!!!傷ついた背中 {{category 本編,鋼鉄の人魚・アクア,nolink}} !■飛び猫とハンス(仮名)は、入り江へ向かっていた。 // {{ref_image BG00c1_80.jpg,pic}} //-- 「ウソばっかりッ!!  なんで、サド王子がガンスなのよッ!!」  飛び猫・ニーヤは憤慨していった。 「ヤキがまわったわね、アンタも。  ウソつくなら、もっとマシなウソつきなさいよ」 「ウソじゃないよ。  だから、証拠を見せるっていってるのに」 「はい、はい。  しょうがないから、付き合ってあげるわ。  どうせ待ち伏せしたって、ガンスは来やしないわよ…。  どうしたの…?」  浜辺へ出ると、ハンス(仮名)の足がピタリと止まった。  ついで駆け足となり、ある一点で片膝をついた。 「足跡がある……」 「そうね。これ、人と人魚のね。  あの岩影に向かってるみたいだけど……まさかッ?!」 「先を越されたんだ! 急がなきゃッ!!」 !■岩陰に鞭を持ったガンス。その傍らに、アクアがいた。 // {{ref_image ad_island02_c_my.jpg,pic}} {{ref_image aqua_n_ouch_up.jpg,アクアの入り江}} //--  跪いた背中にガンスは容赦なく鞭を奮い、その度にアクアは痛々しい悲鳴を上げていた。 「いい加減に正銘を教えろ、アクア」  ビシッ!! と、鞭が紋章のある背中を打ち据える。 「ウッ!」  引き結んだ唇から、苦渋の呻き。  全身に玉のような脂汗が浮かび、打ち据える鞭に飛び散る。  もう何時間そうしているのであろう。  背中には幾筋もの新しい傷があり、腫れ染まった紋章は惨めとしかいいようがない。 「相変わらず、いい啼き声だ…アクア…。  放り出したのを後悔しているぞ…クックック…」  ガンスは、人魚姫の前と打って変わって、冷酷ぞんざい。 // 「アぅッ! くうっッ! あく!」  アクアはひたすらに痛みを堪える。  変わってしまったやさしい王子を、悲しみこそすれ、呪うことはない。  その原因は自分にあり、当然の罰として、鞭の戒めに涙を滲ませていた。  しかし健気さも度が過ぎると、滑稽に転ずる。  ことにガンスのような男には、快楽の種でしかない。 「アくッ! ハぅッ! ……ハァ…あぐぅっ!!」  苦しみ悶えるアクアの声に、ガンスの目は喜々とした光りを帯びた。 「ククク…。  あの姫さまも、さぞかし堪らん声をあげるだろうなぁ…」  ガンスは歪んだ微笑の顎から汗を拭う。 「だが、心配することはないぞ。  人魚姫を手に入れた後でも、ちゃんとおまえを可愛がってやるからな…」  そういうとガンスは、鞭の柄で憔悴しきったアクアを見上げさせた。 「だから……正銘を教えるんだ、アクア」 「ガンスッ! いい加減にしろッ!」  突然現れたハンス(仮名)たちに、ガンスは狼狽えた。 「ハンス(仮名)ッ?! なぜココに……」  キッとガンスが、アクアを睨む。 「アクアは関係ないわよ。  あなたがそんなことする人だとは、思わなかったわ」  飛び猫が冷たい視線を向けていた。  人魚姫の腹心である、飛び猫に見られたのは非常にマズイ…。  ガンスは焦りながらも、偽りの仮面を取り繕った。 「ご、誤解ですよ。  こうしないと、感じないと、この女がいうものですから」 「そうなの? アクア?」  ハンス(仮名)はアクアを庇うように、ガンスとの間に入った。 「…………」  アクアは何もいわず、ただコクンと頷いた。 「そら、ごらんなさい。 //  この人魚は、そーゆーシュミのヘンタイなんですよ」  コイツはそーゆーシュミの、ヘンタイ人魚なんですよ」 //--  ガンスは大げさな溜め息をつき、肩をすくめた。 // // 「人魚…?」 //  ニーヤの眉がピクンと動く。 // //  ガンスの言葉にはほのかな侮蔑が感じられたのだ。 //  ガンスはそれに気づかず、鞭をハンス(仮名)に向けた。 //-- 「わかっただろう、ハンス(仮名)?  早くそこをどけっ!」  背を向けるハンス(仮名)は、ガンスの命令など聞く気もない。 「アクア、こんなのイヤなんでしょ?  ツライっていってたじゃない…」 「……王子さまがいいのなら、わたしはいいの」 「この莫迦もの!  それでは、僕が望んだみたいではないかッ!!」  ガンスはビシャリと鞭を鳴らした。 「忘れたのか?!  僕がどんなに苦しんだのかをっ!!」 「海綿体断裂、および恥骨骨折。  それもウソだろ?  そういってダマせば、アクアは大人しく従うとでも思ったんだろ?」  ハンス(仮名)の言葉に、アクアはハッとガンスへ目を向けた。 「そうなの…? 王子さま…?」 「し、失礼なッ!!  あんな苦痛をウソよばわりされる謂われはないぞッ!!」  ガンスは苦虫を噛み潰したような顔になった。 「医者や医術師たちに股間を曝け出し、どんな恥辱と苦悶を受けたか…。  貴様らにはわかるまいっ!  治療とはいえ、中年の脂ぎった男に、自分のおちんぽを摩られる、あの堪えられない苦悶がっ!!」  それは血涙を流さんばかりの、悲痛な叫びであった…。 「……そ、それは本当だったんだな」  ほんの一瞬、ハンス(仮名)はガンスに同情を覚えた。 「でも自業自得だろ。  大方、前戯なしで痛がる処女を、見たかっただけだろ?」 「だ、黙れッ!」  いうと同時に、ガンスはハンス(仮名)を、思いっきり鞭で打ちすえた。 「アグッ!」 {{size 5,"「ハンス(仮名)!!」"}}  ハンス(仮名)の頬に赤い筋が作られると、飛び猫・ニーヤは表情を一変させた。 「もう、怒ったッ!」  真っ赤になったニーヤは、その鋭い牙と爪を、ガンスの背に突きたてる。 「ぐあぁぁぁ〜〜〜っ!!」  ガンスは悲鳴を上げて、飛び上がった。 「は、放せっ!  放せ、この化け猫めがっ!!」  なんとか痛みの根源を振り払おうとするが、飛び猫は頑として放そうとしない。  いや、放さないどころか、その牙は喰い込む一方である。  半ば半狂乱となったガンスは、飛び猫を背負ったまま、どこかへ走り去ってしまった。 //{{counter2 mer03Count}}