インターミッション(人魚解放同盟のピアス)
■人魚姫は微笑んでいた。
“封印の眠り”から目覚めたばかりで、なにやら機嫌もよろしい。
ひさしぶりに言葉を交わせ、ハンス(仮名)は運のよさを天に感謝していた。
「怪我は…もうよろしいのですか?」
「た、大した傷じゃないよ。
ちょっと引っ掻かれただけだもん」
包帯を巻いた指をヒラヒラ、ハンス(仮名)は照れ笑いを浮かべた。
ピアスの一件で受けた、飛び猫の傷。
ズキズキはするものの、日頃の怪我からすれば、怪我の内にも入らないのである。
「ニーヤの爪は鋭いですから…」
そういって人魚姫は、包帯の指を両手に包んだ。
姫さまの手はなんとも柔らかく、あったかく。
はにかんだ頬は、春の日差しより心を浮つかせる。
痛みなど、簡単に吹き飛んでしまうのである。
そんないい感じで、桜色の頬を見つめていると…。
「ハンス(仮名)〜♪
包帯を変える時間だよ〜♪」
スフィアが救急箱を持って現れた。
日に何回も変えるほどでもないのに、スフィアは楽しげに何回も変えるのである。
人魚姫とふたりっきりの時間。
ハンス(仮名)にはお邪魔虫のごとく思われたスフィアだが、今回ばかりはグッジョブであった。
「わたくしが変えてよろしい?
ううん。やらせてください。ね?」
ニッコリの人魚姫に、スフィアはぷぅっとふくれっ面。
ハンス(仮名)は、スフィアに親指を立てた。
人魚姫はスルスルと包帯を解き、ハンス(仮名)はそれを見守る。
女の子にこんなコトをしてもらえると、男の子は言葉を失い、キュンとしてしまうのである。
しかしただそうしているのも、貴重な時間がちともったいない。
人魚姫が目覚めている時間は、そう長くはないのである。
なにか話題を…と。
ハンス(仮名)は飛び猫がいっていた、人魚姫の得意料理を思い出した。
「か、海草サラダ、今度、食べさせて」
人魚姫は、ポッと恥ずかしげに頬を赤らめた。
「“単なるワカメ”です。
お忘れになってください」
「ま、まだ食べたことないんだ。
“単なるワカメ”って料理。
ほ、ほら、ボクの国は山国だったから」
「でも、ワカメ酒はあるよね!」
意味を知ってか知らずか、スフィアは無邪気にニッコリ。
「ワカメ酒…?」
人魚姫に目を向けられ、ハンス(仮名)はこの上なく慌てた。
「の、の、飲んだことないよっ?! ホントだよ!」
「美味ですの?」
「え、えーと……た、堪んない味…なんだって! あははっ!」
「そう。
それではその“ワカメ酒”、調べて作ってみますわね」
オボコなお姫様はニコリと微笑み、ハンス(仮名)はこの上なく取り乱す。
ワクワクする反面、意味を知った人魚姫にどう思われるのか…。
そら恐ろしく感じるのである。
「む、無理はしなくていいよ?
む、難しいから、調べなくてもいいよ?」
「あなたの疲れを癒すものなら、苦にはなりませんわ」
と。包帯を解く手が、ピタッと止まった。
不思議に、その手元を見ると…。
「ハンス(仮名)LOVE by ピアス」
の文字が包帯に…。
しかもご丁寧に、あつ〜いキスマーク付である。
「うふふ。どうやら、大事なモノのようですね」
姫さまの微笑は瞬間冷却、ハンス(仮名)の背筋はブルっと震えた。
「スフィア? 接着剤はあるかしら?」
「瞬間強力でいいよねっ!」
「ええ。すばらしいですわ、スフィア!」
「あ、あ、あの、姫さま…?
す、スフィア…?!」
微笑む人魚姫に、ギュッ、ギュッと包帯は巻き直され。
無邪気なスフィアは、その上にベッチョリ接着剤…。
「あ、あぅ…あぅぅ…」
なにをいうこともできないハンス(仮名)…。
まるでそれは、叱られたオットセイのようであった。
■りりんに体を洗われ、ハンス(仮名)は泡だらけとなっていた。
[協力]ぎゅっと!(パティスリー)
「この紋章に、また会えるなんてね…」
りりんはハンス(仮名)の胸を見つめ、複雑な溜め息をついた。
そこには、ピアスから譲り受けた紋章があるのである。
「えと…ゴメンよ、りりん…。
そっとしておいて…ていわれてたのに…」
「譲り受けたのなら仕方ないわ」
りりんはかるく肩をすくめた。
「でもね。約束破りはキライなの…」
そういうとりりんは、乳首に舌を這わせた。
途端に、ビクンっとするような快感を感じた。
前にも舐めてもらったことはあるが、そのときより敏感になってる気がする…。
「うふふ。今日はバツとして、乳首だけね…」
「ふ、ふわわ〜…」
それだけでも十分、天に登る心地である。
「それで?」
りりんが乳首を舐め回し、吸いつきながら聞いてくる。
「合い鍵は作れたの?」
「あ、合い鍵…?
な、なんのことかな〜」
バレてはいるのであろうが、白状したらまた、どんなメに合わされるやら…。
ココは素知らぬ、存ぜぬが一番なのである。
「あら。しらばっくれるつもり…?」
そういうとりりんは、握る肉棒をずしゅずしゅ、勢い良く摩り出した。
「あ、あ、で、出るよ、りりん…でちゃうよ……」
ピタッと、りりんはその手を止めた。
「え…?」
「うふふ。
生殺しのアナタって、とってもチャーミングね」
「り、りりん…?」
「あんまりかわいいから、イジワルしちゃった。
うふふ。ごめんなさいね…」
りりんは再び、ゆっくり摩りだし、もうすこしで…と、またピタッと止めた。
まるでイク、タイミングを知り尽くしているかのようである。
「り、りりん〜〜〜」
「イキたかったら、素直に白状して。
合い鍵はどうしたの?」
出るトコロを止められる“生殺し”とは、こんなにツライものか…。
ハンス(仮名)は観念するしかなかった。
「飛び猫に取り上げられちゃったよぅ…」
「ホント〜?」
「ホ、ホント、ホントだよ!
だからイカせて! ね? ねぇ〜!」
「うふふ。それじゃ、今回だけは許してあげる」
「ホッ」
「でも、合い鍵を盗んだバツは別よ?」
「……え?」
と、そんなこんなで。
ハンス(仮名)は散々、生殺しを味合わされ、ようやっと出させてもらったのである。
「これに懲りたら、もう盗もうとしちゃダメよ?」
微笑むりりんの思惑とは裏腹に。
ハンス(仮名)はジラされプレイが、クセになりそうな気がしてしまうのである。
こんどはいつ、合い鍵を盗もうか…。
すでにココロは、次のお仕置きプレイに弾んでいた。
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