!!!待ってよ、白衣の天使-1 {{category 本編,白イルカの瑠歌,nolink}} !■看護婦姿のスフィアが、甲斐甲斐しく部屋を掃除していた。 // {{ref_image room10_a.jpg,pic}} //-- 「るん♪ るん♪」  ここ数日、ハンス(仮名)は人魚狩りにもゆかず、館の中で“白衣の天使”を探し続けていた。  その理由をスフィアは知らねど、ハンス(仮名)といられることはうれしいかぎり。  ウキウキ、自然と鼻唄が出てきてしまうである。  飛び猫・ニーヤは無邪気なスフィアを見るともなしに、深い溜め息をついた。 「…どこにあるのかしら…“白衣の天使”……」 「…くすん…ぐすん……」  ハンス(仮名)は朝から、膝を抱えてすすり泣き。  空は青く、どこまでも高いのに、部屋の中はどんより曇り。季節外れの雨期のように、しとしと、ジメジメである。 「…くすん…ぐすん……。  ……このごろ、ボク、見えるんだよ…」  カビの生えそうなハンス(仮名)に、ニーヤはけだるげな横目を向けた。 「なにが?」 「もーほーさん。  たまにニーヤの姿が、'''毛むくじゃらで筋骨逞しいもーほーさん'''に見えるンだよぉ〜ッ!」 「失礼ねぇ!  あたしのどこが、もーほーさんなのよッ!」 「だって、だって、そう見えるんだもん〜ッ!  んでもって、なんか、こう、胸がキュンッて……。  あ〜、ボクはこのまま狂い死にするんだ〜ッ!」  わんわん、号泣するハンス(仮名)に、ニーヤは耳を塞いだ。  こうなっては、“白衣の天使”を探し出すどころではない。  なだめも慰めも通じぬハンス(仮名)は、もはや末期症状。  いや。すでに狂気の死に神が、取り憑いているのやも…。  と。はた、とハンス(仮名)は泣き止み、スックと立ち上がった。 {{size 4,"「人魚姫のとこに行くッ!"}} {{size 4," どうせなら'''もーほーさん姿の人魚姫を見ながら死ぬッ!!」"}} {{size 4,"「止めてッ!"}} {{size 4," それだけは止めてぇッ!!」"}}  もーほーさん姿の人魚姫など、考えるのもおぞましい。  ニーヤは必死でハンス(仮名)のスボンにすがりついた。 「ええい離せ、お宮ッ!!」  などと、莫迦なことやってる、一人と一匹。  それとは対照的に、スフィアが上機嫌に歌を口ずさむ。 // {{ref_image sf_kango_hns.jpg,スフィアのアルバム}} //-- 「ク〜ロス♪ クロス♪ テーブル・クロ〜スぅ♪」 //  ふわっと、テーブルクロスが広がり、ニーヤの瞳孔はまん丸く大きくなった。  ふわっと、テーブルクロスが広がる。 「クロス……?」  ニーヤの瞳孔がまん丸く大きくなった。 //-- {{size 5,"「それよッ! それだわッ!!」"}} 「違うッ!  ボクが見たいのは、テーブルクロスのもーほーさんじゃないッ!!」 「違うわよ! “赤い十字の冠”ッ!」 「へ? テーブルクロスが?  白いし、冠じゃないよ」 「だから、'''赤い冠'''じゃないのよッ!  瑠歌は、'''布と十字を読み間違えたのよ'''」 「テーブルクロスには十字なんてないよ」  ぽかッ! 「いたいなぁ、もう…ボクはビョーニンなんだゾ?」  叩かれた頭を抑えるハンス(仮名)に、ニーヤは人指し指を立てた。 「いい? クロスは布じゃなくて、十字のこと。  つまり、'''“赤い十字の冠”'''なのよッ!」 「お皿、さらさら♪ 花瓶にお花♪」  なるほど。  皿を並べるスフィアの頭には、“赤十字の冠帽”がある。 「て、ことは……」 「“白衣の天使”はアレね。  なによ。タダの看護服じゃない!!」  ニーヤはフンっと鼻を鳴らした。 「スフィアッ!!」 「きゃうッ!」 //  やっと出会えた“白衣の天使”。  これでもーほーさんともオサラバである。  喜びあまったハンス(仮名)は、スフィアに抱きついていた。 //-- // {{ref_image sf_kango_ng.jpg,スフィアのアルバム}} //-- 「ハンス(仮名)…、やっとその気になってくれたの…?  スフィア、うれしいッ!!  でもだめよ…こんな明るいうちから……はずかしいわ…。  ああ、しかし……。  恋する乙女は、沸き上がる熱い欲望に、あらがえないのであった……」  スフィアはひとり盛り上がり、“白衣の天使”をスルスル、脱ぎ脱ぎ…。 // {{ref_image sf_kango_non.jpg,スフィアのアルバム}} //-- {{size 4,"「来てッ! ハンス(仮名)ッ!」"}}  バッと、“白衣の天使”を投げ捨てた。  下着なしの、生まれたままのスフィア。  しかし、ハンス(仮名)と飛び猫の視線は、漂う“白衣の天使”を追い……窓の外に消えた。 {{size 5,"「あああぁぁぁぁッ!"}} {{size 5,"  “白衣の天使”があああぁぁぁぁ……」"}} {{size 5,"「そうよ、あたしが'''白衣の天使'''よ」"}} {{size 5,"「こんのぉ〜、役立たずの色ボケがァ〜ッ!!」"}}  絶叫するハンス(仮名)。  ハンス(仮名)に抱きつくスフィア。  ハンス(仮名)に噛みつく、飛び猫。  ドタバタ喜劇は、まだはじまったばかりであった。 //{{counter2 mer03Count}}