!!!はじめと佐藤さん // 教室・朝 //{{ref_image BG26a_80.jpg,bgPic}} {{ref_image 04itikawa.jpg,evPic}} //-- 「ねぇねぇ、鈴代くん!  体験倶楽部に入るんだって?」  次の日、登校してすぐに、市川さんが話しかけてきた。  三つ編みで、ウワサ好きの市川さん。  さすがに早耳だね。びっくりしちゃった。 「もう知ってるの?」 「うん! 隣のクラスはもう、知らない子いないわよ?」  市川さんは朝日みたいに、顔を輝かせた。 「さやちゃん先生と早川さんが、鈴代くんを取り合って、取っ組み合いのケンカのあげく、夕日をバックに握手したんだって〜?!」  あはは。どんな尾ひれがついたんだろ…。  ちょっと興味津々かも。 「口ゲンカくらいだよ。  それもちょっと言い合いしたくらい」 「あらそう…」  当事者のボクから、イロイロ聞きたかったんだろうね。  市川さんは拍子抜けしてた。 「倶楽部はいつから活動なの?」 「まだわかんない」 「メンバーは? 他に誰がいるの?」 「いまのところ、さやちゃんだけなのかな?」 「ふ〜ん」  ボクはランドセルから教科書を取り出しながら、矢継ぎ早の質問に答えた。 「あたしも、入ってみようっかなぁ〜」  市川さんは三つ編みの先をイジって、ふっくらの頬をほんのり染めてた。  なんだか片思いの花占いしてるみたい。  薄桃色のうなじに、ボクはドキンとしちゃった。  うん。そうなんだ。  市川さんは、ちょっとポッチャリ系。  だけど、たまに仕草がなんか色っぽくて、ドキンとさせられちゃうんだ。  うん。きっと将来、美人になると思うよ?  そんな風に見とれてたら、佐藤さんが教室に入ってきたんだ。 「おはよう〜」  眠そうな声で佐藤さんがいうと、市川さんはササッとボクから離れていった。 「おはよう、美代ちゃん!」 「おはよう、早苗ちゃん〜」  さっそく市川さんは、佐藤さんへさっきの話しをしたみたい。  ふたりの話しは聞こえなかったけど、たぶん、そう。だって、佐藤さんがボクの方を見てたから。 // 美代ちゃん {{ref_image 04miyo.jpg,evPic}} //--  佐藤さん、なんだか目が潤んでて、ほっぺたが真っ赤だった。  ボクと目が会うと、すぐに顔を背けちゃった。  うん。そうなんだ…。  {{ruby "佐藤 美代","さとう みよ"}}ちゃんとは、ギクシャクしたままなんだ…。  佐藤 美代ちゃんは、ボクのクラスの学級委員。  長い黒髪と広いおデコがチャームポイントの、恥ずかしがり屋でかわいい女の子。  本人は広いおデコを気にしてるけどね。  ボクは佐藤さんにずっと片思いしてて、体験教室で両思いになって、イロイロあって…フラれちゃったんだ。  それ以来、佐藤さんはなんだか、よそよそしいっていうか、避けられてるみたい。  ボクもなんとなく、話しづらい…。  「名前で呼んで」っていってくれてたのに、美代ちゃんがまた佐藤さんに戻って、あんまり話さくなった…。  ケンカしたワケでもないのに、なんか、ずっとケンカし続けてるみたいな感じ。  ハァ…。せめて片思いしてた頃くらいに、話せたらいいのに…。  あの時もあんまり話せなかったけど、いまよりずっとマシだよ。  うん。さやちゃんもまだ、仲直りできてないんだって。  さやちゃんと美代ちゃん、あんなに仲良しだったのにね…。  そうなんだ。ボクもさやちゃんも、仲直りは苦手。  二人とも、“仲直り”ってしたことないから、仲直りの方法を知らないんだ。  図書室の本にも、載ってないしね。  また三人で、夕食を食べたときみたいに、楽しくお話しできればいいのに…。  うん。そうなんだ。  佐藤さんのことも、ボクの悩みのひとつ。  体験倶楽部、ホテル探し、佐藤さんとの仲直り。  ボクって苦労性なのかな…。  ハァ…。ため息出ちゃうよ…。 {{metainfo}}