!!!ピアスの挑戦状 {{category 本編,人魚解放同盟のピアス,nolink}} !■ここは湖に張り出す、人里離れた漁師小屋。 {{ref_image lo_houseB01_c.jpg,pic}} 「ごっはんッ♪ ごっはんッ♪」  ナイフとフォークを鳴らして、けたたましく催促をする、ハンス(仮名)と飛び猫。 「うるさいわねぇ。  もうちょっとでできるわよ!」  鍋をまぜまぜ、ピアスがため息をつく。 「もう…。  なんであたしが、敵のコイツらに夕飯作ってやんなきゃなんないワケ…?」  それは遡ること、数日前…。  ハンス(仮名)たちが、偶然、この漁師小屋を見つけたのである。  聞けば、道に迷って数日、なにも食べていないらしい。  頃はちょうど、お昼時。  かぐわしい匂いにツラれ、ピアスのアジトへ辿り着いた、というコトらしい。  実際には偶然でもなんでもない。  湖に住むピアスが、“湖の人魚”だったのは当然。  “湖の人魚”のウワサを耳し、ハンス(仮名)が湖へやってくるのは必然。  道に迷ったのは、ただの粗忽。 //  人魚がピアスだったのは、月光石のイヤリングをなくしたせい。  ただそれだけのことである。 //  まぁ、ピアスの豊かすぎる胸に紋章を見つけたのは、単なる役得…いや、偶然ではあるかもしれない。  まぁ、水浴び中のピアスと、その奔放すぎる胸に紋章を見つけたのは、単なる役得…いや、偶然ではあるかもしれない。 {{ref_image ps_mizu.jpg}}  まったく。貧富の格差はどこにあるのか、わからないものである。  それはともかく。  腹ぺこハンス(仮名)と飛び猫は、強引に上がり込み、飯まで勝手に喰らいだす始末。  呆れ返るピアスではあったが…。 「ピアスって、見かけによらず、料理がうまいんだね!」 //  な〜んて、口の周りに食べカスをつけて無邪気に褒められると、乙女心はなんとも面はゆい。  な〜んて、口の周りに食べカスをつけて、無邪気な笑顔で褒められると、乙女心はなんとも面はゆい…。 「み、“見かけに”は余計よ…。  食べすぎても、胃薬あげないからね?!」  な〜んて、ついついおかわりを注いで、胃薬まであげてしまったのである。  思えばそれがマズかったのであろう…。  以来、ハンス(仮名)たちは、放し飼いの犬のごとく、メシ時に決まって現れるようになり。  いつのまにかピアスは、二人と一匹分のご飯と胃薬を作るようになっていた…のである。 //  誰も訪ねることのない、山の中。  人魚解放同盟と息巻くも、その実メンバーはピアスだけ。  話し相手欲しさから、そうなるのも無理からぬことではある…。 //-- ////== {{ref_image ps_evning_jt.jpg}} 「ごっはんッ♪ ごっはんッ♪」 「あ〜ッ! もう、あったまにきた!」  ピアスは怒りを爆発させると、テーブルのハンス(仮名)たちに振り向いた。 「ハンス(仮名)! アンタ、自分の立場がわかってるの?!  あたしはアンタの紋章を、アンタはあたしの紋章を狙ってる、いわば敵同士なのよッ?!」 「そうなの?」 「ごはん食べにきてるだけよね、あたしたち」  顔を見合わせる、ハンス(仮名)と飛び猫。 「だ・か・らッ!  そうじゃないでしょッ!」 「ていうか。  ピアス、紋章持ってたんだね!」  人、コレを墓穴という。  ハンス(仮名)は奔放すぎるおっぱいばかりに気を取られ、紋章はまったく印象に残っていなかったらしい。 「む、ぐ、ぐぐぐ……」  ピアスは自分に怒ったものか、能天気な極楽トンボに怒ったものか、怒りを籠もらせ真っ赤になった。 「ハンス(仮名)!!」  びしッ! と、エプロン姿のピアスは、おたまの先をハンス(仮名)に向けた。 {{ref_image ps_evning_up.jpg}} 「あんたに挑戦するわッ!」 「挑戦って?」 「あんたから、紋章を奪い取るっていってるの!」 「そんなことできるの?」  隣の飛び猫に聞いてみる。 「できるんじゃない。  人間には正銘なんてないから、わりと簡単ね」 「勝負よ、ハンス(仮名)ッ!!  ……もっとも。  あたしの正銘を知らないんだから、あんたには分の悪い勝負だけどね」  くすくす、ピアスはいじわるく笑う。  もうすでに、勝った気でいるようである。  対して飛び猫の返事は、実にアッサリしたものだった。 「ムリよ」 「なにがムリなのよッ!」  張り上げた声に、その豊かすぎる胸がプルンと揺れた。 「ハンス(仮名)、いってあげなさい。 //  あなたの本名」  あなたの姓名」 //-- 「でも」 「大丈夫。  どーせ、憶えられないわよ。  頭の栄養、ぜ〜んぶ、乳にまわってるんだから」 「キーッ!! むかつくこの野良猫ッ!  自分には満足な胸もないくせにッ!」 // {{size 4,"「あるわよ、ここんとこにッ!!"}} 「あるわよ、ここんとこにッ!! {{size 5," 6つもッ!!」"}}  小さな突起しかない胸を、自慢気に指さす。 「わかった、わかったからッ!」  泥沼になりそうな雲行きを感じると、ハンス(仮名)はやけくそ気味に分け入った。  名前なんてどうでもいいから、早くごはんが食べたかったのである。 「いい? 一度しかいわないよ?」 「あんたの腐った名前なんか、一度で十分よ」  それを聞いて、ハンス(仮名)はスゥっと深呼吸…。 「ハンス・ド・ロドリゲス・サルドバール・ラ・ゲルマン・フール・ラピス・アンク・アル・ウシャニパド・ラ……」  延々とつづく国名、称号、属称、家名……。  聞くほどに、頭の垂れる、名前かな。  最初は頷きながら聞いていたピアスも、だんだん、うんざりしてくる…。 「……(仮名)が、ボクの名前。  憶えた?」 「あ、当たり前じゃない……。  え〜と、ハンス・ド・ロ、ロ……」 「ほうら、見なさい!」  勝ち誇って、飛び猫が胸をはる。  それを横目に、しどろもどろにピアスは呟き続ける。 「…ねぇ、ピアス」 「黙っててよ!  忘れちゃうじゃないッ!!」 「…コゲくさいんだけど……」  ハッと思いだすと、ピアスは鍋をかきまぜはじめた。  ブツブツ、呟き覚えようとしている後ろ姿が、なんとなく哀れである。 「ザマァみなさい、乳オバケ!」  飛び猫・ニーヤはピアスにアッカンベー。 「ニーヤはいえるの?」  ハンス(仮名)が聞くと、ニーヤは当然とばかりに鼻を上に向けた。 「当たり前じゃない。  不本意とはいえ、パートナーなのよ、あたし。  いい?」  ニーヤは、すぅっと深呼吸…。 「アンタの名前は、ハンス――  ……以下略よ」  ずる。 「オーホッホッホッホ!  あなた、パートナーのクセして、相手の名前も覚えてないの?  やっぱり貧乳は、オツムも貧しいのね」 「なんですってぇ?!」 「…コゲてる、コゲてる」  ハッとピアスは鍋に戻る。 「でも。ピアスのいうことも、もっともだよ」 「な〜によ!  アンタもあたしが貧乳だっていうのッ?!」  飛び猫はホレホレと、胸の6つの突起を見せつける。 「それももっとも…じゃなくて、ボクの名前。  ちゃんと覚えられない?」 「なんであたしが、そんな面倒くさいもん、覚えなきゃなんないのよ。  あたしは別に、アンタの紋章なんか欲しくないし、アンタと寝る気もないわよ」 「いや、まあ、そうだけど…」  そうではあるが…、な〜んとなく、もの寂しいのである。 「ほら、必要なときがあるかもしれないでしょ?  助けを呼ぶときとかさ。  ハンス(仮名)だけじゃ、別のハンスがきちゃうかも知れないでしょ?」 「なによ、それ。  あんたは、“ただのハンス(仮名)”!  それで十分ッ! わかった?!」  ニーヤはキッパリいうと、ピアスに顔を向けた。 「ごはん、まだなの? デカ乳女ッ!」  ピアスがドンっと、テーブルに鍋を置いた。  にっこり笑った額には、しっかり青筋が立っている。 「できましたわよ。  ミルクたぁ〜っぷりのクリームシチュー。  これで貧乳治してね、洗濯板ッ!」 「なんですってぇ〜ッ!  この乳垂れホルスタインッ!」 「ムッキーッ!  ひがまないでよ、ヒステリー猫ッ!」 「いっただっき、ま〜すッ!!」  喧噪な小屋の外で、フクロウが一声鳴いた。 //{{counter2 mer03Count}}