!!!はじめてのお見舞い  佐藤さんは風邪をひいて、学校を休んでる。  もう一週間くらい。  おたふく風邪なんだって。  それでボクは、大事な連絡のプリントを届けに行くところ。 //  保険委員でもないのに、なんでボクが行くのかって?  なんでボクが行くのかって? //--  ボクはまだ、おたふく風邪をしたことがないから。  家の方角が同じなのも、クラスではボクだけだったんだ。  佐藤さんの家は、二階建ての一軒家。  ボクは二階の窓を見上げ、ため息をついた。  うん。玄関まで来たのに、まだ呼び鈴を押せずにいたんだ。  なんだか、敷居が高いよね…。 //  佐藤さんとギクシャクしたままなのもあるけど。  女の子の家に行くなんて、はじめてのことだったし。それも、好きだった女の子だもんね。  緊張しちゃうよ。逃げ出しちゃいたいくらい。  やっぱり、さやちゃんを誘えばよかったかな…。  でも、家が離れてるから、帰るの遅くなっちゃうし…。  市川さんは、友達と約束あるって、ダメだったし…。 //--  うん。そうだね。  ため息ばかりついていても、しょうがないよね。  ボクはちょっと背伸びをして、呼び鈴を押した。 「は〜い」  って、中から女の人の声がした。  あ。お花とか買ってきた方がよかったかな?  ボクって気が利かないよね。  せっかく、佐藤さんと仲直りするチャンスなのに…。  ため息をすると同時に、ドアが開いておばさんが出てきた。  佐藤さんのお母さん。  前に授業参観で見た覚えがある。  佐藤さんって、お母さん似なんだよね。  色白でおっとり、美人でおしとやかな感じ。  ウチのお母さんとエライちがい。 「あ、あ、あの、えと、えと――」  ボクは言葉を準備してなくて、ただ、ただ、アワをくっちゃった。  ホント、ボクって機転もなんにも効かない。  うん。さやちゃんにもよく呆れられる…。 「あら。鈴代くん…?」  ちょっと驚いたふうに、おばさんはそういった。 「は、はいっ!」  名前を呼ばれるなんて意外。  ボクはびっくりしちゃった。 「なにかご用?」 「あ、あの、が、学校の、お知らせのプリント持ってきて、お見舞いもあって、み、美代ちゃん、休んだままだから。その…」  説明にもならないことをいうと、おばさんはクスリと微笑んだ。 「そう、ごくろうさまね」  しっかりいえないのが恥ずかしかったんだけど、おばさんが美人なのもあって、ボクは顔がすごく熱くなっちゃった。 「さ。あがって」  おばさんはボクを招き入れると、玄関そばの階段から二階へ声をかけた。 「美代? 鈴代くんが、お見舞いに来てくれたわよ〜」 「お、おじゃましま〜す…」  靴を脱いで土間からあがると、おばさんはポンっと手の平を合わせた。 「あ。鈴代くん、おたふく風邪はだいじょうぶ?」 「えと。まだ、やってないです」 「じゃ、ちょうどいいわね!」  病気になるのがちょうどいいって、なんかヘンだよね?  できることなら、なりたくないんだけど…。  おばさんに案内されて、ボクは二階の佐藤さんの部屋へ入った。 //  佐藤さんはベッドの上。半身を起こして、腰からお布団をかけてた。  佐藤さんはベッドの上で、半身を起こしてた。 //-- // {{ref_image 07_miyo_sune.jpg,evPic02}} //--  ピンク色のパジャマで、ひよこ色のかわいいカーディガンを羽織ってる。  そして白いタオルを顎からほっぺに巻いて、茶巾みたいに頭の上で結んでた。  おたふく風邪でほっぺが腫れるのって、ホントなんだ…。  市川さんと倶楽部の話しをした時、ほっぺが赤かったのは、そういうことだったんだね。 「よかったわね。  鈴代くんがお見舞いに来てくれて」 「もう! お母さん!!」  クスクス笑いながら、おばさんは一階へ降りていった。 //  佐藤さんが大声だすの、はじめてみちゃった。 //  佐藤さん、チラッてボクを見て、真っ赤な顔で俯いちゃった。 //  佐藤さんはチラッてボクを見て、真っ赤な顔で、側にあったウサギのぬいぐるみを抱きかかえちゃった。  佐藤さんはチラッてボクを見て、真っ赤な顔でウサギのぬいぐるみを抱きかかえちゃった。 //-- 「もう…こんなヘンな顔で恥ずかしいのに…」  ほっぺがふくれてるみたいだけど、それがおたふく風邪のせいなのか、ボクにはよくわからなかった。  でも、かわいい。  タオルの結びがウサギの耳みたいで、抱いてるぬいぐるみとお揃い。 「うふふ。チャームポイントだね」  佐藤さん、ぬいぐるで顔を半分隠しちゃった。  怒っちゃったのかな…?  ゴマかす言葉も思い浮かばなくて、ボクは物珍しく部屋を見回した。  同い年の女の子の部屋ってはじめて。  雰囲気は隣の家の春子お姉さんと似てるけど、ぬいぐるみが多くて、赤いランドセルがあって、いかにも“初等部の女の子”って感じがした。  机の上もキチンと整頓されてて、頭のいい佐藤さんの性格を表してるみたい。  さっきまで読んでたのかな?  ベッドの側に国語の教科書があって、その隣に一本足の目覚まし時計があった。  佐藤さんは慌てて、目覚まし時計を布団の中に隠しちゃった。  アニメの文字盤だったから、恥ずかしかったのかな? 「“あそにゃん”、ボクも好きだよ」  っていってあげたのに、佐藤さんは真っ赤な顔のままだった。 「す、鈴代くん、風邪うつっちゃうよ?」 「やっぱり…?」 「うん…たぶん…」 「そしたら、お見舞いに来てくれる…?」  佐藤さんは、フルフル、首を振った。 「さやちゃんに怒られちゃうもん…」  それはそうだよね…。  ボクったら、ナニ期待してるんだろ。 「あ、あの…もう、風邪はだいじょうぶ?」 「うん。もうほとんど治りかけ。  明日は登校しようと思うの」  それで思い出したボクは、ランドセルからプリントを取り出した。 「コレ、佐藤さんのお知らせのプリント」  ションボリ、佐藤さんはプリントを受け取った。 「鈴代くん、なんだか、よそよそしい…」 「え?」 「…名前で呼んでくれてたのに……」 // 「でも…ボク、フラれちゃったし…」  でも、それはフラれる前のことだもの。 「…ボク、フラれちゃったし…」 //-- //  ちょっと間があって、佐藤さんはポツリ、ポツリといった。  ちょっと間があって、佐藤さんはぬいぐるみをいじりながら、ポツリ、ポツリ。 //-- 「“佐藤さん”じゃ、話しにくいよ…。  なんだか、避けられてるみたい…」 //  ボクはちょっとびっくり。  ボクは目をパチクリしちゃってた。 //-- 「ボク…美代ちゃんに、避けられてるんだと思ってた…」 「そんなコト…ないよ…」 //  恥ずかしがり屋の美代ちゃんは、ぬいぐるみを抱きしめ、いいにくそうにいってくれた。  いいにくそうにいうと、恥ずかしがり屋の美代ちゃんは、ぬいぐるみを抱きしめた。 「あの…ごめんね…。 //  あんな乱暴なえっちをしたから、怒ってるんだよね…」 //  あんな乱暴なえっちをしたから、怒ったんだよね…」  ボクが乱暴なえっちをしたから、怒ったんだよね…」 //--  うん…。覚えてるよね…?  ボク、体験教室で、美代ちゃんに乱暴なえっちをしちゃったんだ。  んと。犯す…って感じの…。  あんまり濡れてない美代ちゃんのおまんこに、ムリヤリおちんぽをツッコんで、グイグイ、力任せに出し入れさせたんだ。  美代ちゃん、大粒の涙をポロポロこぼしてた…。  なんでそんなコトしたのか、ボクにもわかんないけど…。  市川さんから美代ちゃんのことを聞いて、そのことに思い当たったんだ。  フツーの子でも苦しいなら、あの時のボクのは、とっても痛かったんじゃないかって。  とっても痛くて、それでとっても怒っちゃったんじゃないかって。  うん。美代ちゃんのが、狭くてキツイのは知ってたよ?  だから、あの時もすぐに謝ろうとしたんだけど、…機会を無くしちゃって、そのままだったんだ。 「それで、怒ったまんまで、避けられてると思ってたんだ。  ごめんね…本当に…」 「……鈴代くん、なんにもわかってない」  頭を下げたボクに、震えた声が聞こえた。 「あたしが怒ったのは…鈴代くんがウソつきだからよ…。  さやちゃんが好きなのに…ゴマかして…。  なのに、あたしのことはちっとも見てくれなくて…っ…!  あたしは…あたしは、鈴代くんとえっちしたいのに…おちんぽ、おっきくて、苦しくて…それでもイイのに…」 //  ギュッとぬいぐるみを握りしめ、まっすぐにボクを見る美代ちゃんは、いまにもこぼれ落ちそうなくらい、大粒の涙を溜めてた。  まっすぐにボクを見る美代ちゃんは、いまにもこぼれ落ちそうなくらい、大粒の涙を溜めてた。 //--  ボクは混乱の堂々巡りだった。  いわれたことに、頭の整理が全然、つかない。 //  だって、だってボク、「おちんぽ苦しい」って、フラれたんだよ? それでもイイって…。ウソつきって? さやちゃんが好きって、好き合いはじめたのは、フラれた後だよ? えっちしたって、苦しくてもイイって…ボクのコト、まだ好きって…コト…? それじゃ、なんでフラれたの…? //--  なにをどうしていいかわからないでいると、美代ちゃんは突然、ほっぺたのタオルを取ったんだ。  そして、唇を突き出してきた。 「キスして」 // {{ref_image 07_miyo_kiss.jpg,evPic02}} //--  まだちょっと赤みがあって、ほんのり膨らんだほっぺた。  かわいらしく突き出した、桜色の唇。  キスして…、それで、許してくれるのかな…。  ボクはさやちゃんに後ろめたい気持ちでいっぱいだった。  でも、それで許してくれるなら…。  でも、ホントにそうなのかな…?  美代ちゃんの唇。  キスのうまい美代ちゃんが、ボクは忘れられないんじゃないのかな…?  いないハズのさやちゃんに、側で見つめられてるみたいな気がして、それでもボクは、美代ちゃんに唇を近づけてた。 //  {{size 5,"パンッ!!"}} //--  ほっぺたが、ジンジン、熱くなってた。  ボクは呆然と自分のほっぺたに手を当てて、美代ちゃんの怒った顔から涙がこぼれて…。 // {{size 5,"「もう帰ってっ!!」"}} //--  美代ちゃんはそう叫んで、布団を被っちゃったんだ。 //  くすんくすん、すすり泣きが、西日に染まった部屋に聞こえきた…。  くすんくすん…。  すすり泣きが、西日に染まった布団の中から聞こえてた…。 //  階段を降りると、おばさんが紅茶とケーキを持ってた。  階段を降りようとすると、おばさんが紅茶とケーキを持ってた。 //-- 「ごめんなさい。美代ちゃん、怒らせちゃった…」 「ううん。気にしないで。  ずっと寝込んでたから、我が儘になってるの」  おばさんは「ケーキを食べてって」って、いってくれたけど。  ボクは遠慮した。 「また、仲良くしてあげてね?  あの子、鈴代くんのことが大好きだから」 「う、うん…」 //  なんか、すごくミジメで、泣きたくなっちゃった。  なんでかわかんないけど、ボクはすごくミジメな気分で、すごく泣きたくなってた。 //--  次の日、ボクはカラッポの席を見て、深いため息をついてた。  うん…。昨日のことは、さやちゃんに話してない。  だって、話せないよ…。  ボクが美代ちゃんのこと好きだったの、さやちゃん、よく知ってるんだもん…。 {{metainfo}}