//番外02.6 {{category 番外02,本文,nolink}} //-- !!はじめての計画・2 //BG廊下 {{ref_image BG27a_80.jpg,bgPic}} //--  好美と良子は手を繋ぎ、ふたりで校舎内を歩いていた。 「どこにいるんだろ…?」 「うん…」  頼りのゆり先生が見つからない…。  当てどもなく捜し歩いていると、ふたりは好美の教室に通りがかった。  廊下の壁一面に貼られた、幾枚もの習字。  それはかすかな空気の流れにも、蔦の葉のようにゆらめいた。  良子はその中の一葉に目を惹かれた。 「あ。これ、こよしちゃんのだね!」  コンクールかなにかで賞をもらったらしい。  金色のシールと、リボンの花がつけられていた。 「字、うまいんだね〜」  好美はおしとやかに微笑んだ。 「習字は、幼稚園の頃からやってるから」 「へ〜」 「お陰で書記にされちゃった」 「あはは! あるよね〜、そういうの〜…」  調子よく相槌を打った良子は、「ん?」と首を捻った。 // (書記…? //  学級委員に、そんな役あったっけ…) //--  そしてすぐに、「あっ!」と、声を上げた。  朝礼や学校行事で、好美が生徒会の子たちと並んでいたのを思い出したのだ。 「書記って、"生徒会の"書記?!  やっぱり、頭いいじゃん〜」 「そんなことないよ。  押しつけられてなったみたいものだもん」  初等部の生徒会なんて、所詮、人気投票みたいなものだ。  他に立候補がいなければ、それで簡単に決まってしまう。  謙遜でなく実際そうなのだが、それでも良子は称賛の声をあげてくれた。 「そんなことあるよ〜。  すごいなぁ〜、こよしちゃん〜」  くったくもなく褒められると、好美は誇らしくもあり、気恥ずかしくもあった。 「よ、よしちゃんの教室は隣だよね?」  そういって好美は、良子の教室に足を向けた。  話をそらしたかったのと、良子のことをもっと知りたかったからだ。  無人と思われた教室に入ると、小さな留守居役がかわいい声で挨拶をしてくれた。 「インコ飼ってるんだね」  好美が小走りに鳥籠へ近寄る。  青いセキセインコは首を傾げて、再びかわいい声を聞かせてくれた。 「うん。あたしが世話してるの。  生き物係なんだ」  良子が鳥籠を一緒に覗き込み、そう教えてくれた。  好美は鳥籠の格子に人指し指を入れた。  するとインコは、首を傾げながら近づき、その指先にジャレつきはじめた。  そうされることを、好美は知っていたみたいだ。 「インコ好き?」 「うん。家で文鳥飼ってるの。  桜文鳥。手乗りなのよ」 「へ〜。かわいいね!」 「今度、遊びに来て。手に乗せてあげる」 「ホント?!」  ニッコリ頷き返すと、良子も笑顔を返してくれた。  そしてふたりで鳥籠に目を戻すと、良子が呟いた。 「あ。水がなくなってる…」  水浴びに使ったのだろう。  鉢にもプラスチックの水入れにも、ほとんど水がなくなっていた。 「ちょっと水取りに行っていい?」 「うん。わたしも行く」 //BG廊下 {{ref_image BG27a_80.jpg,bgPic}} //--  ふたりは鉢と水入れを取り出すと、手洗い場へと向かった。  そして手洗い場で文鳥の話しをしながら、鉢と水入れを洗っていると、廊下の向こうから男子たちが近づいてきた。  男子たちは五、六人くらいのグループ。  好美たち同様、体操着のシャツに上履きという出で立ちで、中には全裸の子もいるようだった。  ふたりはすぐに、男子たちの下半身へ目がいった。  しかし残念ながら、おちんぽの大きさはよくわからない。  ふたりは仲良く落胆のため息をこぼした。  男子たちの背丈は、どの子も好美たちの肩ほどもなかった。  どうやら、みんな下級生らしい。  それを思うと、少し珍しい光景ではあった。  なぜなら下級生が、高学年の階まで来ることはまずないからだ。  おそらく探険家気分で、人気のない校舎を歩き回っているのだろう。  普段となにがちがうでもないが、休日の校舎には物珍しい雰囲気があるものだ。  そこらへんの気持ちは、好美にもなんとなくわかる。  聞くともなしに様子を伺っていると、男子グループは歩きながら、なにやら言い争っているようであった。  正確には、軽いじゃれ合いといった感じで、一人の男の子をみんなでからかっていた。 {{size 4,"「え〜?!"}} {{size 4," まだドーテイなのかよ〜?!」"}} 「う、うるさいなぁ…」 「ドーテイってか、ソーローなんだよな?」 「う゛〜…。  モンハンの新しいの、貸さないぞ!!」  男の子はひどく気にしているようで、少し可哀相なくらいだ。  しかし、早漏といえば、早漏なのだろう。  過敏に感じすぎるのだ。  撫でられるだけでイキそうになったり、イッてしまったり…。  我慢して我慢して、いざ挿れようすると、おまんこの口に触れただけでイッてしまう…。  相手の女の子はそれに呆れて、どの子も逃げていってしまう。  お陰で一日たっても、まだ未経験…。  聞こえる話しからすると、そういうことらしい。 {{size 4,"「トイレっ!」"}}  男の子はそう怒鳴って、一人、トイレへと駆け込んだ。  好美と良子は水を汲みながら、そんな様子を見るともなし、聞くともなしに、そば耳を立てていた。 「こよしちゃん…」  なにやらピンとひらめき、良子が好美の袖をひっぱった。  そして好美の耳に顔を近づけ囁く。 「あたしに考えがあるんだ」  イキやすいというのは、ある意味、好都合。  挿れるのがコワくなっても、出させてしまえばいい。  それにそんなにイキやすいなら、ムリヤリされてしまうこともないだろう。  第一、相手は背丈も延びていない下級生ひとり。  こちらは女の子なれども、上級生ふたり。簡単に撃退できそうである。 //  提案を聞くと、好美はにっこりと頷いた。  提案を聞くと、好美はメガネの瞳をにっこりと頷いた。 //--  良子はなかなか、いいところに目がつく。頼もしいアイデアマンだ。  ふたりはしばらく、手洗い場で男の子が出てくるのを待った。  他の男子たちは、ちょっと離れたところにかたまっていた。  ときおり好美を見て、ニヤニヤと肘でコヅきあったりしている。 (やだなぁ、もう……)  好美はクラスの男子を思い出し、シャツの裾をひっぱった。  トイレから出てきた男の子に、まず声をかけたのは良子だった。  濡れた手をシャツで拭うその子に、ハンカチを差し出しながら、ニッコリと笑いかけた。 「ねぇ、名前なんていうの?」  男の子は少しびっくりしたようだった。  それでもハンカチを受け取ると、ドモりながら名前を教えてくれた。 「こ、{{ruby "越中 章一","こしなか しょういち"}}」  シャツの胸に、「3−1 越中 章一」とあった。  二年も年下とは、どうりで背が低いわけだ。  それでも学年からすると、背は低い方だろうか…。  髪は短く、男の子らしい髪型。  顔を赤らめてはいたが、気弱なタイプでもなさそうだ。  下半身はシャツの裾で隠れ、足には白い靴下と洗ったばかりの上履き。  好美は章一という男の子を観察しながら、頭の中を言葉遊びでくるくる回転させていた。  越中 章一…。  越中しょういち…。  えっちゅうしょういち…。  えっちゅぅしょう…。 //  そして好美は、ニッコリと微笑んだ。  ニッコリと好美は微笑んだ。 //-- {{size 4,"「“えっちしよう”…ね!」"}} //※ 好美 微笑み