!!!ピアスとの再会 {{category 本編,人魚解放同盟のピアス,nolink}} !■ある夜、ハンス(仮名)は娼館に忍び込んでいた。 {{ref_image house01_c.jpg,pic}}  貞操帯なんて、つけたがる者などいやしない。  どうしても外したいハンス(仮名)は、りりんの鍵から合い鍵を作ろうというのである。 「しめ。しめ」  もちろん、りりんには内緒。  知らればギルドの爺さんに、もっとヒドイ目に合わされるからである。 「たしか、こっちの部屋に……。  抜き足…差し足…」  と。月光石でいっぱいに膨らんだ、唐草模様の風呂敷包みと出会った。 「!」  風呂敷の主とハンス(仮名)の、点となった目と目がかち合う。 「こ、この前はどうも」  声をひそめ、風呂敷を担いだ女がいった。 「この前って…?  どっかで会ったっけ…?」  薄暗がりではいまひとつ、相手の特徴がわからない。 「姫さまを連れ出す邪魔をしてくれたでしょ?」 //  そういわれて、相手があの晩の女だとわかった。 //--  たしか人魚解放同盟とかいう、……生花農家の組合であったか? 「あ、ああ、あのことね……びっくりした」  ハンス(仮名)は、ひとまず胸を撫でおろした。  娼館の人魚であれば、すぐにりりんを呼ばれてしまうからである。 「な、なにやってるの? こんなトコで?」 「あなたはなにしてるの?」  聞いたのは、ほぼ同時。 「……あははは、あは」 「……ほほほほ、ほ」  ごまかし笑いも、ほぼ同時。  気の合う仲である。 「ボ、ボクはハンス(仮名)。  え〜と……」 {{ref_image pi_again.jpg}} 「ピアスよ。  ウワサはいろいろ聞いてるわよ、ハンス(仮名)」 「色男って?」 「触っただけで処女が妊娠する、って」 「いいウワサだね」 「悪い方も聞いてるわ。 “人はパンのみにて生くるにあらず。  パンが食えなきゃ、菓子を食らえ!”  見事な演説ね」 // 「いいキャッチコピーでしょ?  文部大臣が作ったんだ。  演説と盗作の名人だったからね。  お陰でスィーツ目当ての観光客がたくさん来たよ」 //--  ニッコリのハンス(仮名)に、ピアスは眉を険しくした。 「姫さまを返して」 「名台詞だね。実にわかりやすいよ」 「姫さまに手を出してないでしょうね?」 「うーん。残念だけど…、こんな状態なんだ」  いうとハンス(仮名)は、自分のズボンを下げた。 「きゃっ!」 //  盗賊らしくもない、かわいらしい悲鳴である。  ピアスは真っ赤な顔を隠して、容貌に不釣り合いな、かわいらしい悲鳴をあげた。 //  容貌に不釣り合いな、かわいらしい悲鳴である。 //-- 「立派でしょ? この貞操帯」 「胸はっていうことじゃないでしょッ!」 「くすっ。  見かけと違って、ウブなんだね」  クスリと笑われ、ピアスはバツのわるい顔になった。 「は、早くしまってよ」 「珍しいんだよ、これ」 「いいからッ!!  臭ってくるのよッ!!」 「誰かいるの?」  と、廊下の角向こうから、りりんの声。 「ま、マズイわっ!」  とばかりに、ピアスは逃げ出した。 「あ、ボクもっ!」  ベチンッ!  ハンス(仮名)もピアスに続いたものの、脱いだズボンが仇となって、無様に転んでしまった。 「イタッ、タタタタタ……」  思いっきり打ちつけた鼻を抑えると、ハンス(仮名)は床に、片方だけのイヤリングを見つけた。  りりんのものであろうか…? 「ハンス(仮名)?!」  灯の中にハンス(仮名)が見えると、りりんは目を丸くした。  スボンを降ろしたまま、無様につっぷした姿を見れば、誰でもそうなるのである。 「や、やあ、こんばんわ、りりん」 「なにしてるの? そんな格好で…?」 「え、え〜と…床掃除ッ!  そう! 床掃除だよ!!  そんでもって、コレ、見つけたんだ!」  苦し紛れのいいわけをしながら、拾ったイヤリングを見せる。 「…それ、ピアスのね。  ピアスが来てたの?」 「ぶるるるるッ!」 //  首を振るハンス(仮名)。なんかバレバレ。  藪に蛇。 //  首を振るハンス(仮名)は、バレバレである。  首を振るハンス(仮名)は、自白したも同然である。 //-- 「……」  りりんは、フッと溜め息をついた。 「それ、あの子に返してあげてくれないかしら?  あの子がどこにいるのか、わたし知らないの。  多分、ハンス(仮名)の方が会いやすいだろうから」 「う、うん。まかせて!」 「お願いするわ。  きっとあの子、探してるだろうから」 「大事なものなんだ」 // 「そんなところね。 「たぶんね」 //--  りりんはまた溜め息をついた。 「お風呂に来たんでしょ?  いま用意するから、ちょっと待っててね」 「うん、待ってる」  りりんの後ろ姿を見て、ハンス(仮名)はほっと胸を撫で下ろした。 「……なんでホッとするのよ?」 「わぁっ!」  いつのまにやら隣に、飛び猫・ニーヤがいた。 「べ、別に隠し事なんかないよ?」 「そう、隠し事はないのね。  姫さまに“そう”伝えておくわ」 「ホ、ホントだよ」 「まったく…。  目が離せないんだから!」 //{{counter2 mer03Count}}