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マーメイド00-3




【@右巻きソフトウエア】 「初・体験教室」 「初・体験倶楽部」 「怖くない怪談」 「ないしょのえろカタログ」

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再会


■「おい、起きろッ!」

 再びの激痛で、ハンス(仮名)は起こされた。
 ひんやりの空気、冷たい石の床、思わず息を止める臭い匂い…。
 どうやら、ココは地下牢らしい。
「むにゃ。おかわり……」
 …なにをいってるんだか。
 まぁ、ハンス(仮名)にとっては、気絶したままの方が天国にちがいない。
 これから行われるのは、厳しい取り調べと拷問なのだから。
「…それでどこの手の者か? ふむ」
 扉の軋む音と共に、なにやら偉そうな男の声がした。
 キビキビした足音と的確な指示。
 そこからすると、かなり有能な男のようである。
 察するところ、ギルドのお偉いさんであろう。
 木戸が開いて、そのお偉いさんが入ってきた。
 背が低く、小太りといえなくもない男だった。
 暗い照明の中、お偉いさんはハンス(仮名)を眇め見る。
 そしてギョッとすると、慌ててマントで顔を隠した。
「ティーゲル!」
 ハンス(仮名)が驚きの声をあげた。
 驚くのも無理はない。
 ギルドのお偉いさんとおぼしきその男。
 ハンス(仮名)が王の孫と呼ばれていたころ、いろいろ世話を妬いてくれた軍団長と、瓜二つだったのである。
 いや、そのころから年輪を経た姿からすると、本人に間違いはないであろう。
 しかも祖父と共に、戦死したと伝えられていた男なのだから。
 慌てて顔を隠したお偉いさんは、まるでイタズラ小僧が隠れたカーテンからするように、ゆっくりマントから顔を覗かせた。
「…ハンス…(仮名)…さま…」

■一転して、なにやら厳粛で豪奢な部屋に通された。

 窓はなく、円卓ひとつ。
 そこは王家の者が、会議や質疑をする部屋に似ていた。
 ハンス(仮名)には懐かしくも思える部屋には、ひとりの初老が待っていた。
 白髪に白い髭。不測に備える、黒い眼帯。
 その猛将とも見える、厳めしい偏屈な顔つき…。
 足があるなら、ハンス(仮名)の祖父に間違いない。
「爺ちゃん、生きていたんだねぇ〜」
 戦死したと聞いていた祖父。
 それが生きていて、こんなところでめぐり合えるとは…。
 基督様も涙を流す、感動の対面である。
 諸手を拡げて駆け寄る、ハンス(仮名)。
 そんなハンス(仮名)に爺さんも応え…。
「この莫迦モンがっ!!」
 ゴツンと、いきなりゲンコツを喰らわせた。
「あぐぅっ!」
「とうとう、ココまで嗅ぎつけてきおったかっ!」
「いきなりイタイなぁ…もう…」
「大方おまえのことじゃから、かわいいメイドでも買いに来たんじゃろ?
 人魚のひとりでももらいにきたのじゃろう?!
 そうじゃろ?! ちがうか!!」
「思わないよ、そんなこと…」
 ハンス(仮名)は殴られた後頭部をスリスリ。
「でも、くれるんなら貰っておくよ」
「やらんっ!」
「どうせいっぱいいるんでしょ? ね? ね?」
 ハンス(仮名)は爺さんの袖をひっぱりひっぱり、綿あめをねだる孫のごとく。
「あのね、ボク、かわいいメイドさんがいいなぁ〜。
 競売で残ってた娘。
 ホラ、メガネが似合いそうで、薄幸な感じの〜」
 今度は指を顎に、クネクネ、気色のわるいオネダリポーズ。
「あやつはあのあと、すぐに売れたわい」
「じゃ、別の娘でもいいや。
 かわいいお孫さんのお願いだよ〜?
 一人ぐらい、いいじゃん〜」
「おまえのようなスケコマシに、やる人魚はおらんっ!!」
「ちぇっ! ケチ…」
「ケチではないわっ!」
 爺さんは人指し指を、ハンス(仮名)の額にグリグリ押しつけた。
「おまえのウワサは、遠く離れたこの街にまで聞こえてきておるぞ!」
「へぇ〜。いいウワサ?」
「200人の妻と100人の妾、300人からの子供!
 あげくに国の財政食い潰して、ほっぽり出された前代未聞の色ボケ放蕩王子となっ!」
「あはは。さすがにウワサだね」
 ハンス(仮名)はわるびれもせずにニコニコ。
「元々、財政はわるかったから、隣国に併合してもらっただけだよ。
 それにほっぽり出されたんじゃなくて、隣国の公務員試験を受けなかっただけだし。
 あと、正確には231人の妃と108人の寵姫、304人の子供だね。
 あ。この前の春に三人ほど産まれてるハズだから、307人の子供だったかな…?」
「なおわるいわっ!!」
 ゴツンっ!
「あぐぅっ…」
「併合してもらっただけ〜?
 先祖伝来の地を売り渡して、いうことはそれだけか!!」
「中継ぎがよくて、予想の三倍で売れたよ〜。
 国のみんなも喜んでた〜」
「財政わるいのに、嫁に妾〜?
 それも200人! 合わせて300人?!」
「手をだしちゃダメだよ?
 爺ちゃんはお姑さんなんだからね」
「あげくに、このワシに307人の曾孫がおるじゃと?!」
「みんな、爺ちゃんの曾孫さんだよ?
 順番にだっこして、かわいがってあげてね?!」
「心臓マヒでワシを殺す気か?!」
 ガゴツンッ!!!
「あぐぅっ…」
 爺さんは真っ赤な顔で、ゼイゼイ、ハァハァ。
 壁の紐を引くと、ティーゲルが水の入ったコップを持って現れた。
 どうやら紐は外に通じているようで、紐によって待機している者が、指示を実行するらしい。
 ティーゲルはコップを円卓に置くと、うやうやしく退出した。
「イタイなぁ…もう…。
 そーゆー、爺ちゃんこそ、なにしてたのさ」
「ワシは見てのとおり、ギルドの長じゃ」
 爺さんはカラになったコップを、トンと卓に置いた。
「おまえも知ってのとおり、人魚は莫大な金になるからの。
 ココで身を潜め、故国再興の資金を集めておったのじゃ」
 なるほど。
 道理ですんなり、館へ潜入できたワケである。
 おそらく抜け穴は、この爺さんが作らせたものであろう。
 そういったものは、制作者のクセが滲み出るもの。
 孫のハンス(仮名)にとっては、正に勝手知ったる自分の家だったのである。
 もちろん、先客がいたお陰もあるだろうが。
 しかし…。
「ホントかなぁ…」
「ホントもなにも、おまえが食い潰した国じゃろうが〜」
 グリグリ、今度は梅干し攻撃。
「イタイ、イタイ〜!
 わるかったよぉ〜、許して、許して〜」
「いんや、許さんっ!
 たった一人の祖父に、疑いの目を向ける愚か者はこうじゃ!
 こうじゃ!!」
「ヒィ〜〜! やめて、やめてぇ〜」
 こめかみの激痛に、ハンス(仮名)は涙が滲み出た。
 地下牢から抜け出せたというのに…。
 これでは地下牢の拷問となんら変わりがない。
 延々、爺さんはハンス(仮名)を痛めつけると、真っ赤な顔で、ゼイゼイ、ハァハァ。
 紐を引くと、ティーゲルが水の入ったジョッキを持って現れた。
 それをグビグビっと一気に飲み干し、爺さんはほぅっと息をついた。
「時に、ドンスはどうしてる?」
 ドンスとは、ハンス(仮名)の父親。
 爺さんの息子、元・国王である。
「地方荘園の雇われ領主…」
 ハンス(仮名)はズキズキするこめかみを摩りながら、どの紐なら軟膏を持ってきてくれるだろうかと思った。
「国王の身分はなくなったけど、お陰で身が軽くなったって感じ。
 母さまとのんびり余生を過ごすって」
「そうか…。
 あやつは子供の頃から、土いじりの好きな、気のいい農夫のようなヤツじゃった…」
 いつもニコニコ。
 人が良すぎて、ダマされることも多かった。
「国を動かす器ではなかったの。
 地方領主か…。あながち向いておるのかもしれん…」
「うん。治水工事に土壌改良。
 苦労はしたけど、どれもうまくいって豊作だって。
 農夫たちにも慕われてるみたいだよ」
「そうか、そうか…」
 厳めしい偏屈といえども、さすがに人の親。
 爺さんは我が事のように目を細めた。
「あ〜。時にハンス(仮名)よ?」
 気色わるい猫撫で声に、ハンス(仮名)は背筋がゾワゾワした。
「な、なに?」
「故国再興のために、力を貸さんか? うん?
 おまえもまた、王子の身分に戻りたいじゃろ? うん?」
 先程と打って変わっての馴れ馴れしさ。
 ハンス(仮名)に肩まで組んできた。
「故国再興って…。
 なにすんの…?」
「知れたこと。人魚狩りの“狩人”よ。
 人魚を狩り集めて、故国再興資金を貯めるんじゃ」
 なるほど。
 故国再興というからには、莫大な資金が必要になる。
 しかし競売会場の様子からすれば、それも夢ではなかろう。
 加えて、ギルドなら諸侯とのコネも作れる。
「それはいいけど…。
 ボクになんのメリットがあるの?」
 爺さんは目をパチクリ。
「王子に戻れるぞ?」
「ボク、けっこう、いまの暮らしが気に入ってるんだ。
 お金に困って、お腹も空くけど…。
 気楽にブラついて、いろんなものを見られるからね!」
 爺さんは大きな呆れ声をあげた。
「な〜んじゃ、若いのに欲のない…」
 さっきまで200人の妻で痛めつけてたのは、ドコのダレであろうか…。
「それなら…うーむ…そうじゃなぁ…うーむ…。
 …ヨシ!」
 爺さんはひとしきり逡巡すると、パシンと膝を打った。
「人魚姫との婚約ではどうじゃ?」
 これにはハンス(仮名)も、目をパチクリ。
「婚約って…結婚?! 人魚姫と?!」
「他になにがあるというんじゃ?」
 今度は爺さんが目をパチクリ。
「おまえも知ってのとおり、結婚はええぞ〜。
 毎日、毎日、朝、昼、晩と、えっちし放題!
 あ〜んなことも、こ〜んなムリなことも、甘〜い囁きでアハン、うふんっ!」
 爺さんは気色のわるく、クネクネ身悶える。
 しかし、ハンス(仮名)は気にならないらしい。
「アハァ〜…いいねぇ…。
 裸エプロンもいいねぇ…メイドさんもいいねぇ…。
 体操着も、スク水もいいよぉ〜。
 みんな、みんなかわいいよぉ〜」
 早くもハンス(仮名)の桃色脳内では、裸エプロンの人魚姫や、メイドさんの人魚姫が、お色気ムンムン、あられもないポーズで誘っていた。
「人魚姫のお嫁さんじゃぞ〜。
 クゥ〜! この三国一のシアワセ者めぇ〜!
 馬に蹴られて、豆腐屋の角にタマタマぶつけろ〜」
「イヤぁ〜、そんなぁ〜、デへへぇ〜〜」
 孫と祖父は肩を抱き合い、ふたりでクネクネ…。
 まったく目にしたくない光景である。
「どうじゃ?」
「うん。やるぅ〜♪」
 ハンス(仮名)の周りはなにやらピンク色の世界で、シャボン玉のようなものまで漂っていた。
「ヨシ! 話しは決まりじゃな♪」
 爺さんが紐を引くと、衛兵たちがズカズカ入ってきた。
「ちょっ、な、なに?」
 衛兵たちは問答無用でハンス(仮名)の腕と脚を取り、なにやら奇妙な器具を下半身に…。
 ガチャンッ!!
「なにコレ…?」
「貞操帯じゃ」
「ていそうたい〜?!」
 貞操帯とは、えっちできないよう、股間につけるもののことである。
 通常は女性がするものであるが、強姦魔などの罪人につけられることもあるらしい。
「おまえは触っただけで、処女まで妊娠させるらしいからの!
 捕まえた端からキズモノにされてはかなわん」
 基督狂徒が聞いたら、顔を真っ赤にしそうないわれようである。
「ヒドイよぉ〜! とってよぉ〜!!」
 外そうと試みても、鍵がついてて外せない。
「だまらっしゃい!
 ココで300人も曾孫を作られてはたまったモンではないわっ!!」
「残してきた子を合わせると、607人か…。
 ハンス村(仮名)が作れるね♪」
「うつけ。
 そうさせないための、コレじゃろが」
 貞操帯を指差されて、ハンス(仮名)はこの世の終わりみたいな顔になった。
 それを見て、爺さんはニンマリ。
「外して貰いたかったら、早いトコ、再興資金を貯めるんじゃな〜」
 貞操帯の鍵をチラつかせて見せた。
「あぅ…。トイレはどうするのさぁ…」
「なんとか考えろ。
 そのくらいのスキマはあるじゃろ」
 “あるじゃろ”とは、また無責任な言い草である…。
「お風呂は〜?
 これじゃ洗えないよ、不衛生だよ〜。
 大事なムスコさんが腐って落ちちゃうよぅ〜」
「それなら、りりんに洗ってもらえ」
「りりん?」
「娼館におる。
 おまえの一切の面倒は、りりんに任せることにした。
 なにかあったら、りりんに相談せい」
 娼館の“りりん”…。
 察するところ、娼館の経営者であろう。
 大抵、業突張りのヤリ手ババァと相場が決まっているのだが。
(お色気ムンムン、おっぱいの大っきなお姉さんだと、いいなぁ…)
 などと、ハンス(仮名)はシアワセ回路を全開させていた。
 まったく、前向きなオトコの子である。
「ちょっと待って」
 ひとまず話の決まったそこに、翼のある猫がひょっこり現れた。
「姫さまの意向はまったく無視?
 それってヒドすぎない?」
 どこに隠れていたのか。
 いや、始めからココにいたというような、堂々とした態度である。
 爺さんは猫の不躾を怒りもせず、顎に手を添えた。
「ふむ。それもそうじゃな」
「それもそうじゃなって…、爺ちゃ〜ん」
「ハンス(仮名)。
 人魚の売買契約はな、人魚自身の承諾がなければ、成立せんのじゃ」
 肩を叩かれたハンス(仮名)は、目をパチクリ。
 そんなのは初耳である。
「まぁ、そういうことじゃから。
 おまえ、婚約の話を姫さまに取りつけてこい」
「え〜! それって、話がちがうじゃない〜!!」
「やかましい。
 そいうことは、おまえの得意分野じゃろ。
 ワシは忙しいんじゃ、ホレ、さっさと去ね。シッシッ!」
 つまり婚約話はナシ。
 貞操帯を外したければ、人魚を捕まえて、金を稼げ。
 それだけの話になってしまったのである。
 つまりは、貞操帯をつけれ損。
「底意地わるいのは変わらないなぁ…もう…」
 どうやら、うまくハメられたらしい…。
 ハンス(仮名)は大きな溜め息をついた。

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