!!!あやしい海綿体 {{category 本編,鋼鉄の人魚・アクア,nolink}} !■入り江には今日も、穏やかな波音と歌声が流れていた。 {{ref_image BG04a_80.jpg,pic}} 「アクアッ!」  岩礁に座るアクアに呼びかけると、アクアはビクッと顔を向けた。  そして声の主がハンス(仮名)とわかるや、海へ飛び込み、砂浜までやってきた。 {{ref_image aqua.jpg,アクアの入り江}} 「ハンス(仮名)だったのね。よかった。  他のハンターかと思って、びっくりしちゃった。  風邪はひかずにすんだ?」 「ボクの名前、どうして知ってるの?」 //  アクアに名前を告げた覚えはなかった。  この間の別れ際にも、名前を呼ばれて気になっていたのである。 「だって有名ですもの。  “元・王子さま”は」 「有名だなんて〜。そんなぁ〜〜」  微笑むアクアに、ハンス(仮名)はモジモジ、クネクネ。  飛び猫はその横で呆れ顔。  ハンス(仮名)が思っていることとは、別の意味であろうことは明白なのである。 「うふふ。  わたしって、才能あるのかしら?  二人も溺れた王子さまを助けるなんて」 //  アクアはペロッと舌を出して、チャーミングなウィンクをした。  アクアはペロッと舌を出してウィンク。  なかなかチャーミングである。 //-- 「アクアを捨てた王子も、溺れたの?」  アクアの笑顔が急に曇る。 「もうっ! アンタには、デリカシーってもんがないの?!」  ポカンッと、ハンス(仮名)は飛び猫に殴られた。 「ご、ごめんよ、アクア。  その、聞いちゃったんだ…アクアと、王子のこと…」 「有名ですもの。しょうがないわ」  アクアは自嘲気味にそういうと、入り江の外を指差した。 「王子さまは、あそこで溺れてたの。  たまたまわたしが助けて……それで…一目惚れしちゃった」  そいうとアクアは、照れたように頬を両手で挟んだ。 「でもギルドに行くのは怖かったから、魔法使いに人の姿にしてもらったの。  期限付きだったけど」 「なんか、聞いたような話しだね。  それって、人の姿にするかわりに、声を要求されたりしない?」 「いいえ。  ……その、ちょっと恥ずかしい思いはしたけど…」 「……ありうるわね」  糸のような目で、飛び猫はポツリと呟いた。 「飛び猫、知ってるひと?」 「知らない、知らない、知りたくもない」 //  ブルブルと飛び猫は首を振った。  ブルブルと飛び猫は首を振り、アクアに話しを戻した。 //-- 「で。念願かなって、王子様に嫁いだはいいけど、実はそいつはサド王子だった…。  て、ワケね?」 「いいえ。王子さまはやさしく迎えて下さいました」  恥じらい、頬をぽっと染める、アクア。 「うぅ〜、かわいいよ〜。初々しいよぉ〜」  感涙するハンス(仮名)を、飛び猫が睨む。 「じゃ、その背中の傷はどうしたの?」  飛び猫の疑問を聞くとアクアは、一転してぽろぽろと涙を流しはじめた。 {{ref_image aqua_sad_up.jpg,アクアの入り江}} 「わたしがいけないの。  王子さまにケガさせてしまったから…」 「ケガって…?」 「…海綿体断裂、および恥骨骨折……」  すすり泣きのアクアの言葉に、ハンス(仮名)と飛び猫は顔を見合わせた。 「…初めての夜に……ポッキリと……」  つまり、初夜に王子のおちんぽが、ポッキリ、折れてしまったと。  思わず股間を抑える、恐ろしい話しである…。 {{size 5,"「わたし、“鋼鉄の処女”にされてしまってたの!!」"}} {{size 5,"「が〜ん!」"}} //  ハンス(仮名)は途端に、滝のような涙を流しはじめた。  ハンス(仮名)はハンカチを銜え、同情の涙を滝のように流し始めた。 「ひどいッ! //  こんなかわいい子に、そんな仕打ち……」  こんなかわいい子に、そんな仕打ち……。  天が許しても、おちんぽさまが許さないよっ…!」 //--  大げさな反応に、飛び猫・ニーヤは目が点である。 「“鋼鉄の処女”って、なに?」 //  なにがひどいのか、わからないと飛び猫。  なにがひどいのか、ニーヤにはわからないらしい。  そんなニーヤに、ハンス(仮名)はハンカチを銜えたまま、説明しだした。 //-- 「“鉄の処女”って、知ってる?」 「ば、莫迦にしないでよッ!」  知ってて当然とばかりにいわれ、ニーヤはフンッと鼻息を飛ばした。 「大昔の拷問器具でしょ?」 「そうそう、中にトゲトゲがあって……。  て。ちが〜うッ!」 「ナニ、関西芸人のマネしてんのよ」 「最初にボケたのは、飛び猫でしょ。  “鉄の処女”はね、処女膜が異常に固いというか、厚いというか…、そういう、かわいそうな女の子の俗称なんだよ」 「なに照れてんのよ」 「いや、なんか、マジで解説すると、なんかね」 「つまりこういうこと?  アクアは“鉄の処女”よりも、もっと固い“鋼鉄の処女”にされたってこと?」  アクアは真っ赤な顔を隠したまま、コクリとうなずいた。 「……あの女なら、やりそうなことだわ」 「知り合い?」 「知らない、知らない、知りたくもない」  ブルン、ブルンとニーヤは首を振った。 「だから、わたしが悪いんです…。  王子さまは、あんなにやさしい方だったのに……」  アクアは、しくしく泣き続ける。 「ポッキリいったその日から、やさしい王子さまは、一転してサド王子に。  そんでもって、あなたを散々痛めつけたあと、ポイッと捨てたってワケね」  飛び猫・ニーヤは腕を組み、誰に対してか鼻息を飛ばした。 「わたしが悪いんです……」 「痛かったでしょ?  ツラかったでしょ?」  ハンス(仮名)は、滝のように涙を流した。 「ありがとう、ハンス(仮名)。  でも……王子さまがいいのなら、それでわたしはいいの」  アクアはしおらしく、頬を染めた。 「かわいいよぉ〜。しおらしいよぉ〜」 //  ただ、ただ、感涙するばかりのハンス(仮名)である。  感涙するばかりのハンス(仮名)が、ポツリと呟く。 //-- 「姫さまも少しぐらい、こういう風にしてくれたらなぁ……」 「なんですって?!」 「だ、だって姫さま、いつもなんか……こう……」  ニーヤはハンス(仮名)の胸ぐらを掴んで睨み、ハンス(仮名)は顔を背けてしどろもどろ。 「なんか、なんだってのよ?」 「…木で鼻をくくったような、しゃべり方なんだもん」 「当たり前でしょ!  誰がアンタみたいなエロガキに、しおらしくしゃべるもんですかッ!!」 「ひどいなぁ……」  ニーヤが飛ばした唾を、ハンス(仮名)は顔から拭い拭い。 「ボクだって、“元”王子だよ?  なんか、扱いが全然違うんだもんなぁ〜。  どう思う? アクア?」 // {{ref_image aqua_sml_h_up.jpg,アクアの入り江}} //-- 「ハンス(仮名)は愉快だわ」  クスリと微笑むアクアに、ハンス(仮名)はデレッと鼻の下を延ばす。 「それってさ〜、好きってこと?」 「さ、さぁ……」 !■入り江の帰り道、ハンス(仮名)は首を傾げていた。 {{ref_image BG10a_80.jpg,pic}} //-- 「でも、なんか、腑に落ちないなぁ……」 「なにがよ?」 「海綿体断裂、および恥骨骨折」  いきなりな言葉に、飛び猫・ニーヤは赤くなった。 「そ、それがどうかしたの?」 「アクアはいったよね?  王子はやさしく迎えてくれたって。  でもやさしい王子が、処女相手にいきなりブチかますようなこと、するかな?」 「し、知らないわよ。そんなこと…」 「入れた時点で痛くて、フツーならポッキリしないでしょ?」 「…いわれてみれば、そうよねぇ……」 「う〜ん、怪しい…海綿体断裂…恥骨骨折……」  マジな目をして呟く、ハンス(仮名)。 「……」 「どうしたの、飛び猫? 赤くなったりして?  あ、もしかして……欲情した…?」 「なんてこというのよ、レディに向かってェ!!」  別の意味で、飛び猫・ニーヤは真っ赤になった。 //{{counter2 mer03Count}}