 それでも何もいえないのが、オトコの哀しい宿命であった。

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