!!!はじめての倶楽部  あのお見舞いの日から、週が明けて。  美代ちゃんはまた学校に来るようになってた。  腫れてたほっぺも元通り。  でもボクとは、ギクシャクを通り越してた。  避けられてるっていうより、もう無視されてるって感じ。  完全に嫌われちゃったみたいだよ…。  うん…。ひとりぼっちだった時より、ツライ…。 // {{ref_image BG27a_80.jpg,bgPic}} //--  そして週末。  体験倶楽部の招集があった。  月曜に話しがあったとはいえ、ちょっと急だよね?  もう。小田先生ってば、なんでも思いつきなんだから。  でも、はじめての倶楽部。  ゆり先生のいうとおり、なにかいいことがあればいいけど…。  美代ちゃんのこともあって、どんより、気が晴れない。  指定どおり体操着に着替えたボクは、不安な気持ちを引きずって、集合場所の体育館へ向かってた。  そしたら廊下で、オヤジくんとゴローくんを見つけたんだ。  ボクは小走りに近づいて、後ろから声をかけた。 「ふたりも入部するんだね!」  放課後に体操着で体育館に向かってるってことは、そういうことだよね?  案の定、オヤジくんはゆっくり頷いた。 「うむ。鈴代だけのハーレムにはさせないぞ」  ハーレムって…。  苦笑いのボクの肩を、オヤジくんがポンっと叩く。 「まぁ、安心しろ。  オラは見てるだけだ」 「見てるだけ…?」 「うむ。飛び箱の中からとかな」 「オヤジ…そりゃ、覗きだろ…」  ゴローくんがいつも通りツッコんで、ボクはクスリと安心した。  うん。知ってる子が一緒だとホッとするよね。 「他のみんなは?」  オヤジくんとゴローくんだけなのかな? 「みんなは別の用があるからな」  歩きだしながら、ゴローくんが答えてくれた。 「別?」 // 「大政は、華道部。 // 「大政は、茶道部。 「大政は、囲碁部。  小政は、空手道場」 //  小政くんはわかるとして。大政くんが華道部って意外。 //  小政くんはわかるとして。大政くんが茶道部って意外。  小政くんはわかるとして。  大政くんは囲碁部なんだ。体が大きいから、運動系だと思ってた。 //-- 「半太は、新妻にゾッコンだしな」 「新妻…?」  ゴローくんとオヤジくんは、ニヤニヤ笑いあってた。 「清太くんは?」 「清太は校庭だ」 「校庭…」  校庭部って、ナニするんだろ…? お掃除とかかな?  なんか、清太くんに似合わないなぁ。 「鈴代、魔法のインク、知ってるか?」  うん。ちょっと前に流行ったおもちゃだね。  スパイセットの魔法のインク。  時間が経つと消えちゃうヤツ。  でも、それと校庭部がなんで繋がるんだろ? 「今日、国語で習字があってさ。  先生の墨汁を、それと取っ替えたんだ。  しばらくしたら、黒板のお手本が真っ白な半紙に戻っちゃってサ。『せんせ〜い、お手本が見えませ〜ん!』  先生、キツネに摘まれたみたいな顔してんの!」  想像したら、吹き出しちゃった。 「で、取っ替えた犯人はいま、校庭十周の真っ最中ってワケなんだ」 「あはは! 清太くんらしいっ!」 「倶楽部に来ても、ヘトヘトでえっちどころじゃないだろうな」  体育館に入ると、もう何人かの男子・女子がいた。  あちらこちらに仲良し同士固まって、小田先生が来るのを待ってるみたい。 /// //  うん。あの子は来てないみたい。 ///-- 「思ったより多くないね」  ボクがいうと、ゴローくんは頭の後ろに手を組んだ。 「体験教室の後だからな。秋になれば増えるかもな」 「すっずしっろく〜ん♪」  ポンっとたたかれて振り向くと、市川さんがいた。 「市川さんも入部?」 「うん。  美代ちゃんもいっしょだよ?」  美代ちゃんは、ぷいっとそっぽを向いてた。 //美代ちゃん {{ref_image 08_miyo.jpg,evPic02}} //-- 「が、学級委員だから…」  前髪を分けたおデコを真っ赤にして怒って、ボクとは話したくないって感じ…。 「あたしが誘ったんだ」  市川さんが美代ちゃんのふくれたほっぺをツンツン。  ちょっとうらやましい…。 「早川さんは?」 「さやちゃんは、新体操部で今日は欠席」  口実じゃなくて、ホントに重なっちゃったんだ。  他校へ見学に行くんだって。 「だって。  よかったね、美代ちゃん!」 「きょ、今日は見学だけよ。  えっちはしたくないんだから…」  美代ちゃんはほっぺをツンツンされて、ぷうっと破裂しそうなくらいふくれさせた。  ハァ…さやちゃんもかなり嫌われちゃってるね…。  やっぱり、ボクが原因なのかな…。  ため息出ちゃうよ…。 「へ〜。けっこう集まってるじゃない〜」  体育館を見渡し、市川さんはニッコリ。 「そうなの?」 「うん。初等部にしては多い方よ」  と。唐突に市川さんは、ボクの喉元を指差した。 「ソレ、なあに?」  目ざとく見つけられちゃった。  シャツの襟で隠してたんけどね…。 // 「んと…。孫悟空の輪っか…」 「んと…。さやちゃんのプレゼント…」  うん。ボクは犬がつけるみたいな、赤い首輪をつけてたんだ。  冗談じゃないんだもんね…さやちゃん…。  いやだったけど、お見舞いの時のうしろめたさもあって、断りきれなかったんだ。 「コレしてれば、誰もえっちしないだろうって」  首輪には『早川鞘子のポチ』って、名前が書かれてて、それを見た市川さんは、プッて吹き出しちゃった。 「ポチぃ〜、お手ぇ〜♪  うまくできたら、チンチンでちゅよ〜♪」  もう…。  市川さんってば、さやちゃんみたいなコトいうんだからぁ…。  ゴローくんとオヤジくんまでお腹かかえてるよ…。  ほどなく小田先生が体育館へやってきて、ボクらは部室である、舞台地下に集められた。  広い体育館に散らばってたせいかな?  多いように感じなかったけど、こうして見ると、ひとクラス分くらいいるみたい。  見たかんじ、中学年と高学年の子ばかりみたいだった。  それで意外なことに、女子の方が多いんだ。  男子が少ないって、タイヘンそう…。 「みんな、鈴代くんに興味津々なんだよ?」  くひひって、市川さんがイタズラっぽく笑った。  もう…。からかってるんだろうけど…。  そういわれると女子はみんな、ボクの股間を見てるように思えちゃう…。  うん。ボクって、ちょっとした有名人みたいなんだ。  体験教室で、おちんぽが大きいって広まっちゃって、初等部の女子で知らない子はいないとか。  やだよね…もう…。そんなコトで有名なんて…。 「まぁ、そう硬くならずに〜」  小田先生、相変わらず下品だよ…。  小田先生はヤラしい目で笑って、コホンと咳払い。  集まったみんなに、倶楽部の説明を始めた。 「みんな、今日は集まってくれてありがとうね。  この倶楽部は、“節度あるえっちを学ぶ”ためのクラブ。  でも、そう難しく考えないでね。  勉強とか友達のこととか。  いやなことあったり、誰にもいえない悩みがあったり。  そんな心が疲れるようなことがあったら、みんなと遊んで、ちょっとだけ忘れてみましょう。  この体験倶楽部は、そんなクラブなの。  えっちをしたい子、してみたい子、そうじゃない子も、気軽に集まってね。  みんなで仲良く楽しく、ドキドキな思い出を作りましょう!」  先生がそういってニッコリ微笑むと、みんなで「は〜い」って手をあげた。 「それじゃ、自己紹介からしましょうか」  先生はみんなに体育座りをさせて、ボクらはひとりひとり立って、自己紹介を始めた。  自己紹介は、ほとんどクラスと名前をいうだけの、簡単なものだった。  四年生がいちばん多くて、ついで五年生と六年生。  三年生の子も少しだけいた。  そうそう。あの、お下げ髪の五年生もいたんだ。 //こよしちゃん //  名前は、{{ruby "小町 好美","こまち よしみ"}}さん。 {{ref_image 08_koyosi.jpg,evPic02}} //--  生徒会の人なんだって。  ちょっとびっくり。  だって、メガネをかけてて、すごく頭がよそさうで、えっちへの興味なんて、全然なさそうなんだもん。 「鈴代くん、鼻の下のびてる…」  ボソッと美代ちゃん。 「ち、ちがうよ。  この間、廊下で見かけたから…」 「フンッだ」  もう…。ツンツン美代ちゃんで、ボクは早くも、心が疲れちゃいそうだよ…。  そうして自己紹介が終わるころ。  舞台地下に、ヘトヘトの清太くんが入ってきた。  小田先生がニッコリ。 「清太、いいトコに来たわねぇ〜」 「マジ?! えっち始めるの?!」 「これから大掃除」 「おお〜そ〜う〜じぃ〜〜?」  ウンザリ顔で清太くんがいうと、舞台地下は爆笑に包まれた。  うん。そうなんだ。  今日は大掃除だけだって。  それと、模様替え。  ボクらは小田先生の指揮で、手分けして舞台地下の大掃除をし始めた。  ロッカーやダンボールを一度外に出して、掃き掃除をするんだ。  長いこと人の出入りが少なかったから、かなりホコリが溜まってる。  “ホテル”にしてたときに、少しずつやってたけど、おおっぴらにはできなかったからね。 「なにコレ…すごぉ〜い」  誰かがダンボールの中から、演劇部の衣装を見つけたみたい。 「ホラホラ、鈴代くん♪ お姫様みたい〜」  純白のドレスを身に当てて、はしゃぐ市川さん。  やっぱり女の子の憧れなんだね。お姫様って。 「王子様もあるよ〜」 「すごいね〜。コスプレえっちできちゃうね〜」 //  お下げ髪の五年生がニッコリしてた。 //  お下げ髪の小町さんがニッコリしてた。 //--  お姫様と王子様のコスプレえっち…。  それも女の子の憧れなのかな…? 「いいわね〜。先生に合うのがないのが残念」  小田先生はにこやかに微笑んでた。 「これなら大丈夫じゃね?」  ゴローくんが馬の着ぐるみのを引っ張りだす。 「それにどんなシチュエーションをつけろと…?」  おもしろくなさそうな小田先生に、ゴローくんはヒヒヒって笑った。 「馬なら、鈴代くんじゃない〜?」  市川さんがケラケラ笑って、聞いてた子はみんな大笑い。  もう…ボクのおちんぽのこといってるんだね…。  ボクは恥ずかしくって、顔から火が出そうだよ。  でも、美代ちゃんだけは、マジメな顔で掃き掃除してたんだ。真っ赤な顔で恥ずかしがって…。  って、思ったら、プッて吹き出して笑いだしちゃったよぅ〜。  もう…真っ赤な顔は、笑うの堪えてただけなんだね…もう…。  掃除が終わって。  模様替えもだいたい終わると、ボクらはめいめい座って、おしゃべりをしていた。  雑然とホコリだらけだった舞台地下は、倶楽部の部室になって、スッキリ様変わり。  半地下の薄暗い雰囲気も、なんだか明るくなったみたい。  ロッカーの配置が変わったせいかな?  ロッカーで仕切りが作られて、そこでえっちをしていいみたい。  冷たい床のマンマだったけど、あとでお布団を用意するって。小田先生がいってた。 「食べる?」  市川さん、もう仲良しさんができたみたい。  知り合ったばかりの子に、お菓子を配ってた。  掃除しているときに、仲良くなったのかな?  大掃除の目的って、そんなとこにあったのかもしれないね。  小田先生って見かけによらず、ちゃんと考えてるんだね。 「鈴代くん、はい。  美代ちゃんもどう?」  “マツタケの森”の箱を差し出され、ボクと美代ちゃんはお礼をいって手を延ばした。 「こ〜ら!  学校にお菓子持ってきちゃ、ダメでしょ?」  いきなり小田先生に注意されて、ボクはマツタケの森が喉に詰まっちゃうかと思ったよ…。 「先生も食べる〜?」 「いりません」  市川さんが差し出す箱を、小田先生はキッパリと断った。 「さやちゃんもわたしも、タケノコ派だから〜」  部室に入ってきたゆり先生が、ニッコリ笑った。  ゆり先生は副顧問なんだって。 「やっぱり、マツタケよりタケノコよね〜。  若くてぐんぐん、おっきくなるタケノコ…って、ゆぅりぃ〜」  おどける小田先生に、みんなクスクス笑った。 「うふふ」  美代ちゃんもクスクス笑ってる。  まるで、体験教室の夕食のときみたいだね。  美代ちゃん、やっぱりかわいいなぁ…。  広いおデコでいると、まるでお日さまが笑ってるみたい…あれ?  ボクは、いまさらに気づいた。  美代ちゃんの髪型。  いつも前髪で隠してるのに、今は自慢げにおデコを晒してるんだ。  あの、真ん中から分けた髪型って…。 「先生! 帰る前にシャワーしていい?  ホコリまみれで気持ち悪い〜!」  ふいの市川さんの声に、思い出しかけてたことをかき消されちゃった。 「鈴代くんも行こう! 洗ってあげるから!」 「え…」  返事する間もなく、ボクは市川さんに腕を引っ張られちゃった。 「じゃ、先生も〜」 「さやちゃん先生は、まだやることあるでしょ?」 「ゆぅりぃ〜のいけずぅ〜…」  小田先生とゆり先生の掛け合いを横に、市川さんは美代ちゃんも誘っていた。 「美代ちゃんもいっしょスル?」 「あたしは…まだ、風邪が残ってるから…」 「そうなんだ」  市川さんはちょっと残念そうだった。  ボクもちょっと残念…。  えっちしたいからじゃなくて、仲直りのキッカケがほしいから。  友達としてなら…かまわないよね? さやちゃん?  結局、ボクと市川さんのふたりでシャワーをして、その日は帰った。  うん。ボクの学校はスポーツに力を入れてるとかで、ちゃんとお湯の出るシャワーがあるんだ。珍しいよね。  他の子も何人か、ボクたちの真似をしてシャワーしてた。  う、うん。えっちも、してた…。  ……うん。…ボクも…市川さんと…一回だけ…。  さ、さやちゃんには内緒だよ?  首輪に効力ないって知ったら、ショックでしょ?  それに、今度は首輪に鎖をつけられちゃうよ…。 {{metainfo}}