!!!首輪をした歌姫 {{category 本編,鋼鉄の人魚・アクア,nolink}} !■今日も今日とて、ハンス(仮名)は人魚を捜し求めていた。 //{{ref_image BG00a1_80.jpg,pic}} {{ref_image BG10a_80.jpg,pic}}  {{ruby "捕まえる","ハントする"}}獲物を捜すともなく捜し歩き、ハンス(仮名)は人魚を捕まえるための御札を不思議そうに見つめる。  そこには不可思議な絵文字で、魔方陣が描かれているのである。 「ねぇ、ねぇ、ニーヤ?  これ、なんて書いてあるの?」 「“高給確約、美女優遇”」 「……じゃ、こっちは?」 「“人魚急募!! 一切面談ッ!”  人魚の文字で、そう書いてあるの」  ハンス(仮名)は目をパチクリ。 「なにソレ。  まるで求人広告だね」 「だってそうだもの。  奴隷とはいえ、主人を選ぶ権利はあるし、ちゃんと雇用契約も結ぶのよ。  虐待されれば申し立てて、契約も破棄できるし。  だいたい、暴力ふるって人魚を捕まえるなんて、ハンターの風上にもおけないわ。  だからそういう甘〜い言葉で、人魚を誘惑するの。  わかった?」 「ふ、ふ〜ん、人道的なんだね…」  マーメイド・ハンター。その実、求人広告のサンドイッチ・マン……。 //// 「当たり前じゃないっ!  人魚は牛馬みたいな、家畜じゃないんだもの。  奴隷は単なる身分と職業よ。  戸籍のない人間と同じにね」  ニーヤはおかしそうに笑うと、フッと溜め息をついた。 「でも、昔は相当、ヒドかったらしいわ。  ギルドができてから、かなり改善されたんだって。  りりんがいってたわ」 「そうなんだ」 「お陰で今でも、ムリヤリなハンターがいるけど。  そういう輩に限って、上玉捕まえてくるのよね…。  だからギルドも、多少のことには目をつぶっちゃうのよ。  困ったモンだわ…」 「ムリヤリって…?」 「ムチでしばいたり…縄でキツク縛ったり…ロウソクとか…。  …その…ムリヤリよ…」  ゴニョゴニョ、ニーヤは言葉を濁した。 //  それがえっちなことであるのは、なとなくわかる。  いやよいやよもなんとやら。  ムリヤリなのかは、怪しいものである。  肩をすくめると同時に、ハンス(仮名)にはちょっと納得するものがあった。  なぜか体臭のキツイときに、人魚を捕まえることが多いような気がしていたのである。  それも朝勃ちのスゴイときと、満月が近いときに。  人魚も大抵、身を火照らせた感じだ。  貞操帯がなく、ニーヤがいなければ、そのままえっちしてしまうであろうくらい、ムンムンと女のフェロモンを振りまいて現れるのである。  つまりは発情した人魚が、ハンス(仮名)の匂いに釣られてフラフラ寄ってくる、というコトなのであろう。 ///--  ハンス(仮名)はフッともうひとつの疑問を思い出し、自分の股間に貼りつけた、魔物退治の御札のようなものを指差した。 ////-- // 「ねぇ、ねぇ、じゃ、これは?」  ハンス(仮名)の差したものを見つめると、飛び猫・ニーヤは真っ赤になった。 「ねぇ、ねぇ、これはなんて書いてあるの?」 「う、うるさいわね」  しつこいハンス(仮名)に、ニーヤはプイッとそっぽを向いた。 「あ、わかった。  読めないんでしょ?  恥ずかしがらなくてもいいんだよ。  もともと文盲率が高いんだし、ニーヤは猫なんだから、読めなくて当然だよね〜♪」 「ば、莫迦にしないでよッ!  読めるわよ、そのくらい!」  ハンス(仮名)は目を弓なりに曲げ、にへら〜、と開いた口で不信を隠さない。  そうまでされると、読まないワケにもゆくまい。  ニーヤは苦々しげに、ハンス(仮名)を睨んだ。 「と、当方…き、巨根なり。み、蜜壺大満足……」 「ふ〜ん。まだ続きがありそうだね」 「じゅ、熟女…恍惚。し、処女…も、悶絶……」 「なるほど…。  で、意味は?」  ぐっと、さらにニーヤは赤くなった。 「あれ〜? もしかして、わかんないの〜?  別に恥ずかしがらなくてもいいんだよ。  猫なんだもんね〜♪」 「そのテにのるかッ!  この変態エロガキ〜ッ!」  飛び猫が、ハンス(仮名)のスネに囓りついた。 「ぎゃ〜ッ!」 // {{ref_image BG04a_80.jpg,pic}} //--  バサッと草むらに倒れ込むと、そこには入り江があった。  静かな歌声が、そよ風に流れる。 //  その美しいハミングに目を向けると、ひとりの人魚がいた。  その美しいハミングに目を向けると、引き潮で頭を出した岩礁に、ひとりの人魚がいた。 //--  薄紫の鱗を煌めかせ、楽しげに水と戯れる彼女は、突然の闖入者に気づいていない。  平和な歌声と、静かな波音…。  まぶしい日差しと、均整のとれた肢体…。  しばし見とれるハンス(仮名)。  その無垢な瞳が、少しずつ大きくなった。  彼女の背中に、痛々しい傷跡のついた、紋章を見つけたのだ。 //  平和な光景に似つかわしくないそれは、一転して残酷な現実を見せつけた。  平和な光景に似つかわしくないそれは、一転して残酷なモノを見せつけられた思いだった。 //-- 「ねぇ!」  ハンス(仮名)が声をかけると、歌姫はハッと息をのんだ。 // {{ref_image aqua_obie.jpg,アクアの入り江}} //--  おだやかにうち寄せる波音。  ハンス(仮名)が二の句を次ごうとした瞬間、彼女は波間に飛び込み、大きな飛沫を上げた。 「待って!」  走って後を追う、ハンス(仮名)。  水の抵抗もなんのその。ざぶざぶと波を蹴り上げて進み、いきなり海に吸い込まれた。 「ハンス(仮名)ッ!」  飛び猫の叫び声が水音で消された。 (ゲゲッ! 遠浅かと思ったら、急に深くなってる!!)  山育ちのハンス(仮名)を、川は許してくれても、海はやさしく迎えてくれなかった。  手足を必死で動かすが、服や装備の重さで、思うように浮かび上がれない。 // (そういえば、ボクって海は初めてだったな……) (そういえばボク、海水浴は初めてだったな……) //--  などと、息苦しさの中で冷静に思ってしまう。  そしてゴボッと最後の一息が飛び出ると、ハンス(仮名)の気は遠くなった…。 「ハンス(仮名)ッ!」  気がつくと砂浜の上。  飛び猫とさきほどの歌姫が、心配そうに覗き込んでいた。 「まったく!  泳げないクセに、海の中まで女の子追いかけるなんてッ!!  アンタ、ホントに莫迦ねッ!!」  ぶんすかの飛び猫の隣で、歌姫が胸を撫で下ろす。  状況からすると、溺れた処を歌姫に助けられたらしい。 // {{ref_image aqua_up.jpg,アクアの入り江}} //-- 「大丈夫?  あそこは急に深くなるから」 「ありがとう」  そういうと、ハンス(仮名)の目がうるうるした。 「男のクセになに泣いてんのよッ!」  飛び猫が、ぺしん!と頭を叩く。 「だって、だって……ひさしぶりなんだよ〜。  こんな優しい扱いうけるのぉ〜。  人を疫病みたいに、触るとウツるとか、妊娠するとかぁ〜」 「自業自得でしょッ!」 「あの…、なにか、伝染病でも持ってるの…?」  少々、たじろいで歌姫が聞いた。 「そうね。  ビョーキともいえなくないわね」 「やめてよ、飛び猫っ!  せっかくの心のオアシスを、コンクリートで基礎工事するようなマネしないでよぅ〜」  いいつつ、ハンス(仮名)は歌姫に抱きついた。 「アンタには姫さまがいるでしょッ!  離れなさいよッ!  女だったらなんでもいいの、もうッ!!」 「やだい、やだい〜!」  飛び猫はハンス(仮名)の首根っこを引っ張り、ハンス(仮名)はダダっ子のように歌姫に抱きつき。  歌姫は困ったように苦笑を浮かべた。 「へぷしっ!」  ハンス(仮名)がかわいらしいクシャミをすると、歌姫はクスリと笑った。 「体が冷えたのね」  いわれてハンス(仮名)は、ブルッと体を震わせる。 「うん。お天道様はあったかいのに、なんか、底冷えするみたいだよ…」 「ここは寒流が流れ込むから、水がすごく冷たいの。  服を脱いで、早く体を乾かした方がいいわ」 「うん。そうするよ…へぷしっ!」 「うふふ。お大事にね、ハンス(仮名)!」  歌姫は微笑を残すと、再び波間に消えた。 //{{counter2 mer03Count}}