!!!はじめてのコスプレ  放課後の体育館は、女子のバレー部が練習をしてた。  なんだか、入りにくい。 「バレー部がいるよ?」 「気にしな〜い♪ 気にしない♪」  さやちゃんは事も無げ。鼻唄まじりに体育館へ入る。 「体験教室でも、倶楽部でも、みんなの前でシてるじゃない」 「そ、そりゃ、そうだけど…」  他のみんなもえっちしてるんだもん。だから恥ずかしくないけど…。 「ていうか、みんなの前でえっちするの?」 「シないわよ。露出狂のヘンタイじゃあるまいし。  スルのは舞台地下で、でしょ?」  まぁ、そうだけど…。 //  ボクは気がススまないながらも、部室へ向かうさやちゃんの後を追った。  ボクは気がススまないながらも、スキップするようなさやちゃんの後を追った。 //-- // {{ref_image BG26a_80.jpg,bgPic}} //--  七夕が過ぎた昼休み。  ボクはひとりだけの教室で、まだ給食を食べてた。  うん、そうだね。いつもの通り。  ボク、食べるの遅いんだ。別にキライな物があるわけじゃないんだけどね。なぜかみんなより遅くて、放課後まで残されちゃうこともある。ひとりぼっちで給食を食べるのも慣れっこ。  でもその日は、教室にさやちゃんが入ってきたんだ。 「ハジメ、まだ食べ終わってない…」  うん、珍しいね。さやちゃんが昼休みに訪ねてくるなんて。いつもは隣のみんなとドッジボールしてるのにね。 「仕方ない。  手伝ってあげるか…」  さやちゃんはボクの前に座って、大げさなため息をついた。 「あ、ボクのプリン…」  さやちゃんはプリンのカップを取ると、ずるずるぅ〜と、ひと飲みするみたいに食べちゃった。 「ん〜。おいしい〜♪」  ご満悦の笑みに、ボクは恨めしくスプーンを銜えた。 「あう…。ヒドイよぅ…楽しみにしてたのにぃ…」 「そうなの?  アンタがプリン好きだなんて、大発見だわ!」  ウソくさいなぁ、もう…。 「プリンがキライな子なんていないよぅ…」  家に帰れば食べられるけど、給食のプリンはそういう既製品とはちょっとちがう。  特別の味なんだもの。楽しみじゃない子なんていないよぅ…。 「それもそうね」  さやちゃんはワザとらしく眉をあげると、隠し持っていたものを出した。 // {{ref_image 10-01saya.jpg,evPic02}} //-- 「はい。お・詫・び」  それは特大カップのプリンだった。  さやちゃんのお手製かな…?  売ってるようなやつとカップがちがうし、冷蔵庫から出してきたばっかりみたいにひんやり。 「い、いいの?」 「うん! 食べてみて」  さやちゃんのお手製なんてはじめて!  うん。そうだね。  好きな子の手料理なんて、とってもうれしくなっちゃうよね?  スプーンも震えちゃうよ!  ボクはドキドキしながら、ひとすくい。  どんな味だって、喜んで褒めてあげるつもり。  でも出てきた言葉は…。 「う゛〜…ヘンな味ぃ〜〜」  ボクの渋い顔を見て、さやちゃんはケラケラ笑ってた。 「ゆ〜り〜印のプリンだもん〜」  なんだ…さやちゃんのお手製じゃないのか…。  落胆の反面、なぜかスプーンが進んじゃう…。  うん。ゆり先生の料理っていつもそうなんだよね。  後を引くっていうか、ついつい食べたくなって、口に運んじゃう…。  そしたら、頬杖ついてるさやちゃんが、いきなりいってきたんた。 //{{ref_image 10-01saya.jpg,evPic02}} //-- 「ねぇ、えっちしようよ」 「ブッ!」  吹き出したボクに、さやちゃんは顔をしかめた。 「汚いなぁ…もう…」 「だ、だ、だっていきなりだし! 誰か来ちゃうよ!」 「放課後よ。放課後。  決まってるでしょ?」  それならそうといってくれればいいのに…。 //  ボクは胸を叩きながら、牛乳を飲んだ。  ボクは牛乳を飲んで、ホッとひと息。 //-- 「でも、今日は倶楽部ないよ?」 //  “ホテル”がなくなってから、そこらへん不便だよね。 //-- 「大丈夫。ゆり先生に許可もらってるから」  ニッコリいうと、さやちゃんは手の平を開いた。 「スプーンかして。食べさせてあげる」 「い、いいよ」  誰もいないとはいえ、恥ずかしいもの。  でも、さやちゃんはおかまいなし。  ボクからスプーンを奪って…。 「ホラ、あ〜〜ん♪」  って、ひとすくいしたプリンを出される。  仕方なし、ていうか気恥ずかしく思いながら、ボクはさやちゃんのスプーンをパクッと銜えた。 「おいしい?」 「う゛〜。やっぱり、ヘンな味〜〜」  愛がないよ、愛が。  さやちゃんのお手製なら、きっとどんな味でもおいしいのに…。  でも、さやちゃんは上機嫌でニコニコ。  うん。ヘンだよね、女の子って。  男子を病人だか、子供あつかいして喜ばぶんだもの。  思いながら、運ばれるプリンを口にして、ボクはフッと思いあたったんだ。  そういえば。さやちゃんとはしばらくシてなかったっけ…。 「うん! えっちしよう!」  おちんぽがピョコンしながらいうと、さやちゃんは満面の笑みで、プリンの乗ったスプーンを出した。 「じゃ、放課後。  コスプレえっちでね!」 「え…?」  それはちょっと想定外。 「王子様の衣装もあるし。  シてみたくない?」 「よく知ってるね…」 「市川さんに聞いたから」  ボクは目がまん丸になっちゃったよ。 //  だって二人とも、“鬼ごっこ”であんなに口ゲンカしてたんだもの。  だって“鬼ごっこ”で、あんな派手な口ゲンカしてたんだもん。 //-- 「いつ仲直りしたの?」 「なにが? ケンカなんてしてないわよ?」 //  “鬼ごっこ”であんなにいいあってたのに…? //--  なんだか釈然としないまま、ボクは急かされたスプーンをパク!  うん。女の子って、不可思議だよね…。 //{{ref_image 10-01saya.jpg,evPic02}} // {{ref_image busitu.jpg,bgPic}} //--  部室で王子様に着替えさせられて、ボクは思った。  なんだか、ウマくノセられちゃったのかな…。  肩が膨らんだ半袖シャツに、カラフルなカボチャ・パンツ。金色の紙製の冠。  姿見がないから、全体は見られないけど…。似合ってないよ、絶対。  でも、さやちゃんは手の平を打って大喜びなんだ。 「きゃ〜! イイ感じ〜!  いかにも、苦労知らずの“幸福の王子”よね〜」  それ、褒められてるの…? 「冗談よ、冗談!」  さやちゃんはボクの後ろに回ると、ポンっと肩に両手をのせた。 「よく似合ってるわよ、あたしの王子さま」  そういうと、ほっぺたにチュッ!  うん。ボクって単純だよね。  ご機嫌とりなのはわかってるけど、ついうれしくなっちゃう。  でもさ…。 「……なんで手を縛るの?」  気がつくとボクは、なぜか後ろ手にハンカチで縛られてた。 「無実の罪で、投獄された王子様だから」 // 「え〜〜っ」 //  なにそれ〜。 「え〜〜っ! なにそれ〜?!」 //  ボクの不平にも動ぜず、さやちゃんはニッコリ。 //-- 「服を着ただけ、なんてツマんないでしょ?  いつもの“尋問ごっこ”!」  “尋問ごっこ”は、さやちゃんがお気に入りの遊びなんだ。  たわいもないことを聞かれて、くすぐられたり、えっちなことしたりする。  でもボクは、あんまり好きじゃない。  だって、尋問されるのはいつもボクなんだもん。  オモチャにされて、うれしい人はいないよね?  う、うん。コーフンしちゃうけど…。 //// 「コスプレえっちなんだから、シチュエーションは大切よ?  その方が盛り上がるし!」  そういうモンなのかなぁ…。 「シチュエーションなら、他にもいろいろあるんじゃない?」 「例えば?」 「舞踏会で出会った、お姫様と王子様とか…」 「……なに激甘スイーツみたいなこといってんの?  ハジメって、女の子みたいね」 「王子様をせがんだクセに…」 // 「女の子はね、80%のリアリティの中に、20%のロマンを求めるものなの」 「女の子はね、80%のリアリティの中に、2%のロマンを求めるものなの」 //  なんか、いってることが矛盾してない? //  それって、なんか矛盾してない? さやちゃん?  それって、なんかおかしくない? 18%も足りないよ? 「残りの18%は?」 「刺激♪」  そういうとさやちゃんは、黒い布でボクの目を塞いだ。 ////-- //{{div STYLE, background:black, }} {{include_html html, "!↓黒バック白文字}} {{ref_image kuromi.gif,html}} //-- {{size 4,"「ちょ、ちょっと、目隠しまでするの…?」"}} //  黒い布で目をふさがれて、ボクは慌てちゃった。 「縛るだけじゃ、いつもと変わらないしね〜♪」  はぁ…。ため息でちゃうよ。 //  手を縛れて、目隠しまでされたんじゃ、もう観念するしかないね。  手を縛れて目隠しまでされたんじゃ、もう観念して付き合うしかないね。 //-- // 「ボク、なんの罪なの…?」 「ボク、なんの罪で投獄されたの…?」 //-- 「そうねぇ…。  こっそりケーキをツマみ食いした、とか?」 //  {{size 5,"ギクんッ!"}} //--  まさか、さやちゃん、澄子ちゃんとえっちしたこと、知ってるのかな…? //  うん。さやちゃんって、妙に勘がいいんだよね。  だからババヌキで勝った試しがないんだ。 //--  ボクはなにをいうのもヤブヘビに思えて、全身から冷や汗が出る思い。 「なんか、隠してな〜い?」 「な、なんにも、隠してないよ?」  スッと衣擦れの音がして、ボクはいきなり、下半身がスースーした。 // {{size 5,"「きゃっ!」"}} //--  ボクは思わず、女の子みたいな声だしちゃってた。  どうやらカボチャ・パンツと一緒に、下着まで下げられちゃったみたい…。 「さあ、これで逃げられないわよ!」 「逃げるもなにも…」  両手縛られて、目隠しされたんじゃ、脱がされなくても逃げられないよ…もう…。 「ねぇ、さやちゃん…?」  さやちゃんの気配が遠のいて、ボクはちょっと不安になってた。 「なぁに?」  ちょっと離れたところから声が聞こえて、ボクは心底、ホッとした。  うん。そうだね。  目隠しがこんなに不安になるなんて、思わなかったよ。 「ねぇ、なにしてるの?」 「着替えるの」  そうだったね。さやちゃんはまだ着替えてなかったね。  でも黙っていられると、すごく不安。  なんでもいいから、ボクはさやちゃんの存在を感じていたかった。 「ねぇ、なにに着替えるの?  やっぱり、お姫様?」 「ナニかは、お・た・の・し・み!  すぐ戻るから、ちょっと待っててね」 「こ、この格好で?!  ていうか、ドコに行くの?!」  さやちゃんはボクの問いに答えず、ドアの閉まる音だけがした。  どうやら、ホントに部室から出ていっちゃったみたい。  着替えなんて、ココでできるのに…。  ボクは大きなため息をひとつついた。  はぁ…。ホントにウマくノセられちゃったなぁ…。  さやちゃん、きっと澄子ちゃんとえっちしてたの、知ってるんだよ。  そりゃ、黙ってえっちしたボクもわるいけどサ。 「さやちゃんのイジワル…」  ひとりグチると、部室の中はシーンとした空気だけになった。  体育館からのバレー部の声が、妙によく聞こえる。  なんだか取り残され感がひしひし…。  こんなトコ、誰かに見られたらどうしよう…。  おちんぽ丸出しの目隠し王子様なんて…ヘンタイさんもいいトコだよぅ。  涙がでてきちゃいそう…。  でもでも、今日は倶楽部もないし。  半地下の入り口も目立たないトコにあるから、誰も来ないだろうけどね。 //  {{size 5,"ドンっ!"}} //--  いきなりドアが叩かれて、ボクは飛び上がっちゃった。 「ほら、ちゃんとレシーブ返して!」 「すみませ〜ん!  ボール取ってきま〜す」  なんて、バレー部のやりとりが聞こえた。  どうやらボールが迷い込んで、ドアを叩いただけみたいだね。  ホッと安堵。  あ。でも、いまのでドアが開いて、ボールを取りに来た子が入ってきちゃうかも…。 //  そしたら「ヘンターイ!!」って、悲鳴をあげられて、ボクはヘンタイ王子で全校に知れ渡っちゃう…。 //--  ど、どうしよう…。隠れることもできないし…。  ドキドキ、ビクビク…。  ボクは不安で、不安で、落ち着かない。  不安などころか、このまま放置されっぱなしで…なんて、コワイ考えまで浮かんじゃう…。  {{size 4,"早く戻ってきてよぅ、さやちゃん〜〜〜。"}} // {{include_html html, "!↑黒バック白文字}} //-- {{metainfo}}