!!!インターミッション(森の人魚さん) {{category 本編,人魚解放同盟のピアス,インターミッション,nolink}} !■ハンス(仮名)とニーヤは、山道を歩いていた。 {{ref_image BG10a_80.jpg,pic}}  “湖の人魚”のウワサを耳にし、ハンス(仮名)が行ってみようといいだしたのである。  聞けば、その身体に紋章を目にした者もいるという。  ならばと渋々、同行する飛び猫・ニーヤであるが…。 「人魚は海の者よ。  こんな山の中にいるワケないじゃない!」  半信半疑どころか、真っ向否定である。 「でも、山クジラだっていることだし」 「い・な・い!」 「人魚屋のおやじさんの情報だよ?」 「いないってば」 「……いた」 「いないわ…よ…」  山道のド真ん中に、人魚がいた…。  どうしたものか、水場も遠い坂道に、とれたてピチピチ、ジタバタとしていたのである。  ハンス(仮名)はニーヤと目を見合せ、その足を早めた。  その人魚は、かなりの上玉に間違いがない。  木漏れ日に光る緋色の鱗、シナを作ったその背中は美しく、続く腰周りは大きく、なんとも色っぽい。  うまく{{ruby "捕まえ","ハントでき"}}れば、かなりの高額になるハズである。 「ねぇ、ねぇ、お嬢さん? ギルドで売られてみない?  いまならもれなく、3パーセント還元だよ〜」  声をかけると人魚は、ビクンっと飛び上がった。 「あんた、いつから訪問販売員になったのよ…」  そういって振り向いた顔は、よくよく縁深いものであった。 {{ref_image ps_mori-1.jpg}} {{size 4,"「ピアス?!」"}}  その顔はたしかに間違いない。  しかしいつもと違って、その下半身は人魚そのもの。 「ピアスって、人魚だったの?」 「そうよ。わるい?」  ピアスはいかにも不機嫌そうである。 「じゃあさ、ギルドで売られてみようよ〜。  ピアスなら、すご〜い値で買ってくれるよ?」 「あんた、ケンカ売ってるの?  あたしは、ギルドに反抗してる者よ?」 「ああ。そういえばそうだったね。  生花農業組合の…」 「人魚解放同盟っ!」  そう怒鳴ると、ピアスはニーヤをキッと睨んだ。 「ちょっと、そこの化け猫!  あんた、この色ボケにどんな教育してんのよ?!」  噛みつられた飛び猫は、これまた噛みつかんばかり。 // 「誰が化け猫よ?! //  “陸に上がったマヌケな人魚”のクセしてっ!」 「人聞きのわるいこといわないでっ!  あたしがいつから、下半身莫迦の調教師になったのよっ! //  “陸に上がったマヌケな人魚”っ!」  “陸に上がった人魚”っ!」 「好きでこうなったワケじゃないわよっ!!  タンポポ猫っ!」 「まぁ、まぁ、まぁ…」  泥試合を感じて、ハンス(仮名)が割って入る。 「あ。そうだ。  コレ、ピアスのだよね?」  娼館で拾ったイヤリングを差し出すと、ピアスはひったくるようにそれを取った。 「ど、どこで見つけたの?!」 「大事な物だったの?」  ハンス(仮名)はピアスの問いをさりげなくかわした。  娼館でピアスに会ったことは、飛び猫には内緒にしていたからである。 「ええ。すごく大切なものよ…」  素直に頷くと、ピアスはイヤリングを胸に抱いた。 「これには月光石が仕込まれてるの。  特別製だから、易々、手に入る代物じゃないわ」  なるほど。  そのお陰で、いつも人の姿でいられるというワケである。 「で。なくしたお陰でこの有り様。  片方だけだと、ふいに効果が途切れちゃうのよ。  気をつけてはいたんだけどね…」  ピアスはヤレヤレ…といった感じで、溜め息をついた。 「ピアスって、意外にドジなんだね」 「“意外に”は余計よ、ハンス(仮名)」  飛び猫がイジわるくたしなめるが、ピアスはイヤリングをつけるのに集中して、耳に入らなかったらしい。  つけ終わるとピアスは、耳のイヤリングを自慢げに見せびらかした。 「どう?」 「うん。よく似合うよ」  女性らしい、うなじの線がよく映える。  見とれるように見ていると、目にボヤけたような感覚があって、いつのまにか、ピアスの足ヒレはムチッとした太股の脚に変わっていた。 「い、一応、礼をいっておくわ。  あ、ありがとう」  スッと立ち上がると、ピアスは土汚れをはらい、目を合わさず礼をいった。  くびれた腰から盛り上がる尻も、胸に負けじと肉付きが良い。  両の脚はムッチリとした曲線を描き、とてもソソられる。 「イヤリングを拾ったのも、ココで見つけられたのも、あんたでよかったわ。  他のハンターだったら、どうなってたやら…」 {{ref_image ps_mori-2.jpg}}  鼻の下を延ばす視線に気づき、途端にピアスは真っ赤になった。 「きゃ〜〜〜〜〜〜っ!!」  まるで少女のような、かわいらしい悲鳴が木霊する。 「この莫迦っ!」 「あぐぅっ!」  ガツンと、ハンス(仮名)の後頭部を飛び猫が叩き、マントを剥ぎ取った。 「前言撤回っ! あんたなんか死んじゃえっ!  このケダモノっ!」  前を隠して拳を振り上げるピアスに、飛び猫がマントを差し出す。 「コレで隠して」 「あ、ありがとう。助かるわ」  これが女の連帯というものか。  こういう時だけは、犬猿の仲も角を引っ込めるらしい。 「ホント、オトコってケダモノは、どうしょうもないわね」 「まったくだわ。気を許すと、すぐイヤらしい目で見るんだから」  それがオトコの習性なのだから、仕方がないのである。 「ヒドイよ…もう…」  ハンス(仮名)は泥に顔を突っ込み、ミジメな気持ちで涙を流していた。  大切なイヤリングを届け、お礼のキスぐらいあってもよかろうに…。  不可抗力で、殴られるやら、罵倒されるやら、さんざん…。  それでも何もいえないのが、オトコの哀しい宿命であった。 //{{counter2 mer03Count}}