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マーメイド04-1




【@右巻きソフトウエア】 「初・体験教室」 「初・体験倶楽部」 「怖くない怪談」 「ないしょのえろカタログ」

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FC2 Links: ファンタジー 官能小説 ロリ

ガンスと人魚姫


■人魚姫の玉室に入ると、そこにはさわやかな笑顔の男がいた。

「やあ、ハンス(仮名)」
「ガ、ガンス……!」
 年の頃はハンス(仮名)と同じくらい。
 高貴で端正な顔立ちは、誰から見ても、ひと目でどこかの王子と解る。
 どこぞの“元”王子とはえらい違いである。
「知り合い?」
「知らない、知らない、知りたくもない!」
 飛び猫の問いに、ハンス(仮名)はぶるん、ぶるんと首を振る。
「ひどいなぁ、ハンス(仮名)。
 何年も会っていないとはいえ、従兄弟じゃないか」
「従兄弟ッ?! ハンス(仮名)の?!」
 飛び猫の前足を取り、ガンスが微笑む。
「はじめまして。
 僕はハンス(仮名)の従兄弟のガンス。
 ハンス(仮名)?
 こちらのかわいいレディを紹介してくれないかな?」
「ま、かわいいだなんて…」
 ポ〜とノボせる飛び猫・ニーヤは、両目がハートマーク状態である。
「飛び猫。陰険。いじわる。ヒステリー。噛みつき魔」
 ハンス(仮名)が憮然というと、ガンスは大げさに目を丸くした。
「そうなの?」
「そんなことをするのは、姫さまにワルサする無粋な男にだけ。
 あなたのような素敵な方には、おやすみのキスをするくらいですわ」
「こんな風に?」
 にっこりと微笑み、手に取っている前足にキスをする。
「失礼。あまりにもあなたが健気なものだから」
「そんな…」
 ジンマシンの出る思いで、ウゲーッとハンス(仮名)が舌を出す。
 しおらしく俯く飛び猫が、ハンス(仮名)の向こうずねを蹴った。
「イタイッ!!」
「ほほほほほッ!」
 スネを抱えるハンス(仮名)を、飛び猫は笑ってゴマかす。
 ガンスはクスリと微笑み、人魚姫へ目を向けた。
「こちらがウワサに名高い、人魚姫だね?」
「そうだよ。
 “意識を封印”されていて、婚約者のボクでも、滅多に話しができないんだ。
 残念だねぇ〜〜〜
 片足でハネながら、ハンス(仮名)は“婚約者”と“残念”を特に強調した。
「ひと目だけでも、と思って来たんだが…。
 この美しさを目の当たりにすると、欲が出る。
 一言だけでも交わしたかったな…残念だよ…」
 肩を落として、ガンスが呟いた。
「はっはっはっは。
 ホントに残念だったな、ガンス〜。
 なんてったって、婚約者のボクでさえ……」
 ゆっくり目覚める人魚姫に、ハンス(仮名)の言葉は蝋燭の火のように消えた。
「おおッ!」
 目覚める人魚姫に、ガンスはオーバーな感嘆の声をあげた。

「こちらの方は? ハンス(仮名)?」
 飛び猫が、ぴょんと人魚姫の膝に飛び乗る。
「ハンス(仮名)の従兄弟、ソンデ国のガンスと申します。人魚姫さま」
 ガンスが人魚姫の手を取り、その甲に軽くキスをした。
 しかし飛び猫は、ガンスになにもしようとしなかった。
 普段なら手を取っただけで、牙を向いて飛び掛かるというのに…。
「以後、お見知りおきを」
 キラリとガンスの前歯が光る。
「覚えておきましょう」
 人魚姫は、にっこりと微笑みを返した。
「あ〜ッ! あ〜ッ!
 ズルイ!
 エコひいき〜ッ!!」
「ハンス(仮名)? お客さまですよ」
 地団駄を踏むハンス(仮名)を、人魚姫は作り笑いでたしなめた。
 ガンスへの微笑とは、エライちがいである。
「ボクだってしたコトないのに……」
 ハンス(仮名)は、クラッカーのような涙を垂らした。
「本当に美しい…」
 ガンスは人魚姫を見つめ、吐息混じりに呟いた。
「あなたの美しさはユリさえも恥じて、その白い花びらをもって、顔を隠してしまうことでしょう。
 しかし残念でならないのは、あなたが従兄弟のハンス(仮名)の婚約者であること……」
 ガンスは端正な顔だちを、哀しげに曇らせる。
 人魚姫はそんなガンスに、桜色の微笑を与えた。
「どなたが、わたくしの婚約者ですの?」
「ボクだよ、ボク、ボクッ!
 約束忘れたの〜?!」
「未だ、わたくしの心に春を告げた者は、おりませんよ」
 その言葉は、ぎゃー、ぎゃーと泣き叫ぶハンス(仮名)に、ぐっさし突き刺さった。
 ガンスの顔が明るく輝く。
「春の日差しのような、その微笑みの暖かさ…。
 わたくしの心を縛る霜華も、熔け落ちてしまいました。
 わたくしを候補のひとりとして、迎えてはくださいませんか?」
「期待しておりますよ、ガンス」
「お任せください。
 このガンス、必ずや東風となって、姫さまの心に春を告げましょう!」
 ガンスの歯の浮くような台詞が、寒風となってハンス(仮名)の背筋をゾワゾワさせた。
「“封印”の時間が来たようです。
 ガンス、またお話しがしたく思います」
「そんな、もったいない。
 姫さまに感謝の言葉は似合いません」
 人魚姫はただニッコリと、桜色の微笑みを返した。
「ハンス(仮名)」
 人魚姫に名を呼ばれると、茫然自失だったハンス(仮名)はぴくっと反応した。
「なになになになになに、姫さま?!」
 まるで尻尾を振る小犬のようである。
 人魚姫はそんなにハンス(仮名)に、にこやかな微笑を作った。
「飛び猫からの報告、よくよく、聞いています。
 わたくしのコトを気にすることはないのですよ」
 ハンス(仮名)の胸に、人魚姫の微笑がツララのごとく突き刺さる。
“わたしにはガンスがいるから、あなたはお好きな方とどうぞご自由に”
 その微笑みはそういっていたのである…。
「というわけだ。
 悪いな、ハンス(仮名)!」
 うなだれるハンス(仮名)の肩を、勝ち誇ったガンスがポンと叩いた。


■ニーヤはルンルンとし、ハンス(仮名)はガックシ、フラフラ、うなだれていた。

「ねぇ、ねぇ、ニーヤ?
 東風って、なに?」
「春風のたとえね。
 ガンスは、姫さまをホレさせる、っていったのよ。
 ロマンよね〜」
「ロマンねぇ……」
 うんざり顔のハンス(仮名)に、ニーヤは溜め息をついた。
「あんたもさ、一言ぐらい、そんな台詞いってみなさいよ」
「ボクには無理だよ。
 入れ歯じゃないもん」
「ガンスって、入れ歯なの?」
「だから、浮くような歯がないんだよ」
「やぁ〜ねぇ〜。
 男の嫉妬って!」
「嫉妬じゃないって!
 アイツはね、信用なんかできるようなヤツじゃないんだよ!!」
「はい、はい」
 飛び猫は、ヤレヤレと肩をすくめた。
「ホントだってば!!」
 ハンス(仮名)は立ち止まって、声を張り上げた。
「アイツのやったイタズラは、み〜んな、ボクのせいにされてたんだから。
 ボクの国が危機に陥った時だって、親戚なのに、助けてもくれなかったんだよ?」
「当たり前でしょ?!
 誰かさんの放蕩で傾いた国なんて、誰が助けるのよ!」
 そういわれてハンス(仮名)は、プイッと口を尖らせた。
「……もう、いいよ。
 絶対、アイツの化けの皮を剥がしてやるんだ!!」


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