!!!はじめての生徒指導室  ボクとさやちゃんは、生徒指導室っていうところに連れて行かれた。  北側の狭い一室に、机がひとつ。資料の入ったロッカーと、折り畳み椅子が壁際に並んでた。  なんの部屋なんだろ? ボクははじめて入ったよ。 「取調室よ」  キョロキョロしてたら、隣に座ってるさやちゃんが、不機嫌そうに呟いた。 「取調室…?」  刑事ドラマのワン・シーンが思い浮かんだ。  つまり、小田先生が刑事さんよろしく、ボクらは延々、お小言を聞かされるんだね。  でも、お小言だけですむのかな…。  だって、授業を抜け出してえっちしてたんだよ? ものすごい重罪だよね…。  はぁ…。つくづく、ため息出ちゃうよ…。  サボるなんてはじめてだったのに、見つかっちゃうなんて、ホント、ボクって運がないよね…。  初犯ってことで、許してくれないかな…?  せめて見つかったのが、ゆり先生だったらよかったのに…。  わるいのは自分なのはわかるけど…ハァ…。  暗い気持ちでいたら、小田先生が生徒指導室に戻ってきた。 // {{ref_image 02.jpg,evPic}} //--  小田先生は、汚されたスーツを着替えて、いつものジャージ姿。  お化粧も落として、スッピンみたいだった。  いつもの小田先生っぽい。  先生は無言でボクらの向かいに座ると、怒った顔で腕を組んだ。  ボクはズボンが苦しくなって、思わず俯いちゃった。  うん。Tシャツが少し透けてて、ピンク色のブラがうっすら見えちゃってたんだ…。 「さて。ふたりは授業中に、あそこでナニをしていたのかしら?」  小田先生は静かな口調だったけど、ボクは何もいえなくて、ションボリうなだれた。 「先生こそ、授業中になにしてたんですか〜?」  さやちゃんがいうと、小田先生は目をパチクリ。 「いまは図工の時間だもの。  そうよね? 早川さん?」  図工の時間は、担任の先生じゃなく、美術の立花先生の受け持ち。  そしてさやちゃんの担任は、小田先生。  空いた時間に小田先生は、校内の見回りをしていたんだろうね。きっと。 //「……はい」 //  切り返されたさやちゃんは、しぶしぶ、返事をした。 「……」 //  切り返されたさやちゃんは、返事の代わりに、プゥっとほっぺたを膨らませた。  切り返されたさやちゃんは、返事の代わりに口を尖らせ、鼻に皺を寄せた。 //-- 「鈴代は? 何の時間?」 「音楽です…」  うん。音楽も、担任の先生じゃないんだ。  教室も音楽室に移動。  席は決まってないから、その時ごとに、親しい子同士で座ったりするんだ。  ボクは特にそういう子もいないから、一番後ろの端っこの、余った席に座ってた。  それで出席をとり終わってすぐに、さやちゃんが扉のスキマから、ボクを呼んできたんだ。  いけないことだとは思ったんだけど……誘われるまま、こっそり抜け出しちゃった。  でも、さやちゃんのせいにするつもりはないよ?  清太くんたちからサボッた時の話しを聞いて、ボクもやってみたくなっちゃったんだ。  だってボクだけ、そういう話しができないんだもの。  きっとさやちゃん、そんなボクに同情してくれたんだと思う。 //  ついこの間まで、ボクがひとりぼっちだったこと、よく知ってるから…。  ついこの間まで、ボクに友達がいなかったこと、知ってるから…。 //--  だから一回だけなら…って、ボクはそう思っちゃったんだ。 「で、サボッてえっちしていた、と」 「……」 「……」  ボクもさやちゃんも、なにもいえなかった。 「まぁ、ふたりが仲良くしたいのはわかるわ。  先生にも、そういう時期はあったもの。  でも、試しにやってみるとか、そんな年じゃないわよね?  やろうとしてることの結果を、考えるようにしなきゃ」 「ちゃんと気をつけてるもの」  仏頂面のまま、さやちゃんがいった。 「節度を考えなさい、そういってるのよ?  ホラ、鈴代の目を見てみなさい。 //  かわいそうに…疲れてクマができてるじゃない」  疲れが抜けずに、クマができてるじゃない。かわいそうに…」 //-- 「先生がストーカーしてるから、よく眠れないだけよ」  さやちゃんがいうと、さすがに小田先生もムッとしちゃった。 「鈴代の成績が落ちてるって、緑川先生から聞いてるわよ?  早川さんもそうね。  この間の漢字テスト、ひどかったわよ」 「でも、算数のテストはよかったわ。  ハジメと教えあったから。  ね? ハジメ?」 「う、うん…」  思わず頷いちゃったけど、大丈夫かなぁ…。  小田先生、かなり怒ってるっぽいよ? 「そういう問題じゃないでしょ。  もうすぐ高学年なのに…。  やっていいことと、わるいことの区別をつけなさいって、いってるの」 「あたしのポッチー食べたクセに…」  ああいえばこういう。  屁理屈なのはわかるけど、さやちゃんを改めて見直しちゃった。  うん。そうだよね。  ボクだったらなにもいえず、ションボリ謝るしかないもの。  やっぱり、さやちゃんはスゴイや。 「早川さん。あなたの言い分はよくわかったわ」  小田先生は、呆れたようにため息をついてた。 // 「でもまず、いうべき言葉があるわよね?」 「でも、自分が正しいと思うなら、まず、いうべき言葉があるわよね?」 //--  えと。なんだろ…?  ボクは思いつかなくて、さやちゃんを見ちゃってた。 「授業をサボッてわるかったです。  ごめんなさい」  さやちゃんがそういうと、ボクも慌てて謝った。 「ご、ごめんなさい…」  小田先生は、また大きなため息をついた。 「よろしい。  ちゃんと反省しなさいよ?」  小田先生はニコリともしなかったけど、ひとまず溜飲は下がったみたい。  「は〜い」ってさやちゃんの返事を聞くと、先生は怒らせてた肩を下げた。  それを見て、ボクもホッとひと安心。  うん。そうだね。  もっと厳しく怒られると思ったもの。  いつもみたいに、「校庭十周!」とかね。 「ところでふたりとも、えっちするの大好きよね?  サボッて、スルくらいだもの」  打って変わってニッコリ、小田先生は机に頬杖をついた。  まぁ、キライじゃないよね…えっちするのは。 「でね。先生、思うのよ。  ふたりとも、体験倶楽部に入らないかって」  ボクとさやちゃんは目を見合わせちゃった。 「体験くらぶ?!」  そんな部活動、あったっけ?  ボクは首を傾げ、さやちゃんは訝しげな目を先生に向けた。 「それって、体験教室とどうちがうんですか〜?」  ていうか、マンマな名前だよね…。 「さすが早川さんね。  話しが早くて、先生、助かるわ〜」  褒められたさやちゃんは、なんだか微妙な顔をしてた。 「ほら、体験教室に参加できなかった子って、いるでしょ?  そういう子ほど、無茶する傾向があるのよ」  ふーん。そうなんだ。 「あなたたちみたいに、暴走しちゃう子もいるしね」  あぅ…。 「それでね。えっちしたい子が、気軽に集まれる場所を作ろうと思ったの」  コホンと、先生は咳払いをした。 「正式には、“ドキドキわくわくを発見して、上手なセックスを体験する倶楽部”ね。  節度あるえっちを学ぶのが目的だけど。  他にもいろんな、ドキドキ、ワクワクなことを、初等部の純真な目で見つけ出すの。  きっとオトナになったら、いい思い出になると思うわ〜〜〜〜♪」  小田先生は瞳をキラキラ、星のように輝かせ、ボクとさやちゃんは、薄らさむい予感でゲンナリ…。  うん。そうだよね…。  絶対、思い出したくないものばかりになりそうな気がするよ…。  だって体験教室でも、恥ずかしいことがイッパイだったもん…。 「どうかしら?」 //  小田先生は、キラキラ、星の瞳を向けてきた。  どうって…先生…。  えっちするクラブって、クラブ活動っていうのかな…?  ていうか、わざわざクラブに入らなくても、えっちはできるし…。 「SOS団の方がしっくりくるんじゃない?」  さやちゃんは椅子の背に肘をのせて、頬杖をついてた。「まったく興味ナシっ!」っていいたげ。 「SOS団?」 「セックスを、おもいっきり楽しむ、さやちゃん先生による、団体」 //  くすっ。たしかにそうだね。  くすっ。たしかにそんな感じだね。 //--  ちなみに小田先生の名前は、“さやか”っていうんだ。だからアダ名が“さやちゃん先生”。 「つまるところ。  さやちゃん先生が、えっちしたいだけでしょ?  なんで、あたしたちが入部しなきゃいけないんですか〜?」 「優等生のふたりが入ってくれれば、他の子たちも興味をもってくれるでしょ?  早川さんは面倒見いいし。  鈴代は女子の間で、いま一番の注目株だしね」  そういって小田先生は、ボクにウィンクをした。  なんか、顔が火照っちゃった。 「先生が狙ってるだけじゃない…」  さやちゃんがブスッと呟き、小田先生はニッコリ。 「なにかいった? 早川さん?」  さやちゃんは椅子に座り直し、背筋をピンっと延ばした。 // 「あたし、もう新体操部に入ってます。 //  掛け持ちなんて、できません」 「あたし、もう新体操部に入ってます」 「あらあら。そうだったわね…。  掛け持ちじゃ、タイヘンよねぇ…」 「ですよね〜」 「どっちも、がんばってね!」 「だ〜か〜ら〜!  ムリですってっ!!」 「じゃ、鈴代だけでもいいわ」 「ちょっ――!」 「鈴代、クラブに入ってないでしょ〜?」  小田先生は机に身を乗り出すと、ボクの顔を覗き込んだ。 「タマには他の女の子と、シてみたいわよね〜?」 //  Tシャツの襟首から、おっぱいの谷間とピンク色の下着のレースが目に入って、ボクのおちんぽはコッソリ、ピョコンしちゃった。  Tシャツの襟首から、おっぱいの谷間とピンク色の下着が目に入って、ボクのおちんぽはコッソリ、ピョコンしちゃった。 //-- 「え、えっとぉ…」  返事と目のやり場に困って、ボクはモジモジ…。  そしたら、さやちゃんがピシャリといったんだ。 // 「フザけないでください! //  ハジメはあたしと付き合ってるんです!!」 「ハジメはあたし以外とえっちしません。  あたしと付き合ってるんです!!」 //  さやちゃんがピシャリというと、ボクは思わず聞き返しちゃった。 //  さやちゃんがピシャリといって、ボクは思わず、さやちゃんの顔を見ちゃった。  ボクは思わず、さやちゃんの顔を見ちゃった。 //-- 「え? そうなの?」 「そうでしょ?!」 「う、うん、そうだよね…」  グッとさやちゃんに睨み付けられ、ボクは背を丸めてちっちゃくなっちゃった。  でも傍目とちがって、ボクはうれしさでいっぱい。  だって、「付き合ってる」って、さやちゃんがいってくれたの、はじめてだもん。  ボクは頬が緩んじゃう気がして、それを隠そうと俯いちゃったんだ。 「まぁ、まぁ、痴話ゲンカはあとにして〜」 「痴話ゲンカなんてしてないですっ!」  小田先生がからかって、さやちゃんがなんかムキになってて。  ボクはなんか、じ〜んとして、「付き合ってる」って言葉を心の中で反芻しちゃってた。  そしたら話しは、ふいに終わりになってたみたい。 「入部するかどうか、ちょっと考えててくれる?  先生、その間に報告書、書いちゃうから」  って、小田先生がいってきたんだ。 「報告書…?」 //  目をパチクリして顔をあげると、小田先生は白い紙にボールペンを立ててた。  顔をあげると、小田先生は白い紙にボールペンを立ててた。 「この時間、生徒指導室でふたりになにをしていたのか。  報告するのは、先生の義務だもの」  さやちゃんが再び、険しい目で小田先生を睨んだ。 「なんて報告するの?」 「なんて報告したらいいかしら?」  先生は紙から目を放し、ボクらを見た。 「サボッたふたりに、教育指導をした。  って、正直に書いた方がいい?」  そしたら、どうなるんだろ…。  停学とかに、なっちゃうのかな…。 「先生としては、ふたりから倶楽部創設の相談を受けてた、ってことにしたいんだけど。  どう思う?」  それって…。 「先生、ズルイ!!」  大きな声をあげて、さやちゃんが立ち上がった。 「サボッてたって報告されたくなきゃ、倶楽部に入れってコトでしょ?!  それって、脅しじゃないっ!  やり方がきたないわっ!!」  真っ赤な顔のさやちゃんに、小田先生はニッコリ。 「あら。サボッてたのは事実でしょ?  先生がそれを発見したのも、事実。  黙っててあげようと思うのは、わたし“個人”の思いやりよ?」  そういうと小田先生は、ボクにその笑顔を向けてきたんだ。 // 「ねぇ? 鈴代は、どう思う?」 「さて。返事を聞かせてくれる?」 //-- // 「これだから、オトナって信用ならないのよ」 「これだから、オトナって信用ならないのよ…。  聖職者のクセして…信じらんない…!」 //--  さやちゃんはプンスカ、廊下を早足で歩いてた。  並んで歩くボクは、追いつくのもタイヘン。 // 「あたしのポッチー食べたクセに…。 //  ごちそうさまもナシなんて、信じられないわっ!」 「あたしのポッチー食べたクセに…ごちそうさまもナシなんて!  日本の教育は腐ってるわっ!!」  あはは。怒るトコはソコなんだ。 「体験倶楽部なんて、ダレが出てやるモンですかっ!  アンタも出ちゃダメよ?!」  うん。そうなんだ。  結局、ボクらは入部することになっちゃったんだ。  うん。そんなに嫌がることじゃないかもしれないけど…。  さやちゃんは、強制されることが大っキライでしょ?  ボクは人見知りが激しいから…知らない子たちに混じるなんて、とっても不安…。  それに二人とも、なんかワナにはめられたみたいで、すごく後味がわるかったんだ。 「でも…。  倶楽部に出なかったら、サボッたことを報告されて、停学になっちゃうかも…」  ピタッと、さやちゃんの足が止まった。 「他の子とシても、小田先生とは、えっちしちゃダメよっ!  いい? ゼッタイっ! ゼッタイだからねっ?!」  そうボクにいうと、さやちゃんは勢いよく、女子トイレのドアを開けた。  バタンッ!  って、ドアが閉まって、ついで中から…。 「こんなトコでえっちしてんじゃないわよっ!! 変態発情猫!!」  って、さやちゃんの怒鳴り声が聞こえた。  ホッと、ボクは胸を撫で下ろしちゃった。  うん。そうだね。  いつもながら、さやちゃんの癇癪ってスゴイよね。  ボクがターゲットじゃなくてよかったよ。  それにしても…。  みんなになんて話そう…?  ボクは知らず、ため息をついてた。  うん。実は事態は、ボクらふたりだけで済まなかったんだ。  それは“ホテル”のこと。  体験倶楽部の活動場所、体育館の舞台地下なんだって。  みんなの“ホテル”を、取り上げられちゃったんだ。  はぁ…ため息でちゃうよ…。 {{metainfo}}